(二)【河及び池沼】柘植川は加太谷に出て、河合川は信楽谷より来る。相合ひて西南に流る。服部川は布引山に発して東より来り、相会して上野川となる。其の流十五里。又、首ガ岳に発源せる長田川に会して伊賀川となる。名張川は東西両源あり。其の西源は即ち宇陀川にして、赤目四十八滝の下流を併せて又黒田川と言ふ。東源は長瀬川と言ふ。三国岳より流れ来り又夏見川の称あり。共に名張に会して北流十二里。大和国月ヶ瀬・尾山の際を流れ、之を差月川と呼ぶ。差月川の両岸は満山皆梅樹にして、所謂月ヶ瀬の梅、是なり。
[服部川、一名久礼波之登利須々杵川と言。此の国昔、呉服之君、衣を濯ふの縁なり。]
池沼の大なる者は、阿幷郡四十九村の芥池、同郡大ノ木村の中ノ池、伊賀郡上小波田村の東ノ狭間池、同郡比土村の馬場池等なり。其の中、東ノ狭間池を大なりとす。其の他小池甚だ多くして、其の数二十余あり。何れも前項の諸川と共に、近傍の耕地に灌漑の便を与す。
【気候・地利】本国は高地に属するゆゑに、其の気候沿海の地に比すれば稍々寒冷なり。
{寒暖計平均十五度。}
土地豊饒にして穀物・野菜に適す。諸山脈中往々森林ありて、用材及び薪炭を出だす。然れども砿山は著名なるものなし。阿幷郡島ヶ原村に炭酸泉を出だす。又伊賀郡湯屋谷村に湯屋谷ノ温泉あり。川流は皆水浅きを以て運輸を助くるに足らず。道路も亦平坦ならず。然れども近来伊勢の境なる長野嶺に隧道を造りたれば、爾来運輸の便頗る多し。


コメント