三重県地誌要略
山名唫作編輯 三重教育書舎出版
三重県尋常師範学校教諭 山高幾之丞・阿保友一郎校閲

一 凡そ地誌を教授する順序は、既に知りたる所より始め、未だ知らざる所に及ぼすを法とす。此の書は務めて此の主義に基きたるものなり。
一 此の書、巻首に地理総説を附し、日常目撃する所の簡易なる水陸名称・地形等を指示し、又地球の説明、経緯度、人種及び生業等の概略を記したれば、教師宜しく生徒の理解力を計り斟酌して教授あらば、其の稗益尠からむ。
一 地理を教授するに地図の欠くべからざること、猶博物を教ふるに必ず標本に依らざるべからざる如し。故に必ず先づ充分に地図を観察せしめ、然る後之と対照して地誌に及ぼすべし。故に此の書、地誌総論の始めに管内全図と、之に対する二、三の問題を掲げて其の例を示せり。
一 地誌に必用の関係を有する事件なるも、幼童に適せざるものは暫く上部の欄内に掲ぐ。蓋し他日、幼童学識の進歩せし後を俟ちて、之を自修せしめむと欲するなり。 
一 巻末に海陸道路里程図及び山河高低・長短測度等を掲げたれば、宜しく参照して其の観念を精確ならしむべきなり。
一 里程・尺度等は悉く本邦の制に従ひ、寒暖計は摂氏を用ゐたり。
明治二十年八月 山名唫作識


三重県地誌要略
山名唫作 編纂

  地理総説
   第一課 水陸名称

家を出づれば人の往来する所あり。之を【道路】と言ふ。人家の少く集まりたる所あり。之を【村落】と言ひ、其の多く集まりたるを【都邑】と言ふ。地面の広くして平らなるを【平野】と名づく。其の穀物・野菜を植ゑたるを【田畑】と名づけ、樹木の蒐生せる所を【森林】と名づく。