【翻字】
世中の人を 何とも おもふなよ 我だに よくは 人もよからむ

わがよきに人のあし きがあらばこそ人の あしきは我あしき也 人によき事する者 には人も又よき事 をもつてこれにむく ゆ人にあしき事 するものには人も 又むくゆるにあしき 事をもつてす我 人にあしき事をせ ずんば人も又我に あしき事あらんや やぶれ車のわがあし きことを思ひしり てねをこそなかめ 世をうらみぬ身と 成ねといへるこゝろ なるべし
【通釈】
世の中の人を何とも思うな(。他人の目を気にし過ぎるな)。自分さえ良ければ(結果としてそれは周囲の)人も良い(結果になる)だろう。
自分にとっては良いのに他人にとっては悪いという事があるとすると、(それは結局)自分にとっても悪い事である。他人にとって良い事をする者には、他人も又良い事をして返して報いる。他人にとって悪い事をする者には、他人も又悪い事をして報いるものである。自分が他人に悪い事をしないなら、他人も又自分に悪い事をするはずはない。壊れた車は車輪も悪いように、自分が悪い事をし(て、結果として災難にあっ)た(のではないか)と反省して、(自分の不遇を)嘆く事はあっても、世の中を(逆)恨みに思うことはない(、そんな)己になりなさい、という(のがこの歌の)心であろう。
【語釈】
・やぶれ車のわがあしき…「(破れ車の)輪が」と「我が」を掛けて、ともに「悪しき」に掛かる。
【解説】
第七首目は「他人を気にし過ぎないこと」の重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、右手に狩衣を着た身分の高そうな人が手にクジャクの羽根のような長い羽根らしきものを持って立っている姿、左手にそれより少し身分の低そうな者がごく小さな物を持って胡坐で座っている姿を描いています。持っているものの大小が歴然としている様子を描いているようです。
