『能狂言』上24 大名狂言 いまゝゐり
▲シテ「遠国に隠れもない大名です。かやうに過をば申せども、召し使ふ者は只一人でござる。いちにんでは使ひ足らぬによつて、新参の者をあまた抱へうと存ずる。まづ太郎冠者を呼び出いて、申し付けう。
やいやい。太郎冠者。あるかやい。
▲冠者「はあ。
▲シテ「居るか居るか。
▲冠者「はあ。
▲シテ「居たか。
▲冠者「お前に。
▲シテ「念なう早かつた。まづ立て。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「そちを呼び出す事、別なる事でもない。汝一人では使ひ足らぬによつて、新参の者をあまた抱へうと思ふが、何とあらうぞ。
▲冠者「御意なくば、申し上げうと存ずる程に、これは一段と良うござりませう。
▲シテ「それならば、いか程置かうぞ。
▲冠者「それは、こなたの御分別次第でござる。
▲シテ「むゝ。分別次第と云ふは、身が儘ぢやといふ事か。
▲冠者「左様でござる。
▲シテ「それならば、せかせかと置かうより、一度にどうと置かう。
▲冠者「良うござりませうが、いか程置かせらるゝぞ。
▲シテ「物程置かう。
▲冠者「いか程。
▲シテ「物程。
▲冠者「いか程。
▲シテ「ゑゝ。三千ばかりも置かうか。
▲冠者「それは、余り夥しい事でござる。ちと減させられい。
▲シテ「それならば、へさう。減して、五百人ばかりにもせうか。
▲冠者「まづは減り事はへりましたが、それでは堪忍が続きますまい。
▲シテ「や。
▲冠者「堪忍。
▲シテ「かんにん。
▲冠者「中々。
▲シテ「堪忍堪忍。むゝ。堪忍といふは、食み物の事か。
▲冠者「左様でござる。
▲シテ「それは、沢山にある水をはませて置け。
▲冠者「いや。申し。人間が中々水ばかりで命の続くものではござらぬ。
▲シテ「ぢやあ。
▲冠者「中々。
▲シテ「只へさう。
▲冠者「良うござりませう。
▲シテ「物程置かう。
▲冠者「いか程。
▲シテ「物程。
▲冠者「いか程。
▲シテ「ゑゝ。二人置かう。
▲冠者「とてもの事に、今一人へさせられい。
▲シテ「汝ともに、ふたりの事ぢやいやい。
▲冠者「一段と良うござりませう。
▲シテ「そちは太儀ながら、今から上下の街道へ行て、新参の者を抱へて来い。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「早う戻れ。
▲冠者「心得ました。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
▲シテ「もう戻つたか。
▲冠者「まだお前をにじりも致しませぬ。
▲シテ「かう云ふは、急がせうためぢや。急げ急げ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「早う戻れ。
▲冠者「心得ました。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
扨も扨も、こちの頼うだ人の様に、物を急に仰せ付けらるゝお方はござらぬ。さりながら、いつ物を仰せ付けらるゝとあつても、わつさりわつさりと仰せ付けらるゝによつて、御奉公が致しよい。まづ急いで参らう。誠に、只今までは某一人で旧労を致いてござるが、今度新参の者を抱へたならば、何かを彼に申し付け、ゆるりと休息致さうと存ずる。いや、参る程に上下の街道ぢや。まづこの所に待ち合せ、似合はしい者も通らば、言葉を掛け、抱へうと存ずる。
▲今参「これは、遥か遠国方の者でござる。某、奉公の望みで都へ上る。まづそろりそろりと参らうと存ずる。誠に皆人の仰せらるゝは、若い時旅を致さねば、年寄つての物語がないと仰せらるゝによつて、ふと思ひ立つてござる。あはれ良い処もあれかし。足をも止め、都のしつけ様体を習うて参らうと存ずる。
▲冠者「いや。これへ一段の者が参る。急いで言葉を掛けう。なうなう。しゝ申し。
▲今参「やあやあ。こちの事でござるか。何事でござるぞ。
▲冠者「いかにも和御料の事ぢや。聊爾な申し事なれども、どれからどれへおりやるぞ。
▲今参「私は奉公の望みで、都へ上る者でござる。
▲冠者「やあやあ。奉公の望みで都へ上る。
▲今参「中々。
▲冠者「それは幸ひの事でおりやる。抱へうものを。
▲今参「はあ。あの、そなたがの。
▲冠者「不審尤な。身共が抱ふるではない。某が頼うだ人は、くわつとお大名でおりやるが、今度人をあまた抱へさせらるゝによつて、和御料が望みならば、云うて出いてもやらうかといふ事でおりやる。
▲今参「それは望む処でござる。なる事ならば、云うて出いて下されい。
▲冠者「扨は御同心か。
▲今参「いかにも同心でござる。
▲冠者「それならば、今にもおりやらうか。
▲今参「なんどきなりとも参りませう。
▲冠者「その儀ならば、まづ和御料からおりやれ。
▲今参「私は不案内にござる。まづこなたからござれ。
▲冠者「案内者のために、身共から参らうか。
▲今参「それが良うござらう。
▲冠者「さあさあ。おりやれおりやれ。
▲今参「参りまする参りまする。
▲冠者「かやうにふと言葉を掛け同道致すも、他生の縁でかなおりやらうぞ。
▲粟田「仰せらるゝ通り、他生の縁でかなござらう。かう参るからは、こなたを寄り親殿と頼みまする。良い様に引き廻いて下されい。
▲冠者「それはそつとも如才する事ではおりない。扨、和御料の国はいづ方ぢや。
▲今参「遥か遠国でござる。
▲冠者「遠国と聞けば国がゆかしい。扨、そなたは秀句がなるか。
▲今参「いや。申し。私はもはや参りますまい。
▲冠者「それはなぜに。
▲今参「まだ参らぬ先から辛苦なとは仰せられぬか。
▲冠者「いやいや。それはそなたの聞きやうが悪しい。辛苦ではおりない。秀句こせごとをご存じかと申す事でおりやる。
▲今参「いや。私は左様の事は存じませぬ。
▲冠者「かう云ふも、別なる事でもおりない{*1}。こちの頼うだお方は殊ない秀句好きで、秀句さへ云へば悦ばせらるゝによつて、そなたが知らずば教へておまさうかと申す事ぢや。
▲今参「習うてなる事ならば、教へて下されい。
▲冠者「別に難しい事でもおりない。あれへおりやつたならば、行く行くは名をも付けさせられうずれども、当分は名を今参りと付けさせらるゝであらう。
▲今参「それはともかくもでござる。
▲冠者「今参り、あれへ居りそへ、あれへ居りそへと御諚あらば、お座敷を見れば破れ的ぢやと仰しやれ。
▲今参「左様申しても苦しうござらぬか。
▲冠者「中々。苦しうおりない。心はと問はせられた時、い所が候はぬと答へうがためでおりやる。この心は、惣じて破れた的といふものは、射所のないものぢや。又、和御料が初めて来て、どれに居ようぞと思ふ心を、寄せ合はせて云うたものでおりやる。
▲今参「誠に下心が面白うござる。
▲冠者「扨その後、今参り、あれへこれへ、早う居りそへ疾う居りそへと御諚あらば、判官殿の思ひ人ぢやと仰しやれ。
▲今参「いや。申し。私は左様の思ひ人ではござらぬ。
▲冠者「和御料が思ひ人ではなけれども、静かに参らうなどゝ答へうがためでおりやる。
▲今参「これも面白うござる。
▲冠者「さうさへ仰しやつたならば、頼うだ人は悦うで抱へさせらるゝであらうぞ。
▲今参「近頃忝うござる。扨、程は遠うござるか。
▲冠者「今少しぢや。随分急がしめ。
▲今参「心得ました。
▲冠者「いや。何かと云ふ内に、これでおりやる。
▲今参「これでござるか。
▲冠者「中々。そなたを同道した通り申し上げう。まづそれに待たしめ。
▲今参「心得ました。
▲冠者「申し。頼うだ人。ござりまするか。太郎冠者が戻りましてござる。
▲シテ「いゑ。太郎冠者が戻つたさうな。太郎冠者、戻つたか戻つたか。
▲冠者「ござりまするか、ござりまするか。
▲シテ「いゑ。戻つたか。
▲冠者「只今戻りました。
▲シテ「やれやれ、大儀や。してして、云ひ付けた新参の者を抱へて来たか。
▲冠者「まんまと抱へて参りました。《△これより過を云ふ処、「粟田口」同断なり。「出かいた出かいた。どこ元に置いた」と云うて》
▲シテ「何と、今のは聞かうか。
▲冠者「夥しいお声でござつたによつて、承りませう。
▲シテ「行て云はうは、新参の者に、遥々の所を太儀にこそあれ。さうあれば、折節頼うだ人、表へ出られた。白洲まで出て目見えをせい。それもお目が参つたなら、御見参であらうず。又お目が行かずば、五日も十日も逗留する事があらうと云うて、汝が分で深がらせて置け。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
なうなう。今のお声をお聞きやつたか。
▲今参「あれは、どなたのお声でござる。
▲冠者「今のが、頼うだお方のお声でおりやる。
▲今参「まづお声から致いて、お大名と聞こえまする。
▲冠者「くわつとお大名ぢや。扨、折節頼うだ人、表へ出させられた。お白洲まで出てお目見えを召されい。それもお目が行たならば、御見参であらうず。又お目が行かずば、五日も十日も逗留する事があらう程に、さう心得さしめ。
▲冠者「畏つてござる。随分お目の参る方へ頼みまする。
▲今参「つゝとお出やれ。
▲冠者「心得ました。
▲シテ「やいやい。居るかやい。
▲冠者「はあ。
▲シテ「それ。表の侍中に、只居られいで、矢の根なりとも磨かれいと云へ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「又、先度奥よりも牽き上せた馬どもを悉く引き出いて、湯洗ひさせい。
▲冠者「心得ました。
▲シテ「はあ。今日は良い天気ぢやなあ。
▲冠者「良い天気でござる。
▲シテ「暮れに及うだならば、いづれもの出させられて鞠をなされう程に、かゝりへ水を打たせて掃除させい。
▲冠者「新参の者。
▲シテ「今のが新参の者か。
▲冠者「左様でござる。
▲シテ「まづは利根な奴ぢや。某が目が行くと、目見えが済んだと思うてちやつとのいたは、出かし居つたなあ。
▲冠者「でかしましてござる。
▲シテ「が、人といふものは、見たと違うて心映へのつゝと不精な者があるものぢや。きやつが心映へを目で使うて見よう。これへ出せ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
なうなう。そなたの心映へを目で使うて見ようと仰せらるゝ。あれへお出やれ
▲今参「心得ました。
▲冠者「随分お目の参る方へおりやれ。
▲今参「畏つてござる。
▲冠者「新参の者、出ましてござる。
▲シテ「《目で使うて、笑うて》やいやい。太郎冠者、太郎冠者。
▲冠者「はあ。
▲シテ「今のを見たか。
▲冠者「見ましてござる。
▲シテ「某が目の行く方へ、あちらへはちらり、こちらへはちらり、ちらりちらりちらり。《笑うて》出かし居つたなあ。
▲冠者「利根な奴でござる。
▲シテ「行て云はうは、新参の者に、堪忍をするならば、扶持はくわつと取らせう。行く行くは名をも付けうずれども、当分は今参りと付くる。尋ぬる事がある程に、これへ出いと云へ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
いや。なうなう。殊ない御機嫌ぢや。頼うだ人仰せらるゝ、堪忍をするならば、扶持はくわつと取らせう。行く行くは名をも付けさせられうずれども、当分は今参りとお付けなさるゝ。お尋ねなさるゝ事がある程に、あれへ出いと仰せらるゝ。
▲今参「畏つてござる。
▲冠者「つゝとお出やれ。
▲今参「心得ました。
▲冠者「は。今参り、出ましてござる。
▲シテ「今参り、あれへ居りそへあれへ居りそへ。
▲今参「今参り、あれへをりそへあれへをりそへと御諚候へども、お座敷を見れば破れ的です。
▲シテ「何ぢや。破れ的。
▲今参「中々。
▲シテ「破れ的破れ的。太郎冠者。これは秀句ではないか。
▲冠者「いかさま。秀句さうにござる。
▲シテ「某が秀句に好くといふ事を、きやつは何として知つたなあ。
▲冠者「されば何と致いて存じましたか。
▲シテ「心を問はう。
▲冠者「良うござりませう。
▲シテ「その破れ的の心はいかに。
▲今参「い所が候はぬ。
▲シテ「南無三宝。食はせ居つた。やい。太郎冠者。汝はこの心が合点が行くまい。
▲冠者「何とも合点が参りませぬ。
▲シテ「惣じて破れた的といふものは、射所のないものぢや。それに、きやつがこれへ初めて来て、どれに居ようぞと思ふ心を寄せ合はせ、破れ的、い所が候はぬは、出かし居つたなあ。
▲冠者「出かしましてござる。
▲シテ「きやつが腹中は広さうな。また問はう。
▲冠者「良うござりませう。
▲シテ「今参り、あれへこれへ、早う居りそへ、疾う居りそへ。
▲今参「今参り、あれへこれへ、早うをりそへ、疾うをりそへと御諚候へども、判官殿の思ひ人です。
▲シテ「はあ。臍たえがたと面白や。その思ひ人の心はいかに。
▲今参「弁慶。
▲シテ「しさり居ろ。
やい。太郎冠者。今のを聞いたか。判官殿の思ひ人ぢやと云ふによつて、静かに参らうかなどゝ答へうと思うて、古への静御前を目の前に見る様に、ほぞ堪え難う面白うあつたれば、弁慶と云ふ。あの荒くましい弁慶と、いつ判官のお契りやつた事がある。あの様な奴は役に立つまい。早う追ひ戻いてやれ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
なう。こゝな人。路次で教へた通りは云はいで、なぜにむさとした事を仰しやつた。
▲今参「まんまと申し済まさうとは存じてござれども、殿様のご威勢に恐れて、怪顛致いて申し損なうたと仰せられて下されい。
▲冠者「心得た。《その通りを云ふ》
▲シテ「惣じて大名の前では物が云ひ難いものぢやと云ふ。それならば許す。今度はきやつが烏帽子の形に付いて尋ぬる事がある。これへ出せ。
▲冠者「畏つてござる。
これこれ。今度は和御料の烏帽子のなりに付いてお尋ねなさるゝ事があると仰せらるゝ。又あれへ御出やれ。
▲今参「畏つてござる。
▲冠者「むさとした事を云ふまいぞ。
▲今参「心得ました。
▲冠者「今参り、出ましてござる。
▲シテ「今参り{*2}が着たる烏帽子は祠に似てす。
▲今参「それはさうもござらう。中に壁を塗るです。
▲シテ「しさり居れ。
▲冠者「早う下がらしめ。
▲シテ「やい。太郎冠者。今のを聞かぬか。一度ならずあの様な事を云ふといふ事があるものか。きやつが烏帽子の形が鎮守ほこらの伊墻のなりに似たによつて、中にかみをいはうたなどゝ答へうと思うたれば、壁を塗つたと云ふ。あの余席もない烏帽子の中に、いつ造作がして壁が塗らるゝものぢや。とかくあの様な奴は役に立たぬ。早う追ひ返してやれ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「やいやい。まだ何も振舞ひはせぬか。
▲冠者「いや。まだ何も振舞ひは致しませぬ。
▲シテ「水なりと振舞うたならば、取り戻いて往なせ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
なう。そこな人。一度ならず{*3}今の様なむさとした事を云ふといふ事があるものでおりやるか。
▲今参「さればその事でござる。私の国元の習ひで、問ふ事もいらふる事も、拍子に掛かつては答へまするが、殿様の様にあり居りに仰せられては、え答へませぬ。拍子に掛かつてならば、いかやうにも答へうと仰せられい。
▲冠者「何ぢや。拍子に掛かつてならば、いかやうにも答へう。
▲今参「中々。
▲冠者「それは誠か。
▲今参「誠でござる。
▲冠者「真実か。
▲今参「一定でござる。
▲冠者「申し。掛からうと申しまする。
▲シテ「掛からうとは。
▲冠者「きやつが申しまするは、国元の習ひで、問ふ事もいらふる事も、拍子に掛かつてはいかやうにも答へまするが、殿様の様にありをりに仰せられては、え答へませぬ。拍子に掛かつてならば、いか様にも答へうと申しまする。
▲シテ「何ぢや。拍子に掛かつてならばいかやうにも答へうと云ふか。
▲冠者「左様でござる。
▲シテ「いゑ。幸ひ某が拍子好きぢや。それならば、きやつが五体を拍子に掛かつて問はう程に、これへ出いと云へ。
▲冠者「畏つてござる。
▲シテ「ゑい。
▲冠者「はあ。
なうなう。そなたの五体を拍子に掛かつて問はうと仰せらるゝ。あれへ御出やれ。
▲今参「畏つてござる。
▲冠者「つゝと出さしめ。
▲今参「心得ました。
▲冠者「今参り、出ましてござる。
▲シテ「《イロ》いかにやいかに。今参りが着たる烏帽子は祠にぞ似たる。
▲今参「それはさも候ふ。中に髪の候へば。
▲シテ「弓矢八幡面白い。額こそは高けれ。
▲今参「蜂額で候ふもの。
▲シテ「眉が又かゞうだ。
▲今参「かぎ眉で候ふもの。
▲シテ「目こそはつぼけれ。
▲今参「酢壺目で候ふもの。
▲シテ「耳がまた薄いわ。
▲今参「猿の耳で候へば。
▲シテ「鼻が又大きな。
▲今参「虹梁鼻で候ふもの。
▲シテ「口こそは広けれ。
▲今参「鰐口で候へば。
▲シテ「胸が又高いわ。
▲今参「鳩の胸で候へば。
▲シテ「腰こそは細けれ。
▲今参「蟻腰で候へば。
▲シテ「すねが細う長いわ。
▲今参「蟋蟀すねで候へば。
▲シテ「おとがひがさし出た。
▲今参「やり頤で候ふもの。
▲シテ「やり頤で候ふもの。
▲両人「やり頤で候ふもの、やり頤で候ふもの。《いくつも返して、仕舞ひは跳んで、左右三度して留めるなり》
やり頤で候ふもの。ほつぱい、ひうろ、ひい。《と云うて留める》
校訂者注
1:底本は、「別成事でも(ない)」。
2:底本は、「今参まいり」。
3:底本は、「一度成ならず」。
底本『能狂言 上』(笹野堅校 1942刊 国立国会図書館D.C.)
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