(四)島嶼
【神島】は志摩と三河との中間にありて内海の門に当る。其の岸険にして船を寄せ難し。島中穀菜なく、住民魚肉を恒食(こうしよく)す。
{此島は鳥羽港より五里。其間、潮流急なり。昔、鳥羽藩の罪人を流せし所なりと言ふ。}
【菅島】に燈明台{高さ水面より十七丈}あり。石造にして不動、白色の発光なり。海上十五海里を照す。
志摩の海岸及び諸島は漁業極めて盛にして、鮑(あはび)・真珠(しんじゆ)・鯛・鰹・鰕(えび)・鰡(ぼら)・鱆(たこ)・海鼠(なまこ)・烏賊(いか)・石花菜(ところてん)・鹿尾菜(ひじき)・和布(わかめ)等、尤も著名なり。海鼠・鮑・烏賊は乾製し、石花菜はかんてんに製して外邦に輸出し、鰹は多く鰹節に製し、其他は生(なま)又は塩物として近国に送る。
{鰡及び石花菜は時としては一挙数千金の利を収むることあり。}
{鮑は婦人水中に沈みて之を採る。}
{海藻類は冬期に之を齎らして近国に行売す。}
(五)都邑
【鳥羽町】は鳥羽港に臨み、宇治山田町を距ること四里。造船所・製鉄所あり。人口は五千余。官衙は答志・英虞郡役所{県庁より十三里}・電信局等あり。
{鳥羽は稲垣氏の旧城下なり。}
{近頃、畿内より伊賀・伊勢を経て鳥羽に達する鉄道を敷設せんと計る者あり。若し果して成り、且、鳥羽港軍港とならば、此町忽繁盛の都邑とならむ。}
【波切(なきり)村】・【浜島村】は邑里繁庶なり。
町村より出す製造物は皆海産物にして、其他に記すべきものは鳥羽の造船・製鉄のみとす。
(六)人情風俗 温柔にして質素なり。婦人労働に慣れて男子の業を操(と)るもの多し。
[附説]{此国は偏鄙なれば人事の発達晩かりしなり。南北朝の頃より北畠氏の領土となりしも、橘・九鬼等の土豪相争ひ、長き間、各地に戦ひしが、終に九鬼氏全国を統一したり。徳川将軍の時、屡諸侯の入り替りありて、最後に稲垣氏の有となりしが、維新の後、藩廃せられて県となれり。
復習問題
{此国の概勢を述べよ。〇山脈は何れにありや。〇第一の高峯は如何。〇日和山は何れにありや。〇水脈は如何。〇稍長き川は。〇土地は如何。〇農産物は如何。〇気候は。〇重もなる生業は何なりと思ふや。〇海岸の状勢は如何。〇鳥羽港の状勢は如何。〇其の入津の船舶多き理由は如何。〇其の良港なる割合に商業の盛ならざる所以は如何。〇的矢・浜島の二港に就き話せ。〇安乗崎灯台の事を話せ。〇東南の岬は如何。〇其の近海は。〇菅島の灯台は。〇是等の灯台は何の用ありや。〇神島の事を話せ。〇海産物を挙げよ。〇輸出品は如何。〇鳥羽町の事を話せ。〇此国の人情風俗は。〇他国に異なる一の習慣を告げよ。〇此国の歴史の概略を述べよ。}
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