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【翻字】
鈴木正三(すゞきしやうさん)
さし出(いづ)る 鉾先(ほこさき) おれよ 物毎(ものこと)に をのが心(こゝろ)を かな槌(づち)として
〇師は武江の人にて鈴木何某(なにがし) 正三(まさみつ)といへり薙髪(ちはつ)の後俗称(ぞくしやう)を 以(もつ)て法名(はふめい)とす自性(じせう)を看破(かんは)する 後愚堂国師の灯明(とうめい)を受(うけ)て三 州石平山(せきへいさん)に居し或ひは東武駿府の 所々に菴居(あんご)す師ある時は百万遍 の大数珠(じゆず)をわがため其上に座禅せ られし事も有しとぞ実(じつ)に深き こゝろあらんか今猶駿府林泉 菴に此像(このぞう)ありと云々

【校訂本文】
 鈴木正三
 さし出づる 鉾先折れよ 物ごとに 己が心を 金槌として
 〇師は、武江の人にて、鈴木何某正三といへり。薙髪の後、俗称を以て法名とす。自性を看破する後、愚堂国師の灯明を受けて、三州・石平山に居し、或ひは、東武・駿府の所々に菴居す。
 師、ある時は、百万遍の大数珠を我がため、その上に座禅せられし事も有りし、とぞ。実に深き心あらんか。今なほ、駿府・林泉菴にこの像ありと、云々。

【語釈】
武江:武蔵国江戸
愚堂:愚堂東寔(本書29)。江戸初期の臨済宗の僧。
石平山:鈴木正三を開山として創建された現豊田市の曹洞宗寺院・恩真寺の山号
百万遍の大数珠:浄土宗の仏事「百万遍念仏」に用いられる大きな数珠
林泉菴:現静岡県駿東郡清水町にあった臨済宗寺院

【解説】
 35人目は鈴木正三です。この人は今は曹洞宗とされていますが、以前には臨済宗とされたり、「正三派」とされた時もあったようです。元は徳川秀忠に仕えた旗本で、壮年に出家し、仮名草子も書いた、多面性を持つ人であったようです。
 歌は、いかにも元武士らしい比喩で、心に立ち向かう勇壮な気構えを表現しています。