【翻字】
天桂(てんけい)和尚
まゝよやれ 住(すめ)ばこそ あれ 難波(なには)江に よしといふとも あしといふとも
〇師名は伝尊(でんそん)号は天桂紀州 和哥山の人也八才にて伝弓(でんきう)和尚 を礼して落艸す十八にて行脚(あんぎや)し 偏(あまね)く済洞(さいとう)の知識(ちしき)に参し終(つい)に 駿州静居(すんしうせいきよ)の五峯(ごほう)和尚に嗣法(しはふ) すしかつしより化席(けせき)を開(ひら)きて 大に群類(ぐんるい)を度(ど)す晩年(ばんねん)大坂に 蔵鷺菴(ぞうろあん)を創(はじめ)て隠栖(いんせい)し 自(みづか)ら老螺蛤(らうるいごう)と称し又年八 十八に及びて老米虫(らうべいちう)とも称せらる 其年の十二月十日示寂す時に 享保二十年也 此哥はある人の師を嘲るよしを 聞てよみ給ひし也
天桂和尚
ままよやれ 住めばこそあれ 難波江に よしといふとも あしといふとも
〇師、名は伝尊、号は天桂。紀州・和歌山の人なり。八才にて伝弓和尚を礼して、落艸す。十八にて、行脚し、遍く済・洞の知識に参し、終に、駿州・静居の五峯和尚に嗣法す。しかつしより、化席を開きて大いに群類を度す。晩年、大坂に蔵鷺菴を創めて、隠栖し、自ら「老螺蛤」と称し、又、年八十八に及びて、「老米虫」とも称せらる。その年の十二月十日、示寂す。時に、享保二十年なり。
この歌は、ある人の、師を嘲る由を聞きて、詠み給ひしなり。
この歌は、ある人の、師を嘲る由を聞きて、詠み給ひしなり。
【語釈】
伝弓:現和歌山市の曹洞宗寺院・窓誉寺の僧。
落艸:不詳。「落髪」の意か。
済・洞:臨済宗と曹洞宗
知識:仏道に教え導く指導者
静居:静居寺。現静岡県島田市の曹洞宗寺院。
五峯:五峯海音
化席:不詳。「教化済度のための講席」の意か。
蔵鷺菴:現大阪市天王寺区の曹洞宗寺院
享保二十年:1736年
落艸:不詳。「落髪」の意か。
済・洞:臨済宗と曹洞宗
知識:仏道に教え導く指導者
静居:静居寺。現静岡県島田市の曹洞宗寺院。
五峯:五峯海音
化席:不詳。「教化済度のための講席」の意か。
蔵鷺菴:現大阪市天王寺区の曹洞宗寺院
享保二十年:1736年
【解説】
46人目は天桂伝尊です。紹介文はその略歴と、歌の詞書です。
歌は少々難解ですが、詞書のおかげで歌意が次のようにわかります。「人が何と言おうが勝手に言わせておけば良い。良いも悪いも現にこうして難波の地に住んでいるのだから」。「難波江」と「葦(あし)」は縁語、「よし」は葦の別称、ともに「良し」「悪し」の意を掛ける掛詞です。

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