【翻字】
行粋(ゆくすい)の流(ながれ)は同し人にしてしかももとの
野夫(やぼ)にはあらず土気(つちけ)のとれたる吸物
好(ごのみ)梅咲(さく)宿の春しごとこぞのままなるふる
衣(ごろも)ふるきをたづねて新五茶(しんござ)のいやみから
みもなには江(へ)やあしとは人のいふらんも唯(たゞ)
吉原のよしよしとつのぐむいろはほにしへて
野夫(やぼ)にはあらず土気(つちけ)のとれたる吸物
好(ごのみ)梅咲(さく)宿の春しごとこぞのままなるふる
衣(ごろも)ふるきをたづねて新五茶(しんござ)のいやみから
みもなには江(へ)やあしとは人のいふらんも唯(たゞ)
吉原のよしよしとつのぐむいろはほにしへて
みとりの色香深川のふかき浅きはくみ分(わけ)
て知る人ぞしるしやれ仲か間(なかま)ちかゝらん
者は目にめじろ遠からんものは耳に音羽の
音に聞(きく)遊子方言(ほうげん)辰巳の岡高きをこのむ
はなつぱりむしろつまたちて望(のぞま)んよりは火の見
はしごをのぼりてこそ他(た)の高慢の鼻柱
をしらんかしかし味酒(あぢざけ)の蜜をねぶらせて終(つゐ)
て知る人ぞしるしやれ仲か間(なかま)ちかゝらん
者は目にめじろ遠からんものは耳に音羽の
音に聞(きく)遊子方言(ほうげん)辰巳の岡高きをこのむ
はなつぱりむしろつまたちて望(のぞま)んよりは火の見
はしごをのぼりてこそ他(た)の高慢の鼻柱
をしらんかしかし味酒(あぢざけ)の蜜をねぶらせて終(つゐ)
にうつはきに剥(はぎ)とらるゝはいづくも同じ狂言綺
語(けうごんきご)さん茶梅茶のかね四つきりの裏茶屋はいり
寝て解く文庫結びの黒繻子かひやひやさわるも
何とやらんさうさう敷引茶屋(ひけぢやや)より取よせて
の飲喰(のみくひ)もむねつかゆる心地ぞするをましてや茶漬(ちやつけ)
茶碗にもりたる心太(ところてん)を御夜食と覚たらんも尚
おかしからぬかは
酔醒茶弦(ゑひざめのぢやづる)がいふ
語(けうごんきご)さん茶梅茶のかね四つきりの裏茶屋はいり
寝て解く文庫結びの黒繻子かひやひやさわるも
何とやらんさうさう敷引茶屋(ひけぢやや)より取よせて
の飲喰(のみくひ)もむねつかゆる心地ぞするをましてや茶漬(ちやつけ)
茶碗にもりたる心太(ところてん)を御夜食と覚たらんも尚
おかしからぬかは
酔醒茶弦(ゑひざめのぢやづる)がいふ
【語釈】
・しんござ・・・江戸時代、遊里で、やぼな田舎武士をばかにしていう語。浅黄裏?。新五左。
・つのぐむ・・・草木の芽が角のように出はじめる。
・辰巳の岡・・・深川の岡場所。深川の芸者は「辰巳芸者」と呼ばれ、「意気(粋)」とされていた。
・はなっぱり・・・人と張り合って負けまいとする意気。向こう意気。負けん気。
・うつはぎ・・・そっくりはぎ取ること。まるはぎ。
・狂言綺語・・・。道理にはずれた語や飾り立てた語。小説・物語・戯曲などを卑しめていう語
・三茶・・・三軒茶屋。当時ここに三軒の茶屋があったことから地名の通称となった。
・かね四つ・・・夜四つ(午後10時ころ)の時の鐘。女郎屋の張見世終了時刻であった。
・裏茶屋・・・遊里の裏通りにあった茶屋。遊女と間夫?(まぶ)?の忍び逢いなどに利用された。
・文庫結び・・・当時、武家の女性が結ぶ帯の基本的な結び方であった。
【解説】
跋は序文と同じく、文飾の多い戯文です。江戸の岡場所の地名や情景を織り込み、四編の内容にも触れ、古典からの引用やパロディを盛り込んでいますが、特に深い意味はなく、ただ跋文として置いて本の体裁を整えている駄文にすぎません。
本書は『太田南畝全集 第7巻』『洒落本大成 第7巻』『洒落本大系 第4巻』『徳川文芸類聚 5』『洒落本集』などに収録されているようです。詳しくはそちらをご参照ください。

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