【六】
お里、江戸屋へ駆け込む 江戸金、お里を隠す 伝九郎と中川、江戸屋に乗り込む)

 植村家の人入れを致して居(い)るのが、江戸神田三河町(ちょう)の出生(うまれ)で金兵衛と言う。大和の高取へ参りまして、相変わらず人入れを致して居(い)る。江戸屋の金兵衛という処から「江戸金、江戸金。」と言われ、重役方にも可愛がられて、頗る評判も宜(よろ)しい。「弱い者なら飽くまでも助けよう。」という男達(おとこだて)でございます。侠客というと、博奕が付き物のようになって居りまするが、此の江戸金ばかりは一六(さいころ)一ツ持った事がない。従って乾児(こぶん)が博奕をすると、呼び付けては意見をする。蝮の伝九郎が一時(いちじ)江戸金の乾児(こぶん)であったが、博奕をするので親分乾児(こぶん)の縁を切られた。ただ此の江戸金の道楽が碁でございます。高取の在に、禅家(け)で東陽寺という寺がある。其の寺の和尚で海全というのと碁敵(ごがたき)で、暇ある度には遊びに行(ゆ)く。ちょうどおさとが悪党の毒手に罹って苦しめられた其の日の事であるが、
金『今日は別に用も無(ね)えから、東陽寺へ行ってくる。不在(るす)を頼むぞ。』
子分『行って居らっしゃい。』
金『殊に依ると、今夜は帰らねえかも知れねえー。』
子分『ヘエ。』
金『どうか頼むヨ。しかし、俺が不在(るす)だといって、博奕はするナ。』
甲『ソンナ事は致しません。親分に「博奕(いたずら)はよせ。」と言われるんで、近頃バッタリ致しません。アレモ習慣(くせ)になると見えまして、やらなければ別段やりてエとも思いません。』
金『そうか。それは結構だ。女狂いは年をとると自然によすが、博奕は慾だから。腰が曲がるまでやめられねえものだ。デワ不在(るす)を頼んだぞ。』
甲『親分。又空が曇って来ました。傘を持って行ったら宜(よ)うございましょう。』
金『そうさの。降られると困るから傘を持って行(ゆ)こう。』
甲『どうも秋は兎角降りたがるもので。』
 江戸金は其の儘東陽寺へ碁を囲みに出て行(ゆ)く。跡に子分が、
甲『鬼の居ねえ内に洗濯だ。久しぶりでやろうか。』
乙『宜(よ)かろう。しかし親分に知れると面倒だぜ。』
甲『馬鹿を言うナ。親分は二里も先へ行って居(い)るのじゃアねえか。それへ知れて堪るものか。』
乙『それもそうだ。構わねえ。やっつけろ{*1}。』
 五六人集まった子分が、是から博奕(いたずら)を始める。日が暮れると間もなく降って参った雨は、篠(しの)を束(たば)ねて衝くごとく、ドッという大降りになった。
甲『しめた、しめた。こう降って来ては、親分の帰る気遣いはねえ。安心だ。サア、ドシドシ賭(は)れ。』
 頻りに戦って居ります裡に、亥刻(よつ)も過ぎ、子刻(ここのつ)の鐘が鳴ったと思うと、「ドン。」と戸にぶつかったものがある。
乙『何だ、何だ。』
〇『アノ、ちょっと此戸(ここ)をあけて下さい。もし、どうぞ此戸(ここ)を開けて下さい。』
と言うは、高木の家をのがれて参りましたおさとであるが、身体(からだ)が労(つか)れて居(い)るので、思うように口も利けません。「中へ聞こえまい。」と、身体(からだ)を一ツ「ドン。」と戸に当てた。
 中の子分が驚いた。
乙『ソレ、親分が帰った。』
と言うと、ドタリバタリ。家中(かない)は覆るような騒ぎ。
甲『ヘエー。親分、御帰ンなさい。只今開けます……オイ、いいかえ。何も落ちては居ねえか。』
乙『大丈夫だヨ。』
乙『只今あけます。』
 勘太という子分が手燭を持って立って来た
勘『親分、御帰ンなさいまし。』
 戸を開いて、
勘『どうも、ひどい降りで。途中御困りでございましたろう。』
と言いながら、灯火(あかり)で見ると、髪を振り乱して色の青白い、息も切り切りで、
さと『あの、親分さんは御出(い)ででございますか。』
と、上り口へ手をかけて、ヌーと見上げたおさんの顔の凄い事。勘太は驚いて、
勘『オヽ、御出(い)でなさいまし。』
と、手燭を持って、ペタペタと土間へ座ってしまった。
さと『アノ、親分さんは御在(い)ででございますか。』
勘『ヘエ。オヽ、親分さんは御不在(るす)でございます。』
乙『ヤイ勘太。何を言って居(い)るのだ。御客が来たのか。』
勘『ちょっと来て見てくれ。人間のような化け物のような、妙な者が来た。』
乙『臆病な奴だナ。』
と言いながら出て来た一人、ヒョイとおさとを見ると、此奴(こいつ)も驚いた。
乙『オヽ、御出(い)でなさいまし。』
さと『親分さんに御目にかかりとうございます。』
乙『親分は今夜不在(るす)なんで。』
さと『モー、妾(わたくし)は一足もあるく事が出来ません。親分さんの御帰りまで御待ち申して居ります。御慈悲でございます。どうぞ少し休まして下さいまし。』
乙『ヘエ。殊に寄ると今夜は帰らねえかも知れません。』
さと『イエ。今晩御帰りがなければ、明日(みょうにち)まで御待ち申します。決して妾(わたくし)は怪しいものではございません。』
乙『此の夜更(よなか)に血だらけで飛び込んで来れば、怪しくない事もあるまい。マア、御上がんなさい。』
 子分が何だか判らないが、おさとを家へ入れて介抱した。
乙『勘太。アノ女は何だろう。』
勘『何。「アノ女は何だろう。」と、汝(てめえ)も道楽者の子分でありながら、血の巡りの悪い奴だ。大概判って居(い)るじゃアねえか。』
乙『判らねえから聞くのだ。』
勘『アレハ親分の情婦(いろ)だヨ。』
乙『ヘエー。親分の情婦(いろ)だ。しかし親分はもう四十だのに女房(かかあ)ももたず、「男は女房(かかあ)や子供があると、思い切った事業(こと)が出来ねえから、生涯俺は一人で暮らす。」と言って居る。其の女嫌いの親分が、どうしてアンナ女に関係(かかりあい)を付けたのだろう。』
勘『馬鹿ア言うナ。男と生まれて女嫌いという奴があるかえ。此の通り大勢子分をもって居(い)るンだ。自分が先立ちで女狂いをした節(ひ)には、子分の示しが付かねえから、ソコデ「女嫌い」と上面(うわべ)は言って、内々(ないない)アーいう女を忍ばせて置くのヨ。』
乙『成程。大きにそうだ。どうしてアンナに怪我をして来たのだろう。』
勘『どうも汝(てめえ)位血の巡りの悪い奴はねえゼ。考えて見ろ。大概判って居(い)るじゃアねえか。』
乙『判らねえから聞くのだ。』
勘『本統に御芽出度(て)え奴郎(やろう)だナ。よく考えて見ろ。』
乙『幾ら考えたって、判らねえものは判らねえ。』
勘『汝(てめえ)何か、人別があるのか。』
乙『俺だッて人間だもの。人別の無エ奴があるものか。』
勘『コンナに血の気が薄いのに、よく人間になって居(い)るな。明日(あした)から「当分人間は相休み申し候。」と、面(つら)へ札を貼って置け。』
乙『冗談言うナ。全体(ぜんてえ)あの女は何だろう。』
勘『アレワ親分の情婦(いろ)だヨ。』
乙『情婦(いろ)は判ったが、どうしてアンナに怪我をして来たのだろう。』
勘『あの女の継母が大層慾張って居てヨ。』
乙『ン。』
勘『アノ女を金持ちの妾(めかけ)にして、左団扇で暮らそうと言うには、親分が居ては邪魔だから、手を切らせようとした処で、アノ女が飽くまでも親分へ操を立てて、言う事をきかねえもんだから、ソコデ折檻をしたのだ。少しの隙を見て女が逃げ出して来たと、こういう筋なんだ{*2}。何(こ)うだえ判(わ)かったろう{*3}。』
乙『成程。そうかえ。ちっとも知らなかった。ソンナ事とは知らず、「ドン。」と戸にぶつかられたので、てっきり「親分が帰ったのだ。」と思い、驚いたぜ……オイ辰、何をして居(い)るンだ。どうしたんだ、目を白黒して。』
辰『オー、驚いた。親分が帰(けえ)って、「博奕(いたずら)をして居たを見られちゃア大変だ。」と思って、あわてて骨子(さい)を嚥下(のみこ)んだが、どうも胸につかえて厭な気持で堪らねえ。』
勘『気の早い奴があるもんだ。熊の奴郎(やろう)が見えねえが、どこに行った。』
乙『彼奴(あいつ)はふだんからすばしっこいが、親分が帰(けえ)ったと思うと、すぐに裏口から飛び出したヨ。』
勘『道理で見えねえと思った。処で、親分は今夜帰(けえ)る気遣いなし。まだ夜(よ)の明けるには間があるから、モー一番(いちばん)戦うか。』
甲『宜(よ)かろう。』
と、又是から始めた。
 ちょうど二時(やつ)の鐘が打ち切ると、表の戸をドンドン叩いて、
金『ちょっと開けろ、開けろ。』
甲『オイ、親分だぜ。』
勘『何、親分が此の降雨(ふり)に帰って来るものか。熊の奴郎(やろう)だヨ。彼奴(あいつ)はふだんから親分の声音(こわいろ)が上手で、このあいだも湯殿で「廊下を通るのは勘太か。浴衣を持って来てくれ。」と言うから、持って行(ゆ)くと熊の野郎だ。「どうだ。親分の声音(こわいろ)はうまかろう。」と言やアがる。熊に違えねえヨ。』
甲『そうか。』
勘『アノ奴郎(やろう)、今夜は一ツおどかしてやるから。』
 勘太が六尺棒を持って戸をガラリと開け、
勘『此の奴郎(やろう)ッ。』
 突き出した棒。
金『危ない。何をする。』
勘『オッ、是は親分。』
金『又博奕(いたずら)をして居(い)るナ。』
勘『ヘエ……人間も間が悪くなっちゃア往生だ。親分で無えのを親分だと思って、本物が帰って来たのを偽物だと思って。とうとう悪事露顕だ。』
金『何を言って居やアがる。』
乙『親分御帰ンなさい。とても此の降りじゃア帰(けえ)るめえと思いましたが。』
金『小降りなら泊って来るが、降りが強くなったので帰(けえ)って来た。』
勘『言う事が皮肉だ。』
金『何だと。』
勘『何、此方(こっち)の事で。』
金『不在(るす)に誰か来たか。』
勘『ヘエ。姐(あね)さんが来まして。』
金『姐(あね)さんが来た。俺には姉はねえ。』
勘『どうも、其の姐(あね)さんが、親分より年が下なんで。年下の姐(あね)さんというのは、今日始めて見ました。』
金『誰が来たんだ。』
勘『親分、お前さんは罪だネー。ああいう女があるならば、「実はこうだ。」と、俺(わし)達に話してくれても宜(よ)さそうなもので。』
金『何だ。ドンナ女が来た。』
勘『「ドンナ女が来た。」と、こう飽くまでもトボケるのは恐れ入ったナ。実は今夜姐(あね)さんが来て言うには、「ねエ、母親(おふくろ)が慾に迷って、判らねえ事を言って困る。妾(わたし)は親分と堅い約束をしたものだから、たとえ火の中水の中、ドンナ苦しみをしても、立てる操を破らじと、邸(やしき)をぬけて遥々と、登って聞けば其の人は、吾妻の旅と聞く悲しさ。」』
金『何を言って居やアがる。』
 金兵衛は不思議に思い、奥へ来て見ると、寝て居(い)るは、おさとでございます。
金『おさとさんじゃアないか。』
さと『親分さん。』
金『どうしてお前、俺の処へ来なすった。』
さと『親分、妾(わたし)ほど因果な者はございません。』
と、泣きながらに前回の次第を物語りました。
 聞いた金兵衛はもとより義気ある人とて、
金『憎い奴は蝮の伝九郎。わずかな金に目が眩(くら)んで、貞女なお前を苦しめるとは。人間の行いじゃアない。定めし沢市さんが聞いたら驚くだろう。よし。是から金兵衛がお前方の後援立(うしろだて)になって遣るから、必ず心配しなさンナ。それにしても、お前を逃がした高木の若党佐平次は感心な人だ。何は兎も角、疵所(きず)の養生をしなければ成らない。ヤイ。此の女は汝(てめえ)達も知って居(い)る、アノ新六さん。今じゃア按摩の沢市さんの女房で、コレコレこういう訳で、今夜高木から逃げて来たのだ。』
〇『ヘエー。そうでございますか。アノ沢市の女房(かかあ)で、目も見えねえ癖に、コンナ美麗(きれい)な女を女房(かかあ)にするから間違いも出来るんで。瞽者(ごせのぼう)か何か、人間離れのした奴を女房(かかあ)にすれば、騒動も起こらねえので。生意気ナ。』
金『何が生意気だ。疵口へ薬でも点(つ)けて遣ったか。』
甲『別段手当も致しません。』
金『何か手当をしてやったら宜(よ)かろう。』
甲『そうでございますね。生憎金瘡(きず)薬が無(ね)えので。どうでございましょう。間に合わせに唐辛(とんがらし)を付けては。』
金『馬鹿ッ。疵へ唐辛(とんがらし)を付けて堪るものか。』
甲『其の方が保(もち)が宜(よ)くって、土用を越すだろうと思って。』
金『沢庵だと思って居やアがる。』
 是から夜明けを待って医者を迎え、お里の手当をする{*4}。斬り傷や突き傷と違いまして、打撲(うち)傷でございますから、療治はたやすい。新六の沢市を呼んで委細の物語。沢市は夢を見たような心持ち。就いては何しろ相手が植村家で、大阪蔵屋敷の取り締まり高木の若旦那。殊には蝮と異名のある伝九郎がついて居ては、金兵衛の家(うち)に女を置いては面倒。沢市は子分の長三郎を付けて、大阪八軒家の医者松並良山の元へ眼病の療治に遣って、お里は金兵衛の碁敵東陽寺の海全和尚を頼んで、寺へ隠匿(かこま)ってもらう事にした。海全和尚も迷惑に思ったが、「人を助けるは出家の役。こういう事も衆生済度であろう。」と。ソコデ一時(じ)お里を預かる事にした。金兵衛は「まず是で安心。折を見て高木へ話して十五両の金を返し、此の事を波風なく納めよう。」という考え。
 高木の方ではコンナ事とは知りません。お里が居ないので、翌朝第一ばんに沢市の処へ伝九郎が来たが、居ない。「さては両人は遠く逃げたか。」と、諸方心当たりを探した。フト耳にしたのは、「江戸金のもとへお里が逃げて行った。」と言う。「それでは江戸金が隠したに違いない。しかし、一人では脅迫(おどし)が利かない。」と、高木七之助に話して、中川幸之助を一緒に出かける事にした。スルト中川が、
幸『伝九郎。お前の為には江戸金は乾盆(おやぶん)ではないか。』
伝『以前は親分でございますが、モー盃を返せば赤の他人で。』
幸『それでは親分子分の縁は切れて居(い)るのか。どうして親分子分の縁を切った。』
伝『なアに。別に悪い事もしませんが、博奕を打って大酒を飲み、女を欺(だま)して宿場へ売ったが露見して、「アンナ悪い奴は子分に出来ねえ。」と言うので、トウトウ縁を切りました。』
幸『それだけ悪事をすれば沢山だ。何しろ出かけよう。』
 二人打ち揃って江戸金の所へ出て参りました。
〇『親分、蝮が来ました。』
金『伝九郎が来たか。』
〇『それに御城内の御武家が一人、付いて来ました。』
金『そうか。此方(こちら)へ御案内申せ……是は御出(い)でなさいまし。私が江戸屋金兵衛でございます。』
幸『拙者は中川幸之助と申す。』
金『よく御出(い)で下さいました。イヤ、伝九郎。久しく会わなかったナ。』
伝『御無沙汰を致しやした。』
金『何の御用でございますか。』
 言う顔をジロリと見上げた伝九郎、
伝『親分。お前さんも江戸金親方だ。永い話をするだけ冗(むだ)だと思いますから。』
金『ン。』
伝『どうか女(たま)だけ出しておくんなさい。』
金『「玉だけ出せ。」とは何を出すのだ。』
伝『何を出すッて、極まって居(い)るじゃアございませんか。』
金『お前の方には判って居(い)るが、俺にはどうも判らないが。何を出せと言うのだ。』
伝『沢市の女房(かかあ)お里を出して貰いてエ。』
伝『「沢市の女房(かかあ)お里を出してくれ。」と。』
金『エ。』
幸『俺は御城内へ人入れはして居(い)るが、まだ按摩の世話はした事は無(ね)エ。お里が俺の家(うち)に居(い)るとは、誰から聞いたか知らねえが、俺は知らねえヨ。』
伝『もし、親分。幾らお前さんが白(しら)を切った処で、確かに此処(こっち)に居(い)るのを突き止めて来たンで。実は高木の若旦那がお里を執心で、沢市へは十五両の金で縁を切り、妾(めかけ)にする約束で、四五日前(めえ)に高木様へ伴(つ)れて来ると、どうしても言う事をきかねえから、ふん縛って物置の中へ入れて置いたが、夜(よ)が明けて見ると行衛知れず。段々手分けをして探した末、此処(こっち)に居(い)るのを突き止めて来やしたが、隠し立てをしては為にならねえ。何にも言わず、お里を出しておくんなせエ。』
金『何か。お里を妾(めかけ)に。』
伝『此の証文が何よりの証拠でございます。』
と、取り出した一通。沢市の盲目(めくら)を幸い、勝手に文句を作って二人の判を取った偽証文。金兵衛は是を見ると、むらむらとしたが、胸をさすって、
伝『ねエ、親分。大金を出して抱えた女をお前さんが隠して置いては、御為(おため)になるめえと思いまして。今日は中川さんと二人で出て参りましたが、どうか女(たま)を出しておくんなさい。』
金『イヤ。折角来たお前方に空(から)を踏まして気の毒だが、お里の事を聞くは今日が始めて。何で隠して置くものか。』
伝『それでは親分、どうしてもお前さんは「知らねえ。」と言いなさるかえ。』
金『知らねえ事は知らねえと言うより他に言いようもあるめえ。但し、飽く迄「俺が隠した。」と言うのか。』
 金兵衛は、銀烟管(ぎせる)で烟草を薫(くゆ)らし、ニコニコ笑って相手になりません。是は飽くまで先方(むこう)を怒らして置いて、取って押さえてやろうという考え……堪り兼ねた伝九郎に中川幸之助が「是から家(や)探しをする。」と言う。ちょっと休息して次回を申し上げます。

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校訂者注
 1:底本は「行(や)つけろ」。脱字と見て補った。
 2:底本は「女(おんな)が逃出(にげだ)し来(き)たと」。読みやすくする意図で修正。
 3:底本は「何(こ)うだへ判(わ)かつたらう」。誤植と見て訂正。
 4:底本は「お里(さと)の手当(てあて)を為(し)る」。誤植と見て訂正。