【翻字】
とんじんち此三毒が世中の 地ごくととかれたまふ仏の
とんじんち此三毒が世中の 地ごくととかれたまふ仏の

貪とむさぼるは 餓鬼。瞋といかるは 地獄。痴と愚痴な れば畜生。この三悪 道同しく苦しみに 沈むが故に何れも 地獄に摂す。人々 三悪道を免れんと ならばまつこの三 毒を除くべしとの 教なり
【通釈】
貪瞋痴という三種の煩悩がこの世の地獄であると、仏は説きなさった。
貪すなわち貪りの心は餓鬼道に堕ちる機縁。瞋すなわち怒りの心は地獄に堕ちる機縁。痴すなわち愚かな心は畜生道に堕ちる機縁。この三つの苦悩の世界は等しく苦しみに沈む世界であるが故に、すべて地獄に含まれる。人は、この三つの苦悩の世界から逃れるためには、まず貪瞋痴の三毒を心から払わなくてはならないという教えがこの歌の心である。
【語釈】
・貪瞋痴…むさぼりと怒りと無知。貪欲と瞋恚と愚痴。三毒。
・三毒…人の善心を害する三種の煩悩。
・餓鬼…餓鬼道。常に飢えと渇きに苦しむ亡者の世界。
・地獄…地獄道。この世で悪いことをした者が死後に行って苦しみを受けるという所。
・畜生…畜生道。悪業の報いによって死後に生まれ変わる畜生の世界。
・三悪道…悪業の結果、人が堕ちていく三つの苦悩の世界。
・摂す…取り入れる。摂取する。
・三毒…人の善心を害する三種の煩悩。
・餓鬼…餓鬼道。常に飢えと渇きに苦しむ亡者の世界。
・地獄…地獄道。この世で悪いことをした者が死後に行って苦しみを受けるという所。
・畜生…畜生道。悪業の報いによって死後に生まれ変わる畜生の世界。
・三悪道…悪業の結果、人が堕ちていく三つの苦悩の世界。
・摂す…取り入れる。摂取する。
【解説】
第九十二首目は、「三毒がこの世の地獄である」ことについて詠んでいると、注釈は説明しています。歌の下の句は、「仏の説かれたまふ」の意として解釈しました。絵は、僧侶による説法の場面が描かれています。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))