【翻字】
能智あり おぼえのあらば 程よりも しやうくはんせむと おもへよの中

前の哥には物事を まなぶうへをいひ此 哥にてはその事 すでに成就のうへを のべたり韓退之(かんたいし)が ことばに一芸に名 あるものは庸(もちい)られず といふことなしといへりやんごとなき氏(うぢ) すじやうの人といへ ども無智無能な れば人にうとんぜら れ芸能の徳あれ ばそのほどよりも しやうくはんせられん は雲泥のちがひな れば幼稚の時より も諸道のまなび ゆだんすべからざる 事なり
【通釈】
能力や知恵があり、評判がよく目上の人に認められているならば、家柄や出自以上に出世するだろうと思いなさい。この世の中は(そういうものである)。
前の歌では(諸道を)学ぶ際(の心構え)を言い、この歌では既に(その学びが)成就した上での事を述べている。韓退之の言葉に「一芸に秀でて名のある者であれば、登用されないことはない」とある。貴い出自の人であるとしても、知恵も能力も共になければ、人に疎んじられるし、(逆に)諸芸に秀でた学徳があれば、身分以上に官位が進むであろうことは、雲泥の差であるから、幼時から諸芸諸道の学習に油断してはいけない。
【語釈】
・能智…能力や知恵。
・覚え…「評判。世評」。あるいは「寵愛。目上の人からよく思われること」。
・韓退之…韓愈(768~824年)。唐代の文人。唐宋八大家の第一に挙げられる。
・一芸に名あるものは庸られずといふことなし…韓愈「進学解」の一節。
・ほど…身分。地位。家柄。
・昇官…官位があがること。上級の官位にすすむこと。
・覚え…「評判。世評」。あるいは「寵愛。目上の人からよく思われること」。
・韓退之…韓愈(768~824年)。唐代の文人。唐宋八大家の第一に挙げられる。
・一芸に名あるものは庸られずといふことなし…韓愈「進学解」の一節。
・ほど…身分。地位。家柄。
・昇官…官位があがること。上級の官位にすすむこと。
【解説】
第二十一首目は、「出世するには出自より能力才芸が重要である」ことについて詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、三人の貴族が室内で顔を合わせて何やら話をしている場面を描いています。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))







