待てば算用もあひ寄る仲
昔、都の町に「頷き婆」とて、仲人口のよき者あり。年中これを身過ぎにして、首尾させぬといふ事なし。
ここに、三十五に成る男の歳を隠して、十五に成る娘と縁組取り持ち、頼みの祝儀送らせ、相済ましける。その後、娘の親、聟の年長けたるを聞き出だし、「身代は不足無けれども、いかにしても二十の違ひなれは、中々娘を遣るまじき。」と言ふ。又、男の方には、「呼ばねば堪忍致さず。」
仲人迷惑して、この段、御前へ申し上ぐれば、両方召し出だされ、「男の儀、格別なる悪事あらば申すべし。歳の違ひの分にては、約束の証取つての上、きつと娘を送るべし。」と仰せ出だされし時、「この儀は、仲立ちの者、あまりなる偽りを申し、娘は十五に罷り成り候に、三十五の男は、歳二十の違ひ御座候。せめて半分の違ひなれば、娘を送り申し候{*1}。この儀は聞こし召し分けさせられ、似合はざる縁組。頼みを返したき」御願ひを申し上ぐる。
時に仰せられけるは、「その方が望みの通り、今五年過ぎて娘を送るべし。聟もそれまで相待つべし。四十になれば、女は二十歳。年{*2}半分違ひ時あり。」と仰せ付けられけるとなり。
校訂者注
1:底本は、「送申(おくりまを)す、」。『本朝桜陰比事』(1993)に従い改めた。
2:底本は、「二十歳(はたち)、半分(はんぶん)」。『本朝桜陰比事』(1993)に従い改めた。
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