「日本記」の内
酸き味をば薬師とし、双調の声を説法す。苦きを以て黄■の、宝生如来これなり。辛き味を阿弥陀とし、平調の声を出すなり。塩はゆきを盤渉調、釈迦の音声、これなり。甘き味をば大日の、一越調の響きあり。宮商角徴羽五韻は、酸苦甘辛塩はゆく、乳味酪味生酥味、熟酥味醍醐味、五つの音を集めつつ、華厳阿含方等般若、法華とこれを申すなり。仏も経も真言も、この中よりも作り出す。地獄極楽押しなべて、仏も法も僧宝も、一体必ず三宝。三宝やがて三観。三観一義に一心。一心やがて空にして、隔ても更に無きものを、いかなる迷ひ不思議にか、これ程広き大海に、一つの嶋のなかるらん。
(短中之部)
大日の梵字のその上に、出で来始めし国なれば、大日本国とは申すなり。日本国の淡路嶋、けしの勢に出で来て、天竺も開けり、さて大唐も始まれり。さしもに広き天竺国、月をかたどる国なれば、月氏国とは申すなり。唐土も広しと申せども、震旦国と名付けつつ、星をかたどる国にてあり。日本我が朝は、小国なりとは申せども、日域と名付けつつ、日をかたどれる国にて、三国一の我が朝に、心のままの寿命にて、長く栄ゆるめでたさよ。
(短中之部)
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