九けつのかひ
(藤井氏一本)
さるあひだよりともの御ぢやうには。なみの上ふねのうちにてのあそびには。なになにと申とも。あまのかづきによもしかじ。あまをめしよせうみへいれ。いきたるかいをとり上て。さかなにせんとの御ぢやうなり。かぢはらうけたまはり。あまをめさんはじこくの候。われとおもはんわかさふらひ。此うみへとんで入。かいさう取上て。きみの御めにかけよといふ。本馬弥二郎きゝあへず。ひぼひつきつてはだかになり。うみへざんぶと入たりけり。あまりあはてゝいるほどに。ゑぼしきながらつゝと入、にしにみるめのついたるを。とり上てまいらする。よりともは御らんじて。あつはれいはゐのきよくかなとて。よかりけるところを。百町くだしたびにけり。これを見けるわかさぶらひ。われおとらじとうみにいり。あるひはにしさゞい。みるめわかめなんどを。とり上とり上まいらする。よりとも御かんにおぼしめし。百町二百町。よろひはらまきなんどを。かぢはらをぶぎやうにて申下されけるとかや。こゝにちゝぶの六郎殿。まん時ばかりうみにいり。ひつじのさがりもとまでは。其身もさらにうき出ず。よりともの御ぢやうにはあのちゝぶの六郎は。としにもたらぬしよくはんなるが。はやりをのまゝにうみにいり。何とか成けんおぼつかなし。しげたゞのわかものども。いつてさがせなんどゝ。さいさん御下知下る。ちゝぶ殿申さるゝ。御ぢやうにては候へども。ゆみとりのこどもは。うみ山川にたつしやにて。むまにもよく乗てこそ。君の御ぜんにまかりたつて。くんこうけじやうにあづかるべき。かゝるあそびの水れんに。おほれんほどのふかく人。とり上たりとも御せんには。たつべきにても候はず。たゞたゞをかせたまひて。なりゆくさまを御らんぜよと。あざらへわらつておはします。其後に六郎殿。いかなるじゆつかまへけん。もといのさきをもぬらさずして。まうなるかいを三十とつて。はだへにひつしと取つけ。ためいきつゐてうきあがる。よりともは御らんじて。さながらそれへまいれ。はだへにかいのつきやうを。見物せんとの御ぢやうなり。をそれいつてまいらず。かさねて御ぢやうくだりければ。さいのしくはんちかよしが。てをひゝてまいりけり。よりともは御らんじて。今日のすいれんは。いづれおろかにおもはねど。ちゝぶの六郎が。はだへにかいの。さてもつきやう。きたいのふしぎに。おぼふる物かなと。御さかづきにさしそへ。ひたちのくにかしまのしやう。かいほつのがうとて。八百町のところを。くだしたびにけり。いちもんのこらすひきつれ。しよち入とこそきこえけれ。
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