【翻字】
おもふべき ものは身よりも 名なりけり 名は末代の 人の世中

竜門原上(げんしやう)の土に 骨をうづんで名を うづみえぬこそ誠 の人の本意なるべ けれ人生遅速夢 まぼろしの如し 心を苦しめて益 なし末代までも 伝ふるはたゞこの 美名なり苟(いや)しくも 名を惜(をし)まん輩(ともから)は かへすかへすのつねの かうせきをつゝしみ まもるべき事也
【通釈】
心に思うべきものは、一身よりも名である。(肉体は一代で滅びるが、)名は末代まで残るのが人の世の中である(から)。
肉体は竜門原上の土に骨を埋めても、その名は埋める事ができない(で世に名声として末代まで残る)事こそ実に人としての本懐であるだろう。人生は速いとか遅いとか言っても、結局は夢幻のよう(にはかない)ものである。(そんな人の一生にあくせくして)心を苦しめても仕方がない。末代までも伝えるのは、ただもう人としての名声である。かりにも名を惜しむような人には、くれぐれも常日頃の行動を慎み(正しく)守るべきである。
【語釈】
・名は末代…人の名は良いにつけ悪いにつけ後世まで残るということ。
・竜門原上の土に骨をうづんで名をうづみえぬ…白居易「題故元少尹集」に見える言葉。(元宗簡の遺文の序として述べた句で、「肉体は竜門に葬られたが、書き残した遺文三十巻は立派なものなので、その名声は後世に残る」という意から)死後に立派な名を残すこと。
・本意…もとからの考え。本来の意志。本懐。本望。
・遅速…遅いか速いかの度合い。
・かうせき…行状。身持ち。行跡。
・竜門原上の土に骨をうづんで名をうづみえぬ…白居易「題故元少尹集」に見える言葉。(元宗簡の遺文の序として述べた句で、「肉体は竜門に葬られたが、書き残した遺文三十巻は立派なものなので、その名声は後世に残る」という意から)死後に立派な名を残すこと。
・本意…もとからの考え。本来の意志。本懐。本望。
・遅速…遅いか速いかの度合い。
・かうせき…行状。身持ち。行跡。
【解説】
第五十九首目は、「名を重んじて生きる」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、大きな五輪塔を指さして何やら話している二人の男性の姿が描かれています。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))