【翻字】
 世中に人を そだつる心こそ 我をそだつる こゝろなりけれ

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 凡情物我のへだ て甚しきによりて 遂に親疎の争(あらそひ)も 出来るなり物我の 病を治するには 忠恕の薬を以て すべし然るときは 人をそだつるが即ち 我をそだつるに なることをしらるゝなり

【通釈】
 世の中で、人を育てようとする心こそが、自分をも育てる心であることだなあ。

 だいたい人情というものは、自分と自分以外のもの一切の隔たりが大きいことで、自分に親しいか親しくないかの間で争いも生まれて来るのである。この弊害を克服する妙薬は、誠実さと思いやりの心であるだろう。その心を働かせる時、人を育てる事が自分を育てる事でもあることが自然とわかるのである。

【語釈】
・物我…外界の一切のものと自分。
・親疎…親しいことと疎遠なこと。親しい人と親しくない人。
・忠恕…自分の良心に忠実であることと、他人に対する思いやりが深いこと。

【解説】
 第六十一首目は、「人を育てるのは自分を育てることでもある」ことについて詠んでいると、注釈は説明しています。ただ、注の説明は難解です。絵は、座敷で二人の男性が何やら話している場面が描かれていますが、意味が判然としません。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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