(四)都・邑
 (1)人口壱万以上のもの
  【桑名町】は桑名港に臨み、美濃・尾張と交通便利なれば商業繁盛す。米商会社は其名世に聞へたるものにして、取引甚だ盛なり。人口は壱万五千余。官衙は桑名郡役所{県庁より十二里}・電信局等あり。
   {桑名は久松氏の旧城下なり。}

挿絵030

  【四日市町】は四日市港に臨み、近国の水路、東京に往来する者の必ず経(ふ)る所にして、陸には鉄道ありて滋賀県を経て京都・大坂に通じ、其の支線亀山町より岐(わ)かれて津市に達し、以て参宮鉄道{津より宮川岸に達す}に連接す。[是等の鉄道は目下工事中、若くは測量中也。久しからずして開通すべし。]斯かる枢要の地なれば、物貨茲に萃(あつま)り、商業の盛大なること県下第一なり。諸商社及び紡績(ぼうせき)・製紙・搾油(さくゆ)・舂米(つきごめ)・煉瓦(れんぐわ)等の工場ありて、取引・製造、皆盛なり。人口は壱万二千余。官衙は三重・朝明郡役所{県庁より八里}・裁判所・郵便電信局等あり。
   {四日市町の近傍、四郷(よごう)村大字室山に伊藤製糸場あり。一年の製額四千余斤に至る。又、川島村に紡績場あり。一年に壱万二千貫を製す。}
   {浜町の紡績場は資本金五十万円なりと言ふ。}

挿絵031

  【津市】は岩田・安濃二川に跨り、贄崎港に臨み、略ぼ伊勢の中央に位して各地と交通便なれば、県治を此地に置けり。贄崎港不便なるが故に、商業の盛大なるは四日市町に及ばざるも、文物の開けたるは県下の第一なり。人口は二万五千余。裁判所・郵便電信局・尋常師範学校・病院等あり{尋常中学校は安濃郡新町にあり}。
   {津は昔よりの舟着にして、藤堂氏の居城となりしより繁華の地となれり。}
   {公園は藤堂氏の旧山荘にして風景佳なり。園内に高山神社・物産陳列場あり。}
   {結城神社は別格官幣社にして、南朝の忠臣結城宗弘公を祀る。}

挿絵033

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