伯養(はくやう)(二番目 三番目)

▲アト「この辺りに住居(すまひ)致す、伯養と申す座頭でござる。涼みも近々(きんきん)になつてござるによつて、近日、都へ上らうと存ずる。又こゝに、誰殿と申して、良い琵琶を御所持なされた御方がござる。これへ参つて、琵琶を借つて参らうと存ずる。誠に、某等(それがしら)が琵琶のいる事はござらねども、只、嗜みのために持つて参りたう存ずる。何とぞ、貸して下さるれば良いが。何かと申す内に、これぢや。
{と云ひて、案内乞ふ。小アト、出る。常の如し。}
私でござる。
▲小アト「えい、伯養。この間(あひだ)は、久しう来なんだが、変る事もなかつたか。
▲アト「忝う存じまする。何かと致して、え御見舞も申しませなんだ。御前(おまへ)にも、御機嫌さうで、おめでたう存じます。
▲小アト「随分、身共も息災な。扨、今日(けふ)は、何と思うて御出あつた。
▲アト「今日参るは、別の事でもござらぬ。涼みも近々になりましたによつて、都へ上らうと存じまする。又、此方(こなた)には、良い琵琶を御所持でござる。私風情(わたくしふぜい)が、琵琶の要る事もござるまいなれども、嗜みのため、持つて参りたうござる。どうぞ、お貸しなされて下されうならば、忝う存じまする。
▲小アト「成程。これは、尤な事ぢや。貸してやらうぞ。
▲アト「それは、ありがたう存じまする。
▲小アト「追つ付け、出させて遣らう程に、その間、ちと奥へ通つて、話して行かしめ。
▲アト「何か、ちと話して参りませう。
▲小アト「それが良からう。つゝと通らしめ。
▲アト「心得ました。
▲小アト「まづ、それにゆるりとお居あれ。
▲アト「畏つてござる。
▲シテ「勾当でござる。涼みも近々になつてござるによつて、都へ上らうと存ずる。それに就いて、身共が琵琶は、転手(てんじゆ)が損ねて、直しにやつた。又こゝに、誰殿と申して、良い琵琶を御所持の御方がござる。これへ参つて、琵琶を借つて参らうと存ずる。誠に、この涼みの積塔(しやくたふ)のと申すは、近国より座頭どもが夥(おびたゞ)しう上るによつて、晴れがましい事でござる。何とぞ、琵琶を貸してくれらるれば良いが。身共が申す事ぢやによつて、大方貸してくれらるゝであらう。何かと云ふ内に、これぢや。
{と云ひて、案内乞ふ。出るも常の如し。}
某でござる。
▲小アト「えい、勾当の御坊。何として御出でござる。
▲アト「只今参るは、別の事でもござらぬ。涼みも近々になつてござるによつて、都へ上らうと思ひまする。それに就いて、某の琵琶は、転手が損ねて、直しに遣はしてござる。又、これには良い琵琶を御所持でござる。どうぞ、貸して下され。
▲小アト「それは、易い事でござれども、最前伯養が参つて、貸してくれいと申したによつて、早(はや)伯養に貸してござる。
▲シテ「何、伯養が借りに来ましたか。
▲小アト「中々。
▲シテ「これはいかな事。あれらづれが、何も琵琶の要る事はござらぬ。どうぞ、身共に貸して下され。
▲小アト「あれも、要ればこそ、借りに参つたものなれ。と思ひまする。幸ひ、伯養も奥に居まする程に、お逢ひなされて、ぢきに御相談をなされませ。
▲シテ「はあ。伯養がこれに居ますか。
▲小アト「中々。
▲シテ「それは、幸ひの事ぢや。これへ呼うで下され。
▲小アト「心得ました。やいやい、伯養。勾当の御坊の御出ぢや。
▲アト「やあ。何、勾当の御坊の御出でござるか。
▲小アト「これへ御出あれ。
▲アト「畏つてござる。
▲シテ「やいやい、伯養。
▲アト「はあ。
▲シテ「伯養。
▲アト「はあ。
▲シテ「聞けば、汝は琵琶を借りに来たげな。汝等づれが、琵琶の要る事はない。琵琶は身共が借る程に、さう心得い。
▲アト「これは、迷惑でござる。私も、要ればこそ、借りに参つてござれ。どうぞ、琵琶は私にお貸しなされて下され。
▲シテ「扨々、憎い奴の。身共が琵琶を借らうと云はゞ、随分差し上げませう。と云ひさうなものを。おのれ、その様な推参な事を云はゞ、不座{*1}を云ひつけるぞよ。
▲アト「でも、それは御無理でござる。
▲シテ「まだそのつれをぬかし居る。
{と云ひて、杖にて打たんとするを、小アト止めて、}
▲小アト「あゝ。まづ、お待ちなされい、お待ちなされい。一方は伯養、一方は勾当の御坊。されども、伯養は先でござる。これでは埒があきませぬによつて、何ぞ勝負をなされて、勝つた方へ琵琶を貸しませう。
▲シテ「これは、尤でござる、それならば、身共は歌を詠みませう。
▲小アト「これは、良うござらう。やいやい、伯養。これでは埒があかぬによつて、何なりとも勝負にして、勝つた方へ琵琶を貸さう。と云うたれば、勾当の御坊には、歌を詠まうと仰せらるゝ。汝も詠むか。
▲アト「これは、なりますまい。
▲小アト「それは何故(なぜ)に。
▲アト「あの衆は、不断、歌の連歌のといふにかゝつて居りあります。又私は、その様な事は、遂に致した事はござらぬによつて、これは、なりませぬ。
▲小アト「それでは、気の毒ながら、汝が負けになるぞよ。
▲アト「あの、私が負けになりますか。
▲小アト「中々。
▲アト「それならば、是非に及びませぬ。どうなりともして、詠みませう。まづ、勾当の御坊からお詠みなされい。と仰せられて下され。
▲小アト「心得た。さあさあ。まづ、こなたから詠ませられい。
▲シテ「かうもござらうか。
▲小アト「何と。
▲シテ「庭中(にはなか)に、歯欠けの足駄脱ぎ棄てゝ、はくやうなくば谷へほうかせ。
▲小アト「これは、一段と出来ました。
▲アト「扨も扨も、腹の立つ。身共を履物に喩へられた。もはや、堪忍がならぬ。
▲小アト「こりあ、こりあ。何とする。
▲アト「私を履物に喩へられました。堪忍がなりませぬ。
▲小アト「まづ、待て、待て。勾当の御坊が履物に喩へられたらば、汝も又、良い様に詠み返せ。
▲アト「成程、これは、御尤でござる。それならば、かうもござりませうか。
▲小アト「何と。
▲アト「振舞の座敷へ人の寄せざれば、犬勾当は門に佇む。
▲小アト「これも、一段と出来た。
▲シテ「扨々、憎い奴かな。某を畜生に喩へ居つた。もはや、堪忍がならぬ。
▲小アト「あゝ、申し申し。これは、何となさるゝ。
▲シテ「身共を畜生に喩へました。退(の)かせられい。打ち殺して退(の)けます。
▲小アト「まづ、待たせられい。こなたは最前、あれを履物に喩へさせられたによつて、大方詠み返したものでござらう。身共が申し付けませう。
▲シテ「きつと、云ひ付けて下され。
▲小アト「心得ました。やいやい、伯養。これでも埒があかぬ。今ひと勝負せい。
▲アト「左様ならば、私は相撲を取りませうぞ。
▲小アト「これは、一段と良からう。いや、なうなう。これでも埒があきませぬによつて、今ひと勝負と申してござれば、伯養は、相撲を取らうと申す程に、こなたも取らせられい。
▲シテ「いや。身共は、遂に相撲をとつた事はござらぬ。外の事ならば、何なりとも致しませう。
▲アト「申し申し。最前、歌を詠まねば私が負けぢや。と仰せられました。相撲をおとりあらねば、勾当の御坊が負けぢや。と云うて下され。
▲小アト「あれあれ、あの様に申しまする。
▲シテ「是非に及ばぬ。それならば、相撲を取りまする。
▲小アト「まづ、これへ出させられい。
▲シテ「心得ました。
▲小アト「伯養も、これへ出よ。
▲アト「畏つてござる。
▲小アト「身共が行司を致さう。
▲シテ「良うござらう。
▲アト「御苦労に存じまする。
{二人とも、杖を下に置く。小アト、行司する。常の如く、二人探り合ひて、相撲とる。小アト、可笑しがる。口伝。}
▲シテ「伯養、逃げな。
▲アト「勾当の御坊、逃げさせらるゝな。
▲シテ「逃げたらば、卑怯であらうぞよ。
▲アト「逃げさせられたらば、御卑怯でござらう。
▲シテ「あれあれ、逃ぐるさうな。
▲アト「こなたが、逃げさせらるゝさうな。
▲小アト「あゝ。まづ、待たせられい、待たせられい。
▲二人「何と、待てとは。
▲小アト「互に目が見えぬによつて、埒が明きませぬ。某が、両人の手と手を取り、合(あは)せて進ぜう。
▲シテ「これは、一段と良うござらう。
▲アト「これは、慮外でござる。
▲小アト「それそれ、手をおこさせられい。
▲シテ「心得ました。
▲小アト「伯養も、手をおこせ。
▲アト「畏つてござる。
▲小アト「良いか。
▲二人「良うござる。
▲小アト「お手つ。
{と云ひて、行司する。その手を二人取りて、「やあやあ」と云ひて、引き廻し、打ちこかし、入るなり。}
▲シテ「勝つたぞ、勝つたぞ。
▲アト「勝つたぞ、勝つたぞ。
▲シテ「某が、相撲に勝ちました程に、琵琶は、身共に貸して下され。
▲アト「私が、相撲に勝ちました。琵琶は、私に貸して下され。
▲小アト「やいやい。両人して、この様にしたによつて、琵琶を貸す事ではないぞ。ならぬぞ、ならぬぞ。
{と云ひて、後(あと)より、そろそろ入るなり。}

校訂者注
 1:「不座」は、盲人組織である当道座における処分の称で、追放にあたる。

底本:『和泉流狂言大成 第三巻』(山脇和泉著 1918年刊 国会図書館D.C.

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伯養(ハクヤウ)(二番目 三番目)

▲アト「此辺りに住居致す伯養と申す座頭で御座る、涼も近々になつて御座るに依つて、近日都へ上らうと存ずる、又爰に誰殿と申して好い琵琶を御所持なされたお方が御座る、是へ参つて琵琶を借つて参らうと存ずる、誠に、某等が琵琶のいる事は御座らねども、唯、嗜のため持つて参りたう存ずる、何卒貸して下さるればよいが、何彼と申す内に是ぢや{と云ひて案内乞ふ、小アト出る、如常}{*1}私で御座る▲小アト「えい伯養、此間は久敷来なんだが変る事もなかつたか▲アト「忝う存じまする、何彼と致して得お見舞も申しませなんだ、お前にも御機嫌さうでお目出度う存じます▲小アト「随分身共も息災な、扨、今日は何と思ふてお出あつた▲アト「今日参るは別の事でも御座らぬ、涼も近々になりましたに依つて都へ上らうと存じまする、又此方には好い琵琶を御所持で御座る、私風情が琵琶の要る事も御座るまいなれども、嗜のために持つて参りたう御座る、どうぞお貸しなされて下されうならば忝う存じまする▲小アト「成程是は尤な事ぢや、貸してやらうぞ▲アト「夫は有難ふ存じまする▲小アト「追付け出させて遣らう程に、其間ちと奥へ通つて話して行かしめ▲アト「何かちと話して参りませう▲小アト「夫がよからう、つゝと通らしめ▲アト「心得ました▲小アト「先づそれに寛るりとお居あれ▲アト「畏つて御座る▲シテ「勾当で御座る、涼も近々に成つて御座るに依つて都へ上らうと存ずる、夫に就て身共が琵琶はてんぢゆがそこねて直ほしにやつた、又爰に誰殿と申して好い琵琶を御所持のお方が御座る、是へ参つて琵琶を借つて参らうと存ずる、誠に、此涼のしやくとうのと申すは、近国より座頭共が夥多しう上るに依つて晴がましい事で御座る、何卒琵琶を貸して呉れらるればよいが、身共が申す事ぢやに依つて大方貸してくれらるゝであらう、何彼と言ふ内に是ぢや{と云ひて案内乞ふ出るも如常}{*2}某で御座る▲小アト「えい、勾当の御坊、何としてお出で御座る▲アト「只今参るは別の事でも御座らぬ、涼も近々になつて御座るに依つて都へ上らうと思ひまする、夫に就て某の琵琶は転手が損ねて直ほしに遣して御座る、又是にはよい琵琶を御所持で御座る、どうぞ貸して下され▲小アト「夫は安い事で御座れども、最前伯養が参つて貸して呉れいと申したに依つて、早や伯養に貸して御座る▲シテ「何、伯養が借りに来ましたか▲小アト「中々▲シテ「是は如何な事、あれら連れが何にも琵琶の要る事は御座らぬ、どうぞ身共に貸して下され▲小アト「あれも要ればこそ、借りに参つたものなれと思ひまする、幸ひ伯養も奥に居まする程にお逢ひなされて、ぢきに御相談をなされませ▲シテ「はあ伯養が是に居ますか▲小アト「中々▲シテ「夫は幸ひの事ぢや、是へ呼ふで下され▲小アト「心得ました、やいやい伯養、勾当{*3}の御坊のお出ぢや▲アト「やあ、何勾当{*4}の御坊のお出で御座るか▲小アト「是へお出あれ▲アト「畏つて御座る▲シテ「やいやい伯養▲アト「はあ▲シテ「伯養▲アト「はあ▲シテ「聞けば汝は琵琶を借りに来たげな、汝等連が琵琶の要る事はない、琵琶は身共が借る程にさう心得い▲アト「是は迷惑で御座る、私も要ればこそ借りに参つて御座れ、どうぞ琵琶は私にお貸なされて下され▲シテ「扨々、憎い奴の、身共が琵琶を借らうと言はゞ、随分差上げませうと云ひさうな物を、おのれ其様な推参な事を言はゞ不座を言ひつけるぞよ▲アト「でも夫は御無理で御座る▲シテ「まだ其連をぬかし居る{と云ひて杖にて打たんとするを小アト止めて}▲小アト「あゝ先お待ちなされいお待ちなされい、一つ方は伯養一つ方は{*5}勾当{*6}の御坊、されども伯養は先で御座る、是では埒があきませぬに依つて、何ぞ勝負をなされて勝つた方へ琵琶を貸しませう▲シテ「是は尤で御座る、夫ならば身共は歌を詠みませう▲小アト「是はよう御座らう、やいやい伯養、是では埒があかぬに依つて、何なりとも勝負にして、勝つた方へ琵琶を貸さうと言ふたれば、勾当{*7}の御坊には歌を詠まうと仰せらるゝ、汝も詠むか▲アト「是はなりますまい▲小アト「それは何故に▲アト「あの衆は不断歌の連歌のといふにかゝつて居りあります{*8}、又私は其様な事は遂に致した事は御座らぬに依つて、是はなりませぬ▲小アト「夫では気毒ながら汝が負けになるぞよ▲アト「あの私が負けになりますか▲小アト「中々▲アト「夫ならば是非に及びませぬ、どうなりともして詠みませう、先づ勾当{*9}の御坊からお詠みなされいと仰せられて下され▲小アト「心得た、さあさあ先づこなたから詠ませられい▲シテ「かうも御座らうか▲小アト「何と▲シテ「庭中に、はかけの足駄脱ぎ棄てゝ、はくようなくば谷へほうかせ▲小アト「是は一段と出来ました▲アト「扨も扨も腹の立つ、身共を履物に喩へられた、最早や堪忍がならぬ▲小アト「こりあこりあ何とする▲アト「私を履物に喩へられました、堪忍がなりませぬ▲小アト「先づ待て待て、勾当{*10}の御坊が、履物に喩へられたらば汝も又好い様に詠み返せ▲アト「成程是は御尤で御座る、夫ならばかうも御座りませうか▲小アト「何と▲アト「振舞の座敷へ人の寄せざれば、犬勾当{*11}は門に佇む▲小アト「是も一段と出来た▲シテ「扨々憎い奴かな、某を畜生に喩へ居つた、最早や堪忍がならぬ▲小アト「あゝ、申々、是は何となさるゝ{*12}▲シテ「身共を畜生に喩へました、のかせられい打殺して退けます▲小アト「先づ待たせられい、こなたは最前あれを履物に喩へさせられたに依つて、大方詠み返した物で御座らう、身共が申付けませう▲シテ「屹度言付けて下され▲小アト「心得ました、やいやい伯養是でも埒があかぬ、今一と勝負せい▲アト「左様ならば私は相撲を取りませうぞ▲小アト「是は一段とよからういや喃々。是でも埒があきませぬに依つて今一と勝負と申して御座れば、伯養は相撲を取らうと申す程にこなたもとらせられい▲シテ「いや身共は遂に相撲をとつた事は御座らぬ、外の事ならば何なりとも致しませう▲アト「申々、最前歌を詠まねば私が負けぢやと仰せられました、相撲をおとりあらねば勾当の御坊が負ぢやと言ふて下され▲小アト「あれあれ、あの様に申しまする▲シテ「是非に及ばぬ、夫ならば相撲を取りまする▲小アト「先づ是へ出させられい▲シテ「心得ました▲小アト「伯養も是へ出よ▲アト「畏つて御座る▲小アト「身共が行司を致さう▲シテ「よう御座らう▲アト「御苦労に存じまする{二人共杖を下に置く、小アト行司する如常、二人探り合て相撲とる、小アト可笑がる、口伝}▲シテ「伯養逃げな▲アト「勾当{*13}の御坊逃させらるゝな▲シテ「逃げたらば卑怯であらうぞよ▲アト「逃げさせられたらば御卑怯で御座らう▲シテ「あれあれ逃るさうな▲アト「こなたが逃げさせらるゝさうな▲小アト「あゝ先づ待たせられい待たせられい▲二人「何と待てとは▲小アト「互に目が見えぬに依つて埒が明きませぬ、某が両人の手と手を取り合せて進ぜう▲シテ「是は一段とよう御座らう▲アト「是は慮外で御座る▲小アト「それそれ手をおこさせられい▲シテ「心得ました▲小アト「伯養も手をおこせ▲アト「畏つて御座る▲小アト「よいか▲二人「よう御座る▲小アト「おてつ{と云ひて行司する{*14}其手を二人取りてヤアヤアと云ひて引廻し打こかし入るなり}▲シテ「勝つたぞ勝つたぞ▲アト「勝つたぞ勝つたぞ▲シテ「某が相撲に勝ちました程に、琵琶は身共に貸して下され▲アト「私が相撲に勝ちました、琵琶は私に貸して下され▲小アト「やいやい両人して此様にしたに依つて琵琶を貸す事ではないぞならぬぞならぬぞ{と云ひてあとよりそろそろ入るなり}

校訂者注
 1:底本、ここに「▲アト「」がある(略す)。
 2:底本、ここに「▲シテ「」がある(略す)。
 3・4・6・7・9~11・13:底本は、「勾頭(かうとう)」。
 5:底本は、「一つ方勾当の御坊」。
 8:底本は、「お居りあります」。
 12:底本は、「何とさるゝ」。
 14:底本は、「と云ひてと行司する」。