蜘盗人(くもぬすびと)(三番目 四番目)
▲アト「この辺りの者でござる。某(それがし)、初心講を結んで、今晩、連歌の当(たう)に当たつてござる。表は騒がしうござるによつて、奥の亭へお出なさるゝ様に。と、約束致したによつて、太郎冠者を見番(けんばん)に申し付けて置いた。日も暮れたによつて、各々、御出なさらう。と存ずる。さりながら、太郎冠者が案内次第に、亭の入口に出向かはう。と存ずる。
▲小アト「やあやあ。早(はや)、各々お出ぢや。と云ふか。急いで申し上げう。申し上げまする。
▲アト「何事ぢや。
▲小アト「お客様方は、早(はや)、お出でござる。
▲アト「心得た。云ひ付けて置いた通り、皆、用意は良いか。
▲小アト「悉く用意致してござる。
▲アト「それは、出かした。急いで出向かはう。万事、気を付けい。
▲小アト「畏つてござる。
▲シテ「この辺りの者でござる。某(それがし)、倅の時分から連歌に好いて、常々、口ずさむ事でござる。さりながら、勝手不如意にござるによつて、好物の連歌の会なども、自他とも、え出勤致さぬ。又、今晩は、誰殿方に連歌の会を致さるゝ。と承つてござる。前々、身上ともかう致した時分は、推参致し、出合うた事もござれども、近年、貧しい身柄を怖(お)めて、会にも罷り出でねば、おのづから疎遠にござる。今晩は、何とぞ路次へ忍び入つて、会の様子を余所(よそ)ながら立ち聞き致さう。と存ずる。
{しかじか。}
誠に、家貧にしては親知少なく、身賤しうしては故人疎(うと)し。と申すが、身上不如意にござれば、何方(いづかた)へも疎々(うとうと)しうござる。何かと云ふ内に、これぢや。この中(ぢゆう)、作事をせられた。と聞いたが、扨も扨も、結構な事ぢや。門の柱、長屋の様子、さぞ敷台なども、美を尽されたであらう。勝手ともかうする人は、長生殿・不老門、目前に顕はるゝ。扨々、羨ましい事かな。さりながら、これでは中々入(はい)られまい。裏へ廻つてみよう。作事の序(ついで)に、裏も閉まりが出来たかぢやまで。これこれ。裏は、前の如く竹垣ばかりぢや。いざ、竹垣を破らう。この様の時のためと存じて、鋸を用意致した。さらば、垣を破らう。ずかずかずか。めりめりめり、ぐわつさり。扨も扨も、夥(おびたゞ)しう鳴つた事かな。誰も聞きつけねば良いが。
▲小アト「裏の方に、何やら崩るゝ様な音がした。その上、足音もする様な。合点の行かぬ事ぢや。
▲シテ「南無三宝、聞き付けたさうな。
▲小アト「わあ。裏の垣が破つてある。扨は、盗人が入(はい)つた。申し申し。お庭の方へ、盗人が入(はい)つてござる。ちやつと、お出なされませ。
▲アト「何、盗人が入(はい)つた。大勢か、大勢か。
▲小アト「人数は知れませぬ。早うお出なされませ。
▲アト「何(いづ)れも、出合うて下されい。
▲立衆「何、盗人。此処(こゝ)は、私どもが防ぎまする。表の庭、式台の方を堅めさせられい。
▲アト「たいまつを出せ、たいまつを出せ。
▲シテ「これは、苦々しい。まづ、この森の茂みへ影を隠さう。
▲小アト「申し申し。この森の茂みに、人影が見えました。
▲アト「急いで、森の中を探せ。
▲小アト「さればこそ、こゝに居りまする。
▲アト「弓矢を持つて来い。
▲立頭「その様な事には及びませぬ。引き出して、大勢寄つて、手どらまへにしませう。
▲シテ「まづ、待たせられい。盗人ではござらぬ。聊爾をなされますな。
▲アト「夜中(やちゆう)に垣を破り、屋敷の内へ忍び入つて、盗人でない。とは。
▲シテ「全く盗人ではござらぬ。申し訳を致したけれども、大きな蜘の巣にかゝりまして、動き得ませぬ。暫くお待ちなされて下されい。
▲アト「見付けられて、当惑の余り、うろたへた事を申す。
▲シテ「古き言の葉に、蜘の家に、荒れたる駒はつなぐとも、ふた路(みち)かくる妻な頼みそ。かやうにある時は、馬さへ蜘の巣にかゝれば、人間ぢやと云うて、かゝるまいものでもござらぬ。
▲アト「何(いづ)れも、聞かせられたか。あの様な古歌などを申せば、心ある者と見えてござる。
▲立衆「いか様。徒者(いたづらもの)で盗人に入(はい)つたでは、ござるまい。篤(とく)と、様子を尋ねさせられい。
▲アト「やいやい。只今の様子は、げにも、心もある者と見えた。何として、夜中にこの内へは忍び入つたぞ。
▲シテ「さればの事でござる。私は、殊の外の連歌好きでござれども、身上不如意にござれば、自他とも、連歌の会にも出勤致し得ませぬ。今宵、こなたで連歌の会をなさるゝ。と承りましたによつて、せめて物影から聴聞致さう。と存じて、忍び入つてござるが、垣を破つた音をお聞きつけなされて、大勢おり合(あは)せらるゝ。どうぞ、逃げて出よう。と存じて、あそここゝと致す内に、大きな蜘の巣にかゝつて、後(あと)へも先へも参らぬ。楊枝一本盗む了簡はござりませぬ。真つ平(ぴら)、ご赦(ゆる)されませ。
▲アト「何(いづ)れも、聞かせられたか。仔細を聞けば、殊勝な事でござる。さりながら、夜中、垣を破り忍び入つた所は、疑はしうござる。
▲立衆「成程、疑はしい所もござる。
▲アト「私の存ずるは、連歌の長句を致して、彼に短か句を付けさせまして、その付け合ひの様子によつて、命を助けて返しませう。
▲立衆「これは、一段と良うござらう。
▲アト「これこれ。そなたは、連歌好き故。とは仰(お)せあれども、何も証拠がない。今、身共が一句致さう程に、短か句を付けさしませ。その附け合ひの様子によつて、咎(とが)を免(ゆる)して帰さうぞ。
▲シテ「それは、何とぞ付けて見ませう。まづ、御前句(ごぜんく)が承りたうござる。
▲アト「かうもあらうか。
▲シテ「何と。
▲アト「蜘の巣に、かゝる優しき忍び妻。
▲シテ「切るに切られぬ、さゝ蟹の糸。
▲アト「したり。天神も詠吟あれ。扨も扨も、面白い事ぢや。何(いづ)れも、聞かせられたか。
▲立衆「成程、承つてござる。
▲立頭「宵から致いた連歌を聞かれたらば、恥づかしうござらう。
▲アト「太郎冠者。蜘の巣を払うて、これへ出せ。
▲小アト「畏つてござる。まづ、蜘の巣を払はう。箒を取つて参りませう。さあさあ、蜘の巣を払うて進ぜう。
▲シテ「忝うござる。とてものお情(なさけ)に、初め入(はい)つた所から、お帰しなされて下され。
▲アト「これこれ。まづ、待たしめ。扨々、只今の連歌、感心致した。幸ひ、友達衆もあり合(あは)るゝ。近付きになつて、重ねての会に入講させて、心安う致さう。さあさあ、まづ、かう通らしめ。
▲シテ「お心良う仰せらるゝ程、面目なうござる。
▲アト「何(いづ)れも、これへ出させられい。
▲頭「心得ました。
▲シテ「太郎冠者。まづ、御酒(ごしゆ)を持つて来い。
▲小アト「畏つてござる。
▲アト「夜寒にもあり、何(いづ)れも、一つ上がりませ。
▲頭「給(た)べませう。
▲アト「かたがたも、一つ参れ。
▲シテ「お辞義を申せば、御芳志を無に致しまする。一つ、給(た)べませう。
▲アト「一段と良からう。某も給(た)べませう。
▲シテ「扨も、結構な御酒(ごしゆ)でござる。
▲アト「もう一つ、重ねてお呑みあれ。
▲シテ「左様に仕(つかまつ)りませうか。
▲アト「太郎冠者、つげつげ。
▲頭「私どもゝ、又、下さりませう。
▲アト「良うござらう。
▲シテ「お蔭で、胴の震(ふる)ひが已(や)みましてござる。
▲立衆「ちと、諷(うた)ひませう。
▲立同「良うござらう。
▲アト「ざつと、酒盛りになりました。
▲立衆「その通りでござる。
▲アト「さあさあ、何ぞひとさし、お舞ひあれ。
▲シテ「不調法ながら、お慰みでござる。舞ひませう程に、御苦労ながら、何(いづ)れも様、お謡ひなされて下されい。
▲各「心得た。
▲アト「扨、肴を致さう。太郎冠者、云ひ付けた物を持つて来い。
▲小アト「畏つてござる。
▲アト「これは、着古びたれども、そなたへ送る程に、夜寒を凌がしめ。
▲シテ「重々御懇情、お礼を申し尽くし難(がた)うござる。
▲アト「御念の入つた事ぢや。扨、最前も申す通り、この後は心安う、度々お出あれ。さりながら、案内なしに夜裏からは、無用ぢや。案内を乞うて、表から来さしめ。
▲シテ「いや。私より外に、むさと参る者もござるまい。裏も表も、あけ放して置かせられい。
▲アト「扨、もう一つ酒を参らぬか。
▲シテ「いや。も、下されますまい。
▲アト「何(いづ)れも、参りませぬか。
▲頭「もはや、給(た)べますまい。
▲シテ「長居は恐れあり。早、お暇申しませう。
▲アト「何と、お行きあるか。
▲シテ「《諷》{*1}げに、誠や、実正や。盗人に負(お)ひと云ふ、言葉を今こそ知られたれ。連歌に好ける優しさに。呼び入れて見参(げんざう)し、酒一つ呑ませて。またその上に、この小袖。旅は道づれ世は情(なさけ)。思へば蜘の巣にかゝる。褒美を貰ふ恩徳に。富貴栄えを祈りつゝ。諷(うた)ひ納めて帰りけり、諷ひ納めて帰りけり。
《詞》お暇申しまする。
▲アト「ようおりあつた。
▲シテ「はあ
校訂者注
1:底本、ここから「諷納て帰りけり(二字以上の繰り返し記号)」まで、傍点がある。
底本:『和泉流狂言大成 第四巻』(山脇和泉著 1919年刊 国会図書館D.C.)
蜘盗人(クモヌスビト)(三番目 四番目)
▲アト「此辺りの者で御座る、某初心講を結んで、今晩連歌の当にあたつて御座る、表はさわがしう御座るに依つて、奥の亭へお出被成るゝ様にと、約束致したに依つて、太郎冠者を見番に申し付けて置た、日も暮れたに依つて、各々御出被成らうと存ずる、去り乍ら太郎冠者が案内次第に、亭の入口に出向はうと存ずる▲小アト「やあやあ早各々お出ぢやと云ふか、急いで申上げう、申し上まする▲アト「何事ぢや▲小アト「お客様方は早お出で御座る▲アト「心得た、云ひ付けて置た通り皆用意はよいか▲小アト「悉く用意致して御座る▲アト「夫は出かした、急いで{*1}出向はう万事気を付けい▲小アト「畏つて御座る▲シテ「此辺りの者で御座る、某倅の時分から連歌にすいて、常々口ずさむ事で御座る、去り乍ら勝手不如意に御座るに依つて、好物の連歌の会抔も自他共、得出勤致さぬ、又今晩は誰殿方に連歌の会を致さるゝと承つて御座る、前々身上ともかう致した時分は、推参致し出合うた事も御座れ共、近年まずしい身柄をおめて、会にも罷出ねば、おのづから疎遠に御座る、今晩は何卒路次へ忍び入つて、会の様子を余所{*2}ながら立聞致さうと存ずる{シカシカ}{*3}誠に、家貧にしては親知すくなく、身賤しうしては故人うとしと申すが、身上不如意に御座れば何方へもうとうと敷う御座る、何かと云ふ内に是ぢや、此中作事をせられたと聞いたが、扨も扨も結構な事ぢや、門の柱長屋の様子、嘸敷台抔も美を尽されたで有らう、勝手ともかう{*4}する人は長生殿不老門、目前に顕はるゝ、扨々浦山敷い事哉、去り乍ら是では中々はいられまい、裏へ廻つてみやう、作事の序に裏も閉りが出来たかぢや迄、是々裏は前のごとく{*5}竹垣{*6}計りぢや、いざ竹垣を破らう、此様の時の為と存じて鋸を用意致した、さらば垣を破らうずかずかずか、めりめりめりぐわつさり、扨も扨も夥敷うなつた事かな、誰も聞きつけねばよいが▲小アト「裏の方に何やら崩るゝ様な音がした、其上足音もする様な、合点のゆかぬ事ぢや▲シテ「南無三宝、聞き付けたさうな▲小アト「わあ裏の垣が破つて有る、扨は盗人がはいつた、申し申し、お庭の方へ盗人が這入つて御座る、ちやつとお出被成ませ▲アト「何盗人がはいつた、大勢か大勢か▲小アト「人数は知れませぬ、早うお出被成ませ▲アト「何れも出合うて下されい▲立衆「何盗人此処は私共が防ぎまする、表の庭式台の方を堅めさせられい▲アト「たいまつを出せたいまつを出せ▲シテ「是はにがにが敷い、先づ此森のしげみへ影を隠さう▲小アト「申し申し此森のしげみに人影が見へました▲アト「急いで森の中をさがせ▲小アト「去ばこそ爰に居りまする▲アト「弓矢を持つてこい▲立頭「その様な事には及ませぬ、引出して大勢寄つて手どらまへにしませう▲シテ「先づ待たせられい、盗人では御座らぬ、聊爾をなされますな▲アト「夜中に垣を破り、屋敷の内へ忍び入つて盗人で無いとは▲シテ「全く盗人では御座らぬ、申し訳を致したけれ共、大きな蜘の巣にかゝりましてうごき得ませぬ、暫らくお待ち被成て下されい▲アト「見付けられて当惑の余り、うろたへた事を申す▲シテ「古き言の葉に、蜘の家に、荒たる駒はつなぐ共、ふた路かくる妻な頼そ、斯様に有る時は、馬さへ蜘の巣にかゝれば、人間ぢやと云ふてかゝるまいものでも御座らぬ▲アト「何も聞かせられたか、あの様な古歌などを申せば、心ある者と見へて御座る▲立衆「いか様徒者で盗人に這入つたでは御座るまい、篤と様子を尋ねさせられい▲アト「やいやい、只今の様子は実も心も有る者と見へた、何として夜中に此内へは忍び入ツたぞ▲シテ「去ればの事で御座る、私は殊の外の連歌好きで御座れ共、身上不如意に御座れば、自他共連歌の会にも出勤致し得ませぬ、今宵こなたで連歌の会を被成るゝと承りましたに依つて、せめて物影から聴聞致さうと存じて、忍び入ツて御座るが、垣を破つた音をお聞きつけなされて、大勢おり合せらるゝ、何卒逃げて出うと存じて、あそこ爰と致す内に大きな蜘の巣にかゝつて、跡へも先へも参らぬ、楊枝一本盗む了簡は御座りませぬ、真平ら御赦されませ▲アト「何れも聞かせられたか{*7}、仔細を聞けば殊勝な事で御座る、去り乍ら、夜中垣を破り忍び入ツた所はうたがはしう御座る▲立衆「成程うたがはしい所も御座る▲アト「私の存ずるは、連歌の長句{*8}を致して、彼にみじか句を付けさせまして、其付合の様子に依つて命を助けて返しませう▲立衆「是は一段とよう御座らう▲アト「是々そなたは連歌好き故とはおせあれ共、何も証拠がない、今身共が一句致さう程に、短句を付けさしませ、其附合の様子に依つて、咎を免して返さうぞ▲シテ「夫は何卒付て見ませう、先づ御前句が承りたう御座る▲アト「斯うも有らうか▲シテ「何と▲アト「蜘の巣に、かゝるやさしき忍び妻▲シテ「切にきられぬ、ささ蟹の糸▲アト「仕たり、天神も詠吟{*9}あれ、扨も扨も面白い事ぢや、何れも聞せられたか▲立衆「成程承つて御座る▲立頭「宵から致た連歌を聞かれたらば、恥か敷う御座らう▲アト「太郎冠者、蜘の巣を払うて是へ出せ▲小アト「畏つて御座る、先づ蜘の巣を払らう、箒を取つて参りませう、さあさあ蜘の巣を払うて進ぜう▲シテ「忝う御座る、迚ものお情に初め這入ツた所からお返し被成て下され▲アト「是々、先づまたしめ、扨々只今の連歌感心致した、幸ひ友達衆も有合るゝ、近付になつて重ねての会に入講させて、心易う致さう、さあさあ先づ斯通らしめ▲シテ「お心よう仰せらるゝ程面目なう御座る▲アト「何れも是へ出させられい▲頭「心得ました▲シテ「太郎冠者先づ御酒を持ツて来い▲小アト「畏ツて御座る▲アト「夜寒にも有り何れも一つ上りませ▲頭「給べませう▲アト「かたがたも一ツ参れ▲シテ「お辞義を申せば御芳志を無に致しまする、一つ給べませう▲アト「一段とよからう、某も給べませう▲シテ「扨も結構な御酒で御座る▲アト「最一つ重ねてお呑あれ▲シテ「左様に仕りませうか▲アト「太郎冠者つげつげ▲頭「私共も又下さりませう▲アト「よう御座らう▲シテ「お蔭で胴のふるいがやみまして御座る▲立衆「ちと諷ませう▲立同「よう御座らう▲アト「ざつと酒盛{*10}になりました▲立衆「其通りで御座る▲アト「さあさあ何ぞ一トさしお舞ひあれ▲シテ「不調法ながらお慰みで御座る、舞ませう程に御苦労ながら、何れも様お謡ひ被成て下されい▲各「心得た▲アト「扨肴を致さう、太郎冠者いひ付た物を持つて来い▲小アト「畏つて御座る▲アト「是は着古びたれ共そなたへ送る程に、夜寒を凌がしめ▲シテ「重々御懇情お礼を申し尽しがたう御座る▲アト「御念の入ツた事ぢや、扨て最前も申す通り、此後は心易う度々お出あれ、去り乍ら、案内なしに夜る裏からは無用ぢや、案内を乞ふて表から来さしめ▲シテ「いや私より外に、無左と参る者も御座るまい、裏も表も明け放して置かせられい▲アト「扨最一ツ酒を参らぬか▲シテ「いやも下されますまい、▲アト「何れも参りませぬか▲頭「最早給べますまい▲シテ「長居は恐有、早お暇申しませう▲アト「何とお行きあるか▲シテ「《諷》げに誠や実正や。盗人に負といふ。言葉を今こそしられたれ。連歌にすけるやさしさに。呼入てげんぞふし酒一ツ呑せて。また其上に此小袖。旅は道づれ世は情。思へば蜘の巣にかゝる。褒美を貰ふ恩徳に。富貴栄へを祈りつゝ。諷納て帰りけり諷納て帰りけり。《詞》{*11}お暇申まする▲アト「よふおりあつた▲シテ「はあ
校訂者注
1:底本は、「急いて」。
2:底本は、「他所(よそ)」。
3:底本、「シカシカ」は、ト書きと同じ大きさの活字で縦一行書き。
4:底本は、「ともかうと」。
5:底本は、「ことく」。
6:底本は、「竹搆(たけがき)」。
7:底本「聞かせられたか」の「か」一字、カスレ。
8:底本は、「丈句」。
9:底本は、「泳吟」。
10:底本は、「酒宴(さかもり)」。
11:底本は、「詞」は、通常の大きさの活字。
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