【翻字】
 世中の人にもとはで する事は をかしきことか 侍(はんべ)らんかな

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 大舜(たいしゆん)は好問たまひ 孔文は下問を恥ず 孔子これを美徳と せり俗諺にも問(とふ)は 一度の恥問(とは)ぬは末 代の恥といへり何事 もよくよく人に問(とひ) 尋ねてなすべき事 なり故実あること ともしらでとり はからふ時は有心の 人見て冷笑すべし

【通釈】
 世の中で、人に尋ねないでする事は、可笑しい事がありますねえ。

 聖帝舜は質問することを好みなさり、孔文は目下の者に質問するのを恥としなかった。俗な諺にも、「問うは一時の恥、問わぬは末代の恥」と言う。何事によらず、よく人に尋ねてしなくてはいけない。昔からの作法やしきたりを知らずにしてしまうと、思慮分別のある人から冷笑されるだろう。

【語釈】
・大舜…神話上の聖帝で、五帝の一人。「大」は尊称。
・好問…注には訓点があり、「問ふを好み」と読める。『中庸』右第六章に見える言葉。
・孔文…衛の大夫。
・下問…自分より身分・年齢の低い者に対して物事を尋ねること。
・孔子これを美徳とせり…孔文についての評が『論語』公冶長篇に見える。
・故実…昔の儀式・法制・作法などの決まりや習わし。先例となる事例。
・有心…思慮・分別の深いこと。

【解説】
 第六十四首目は、「わからない事は人に尋ねてからする」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、三人の男性が鳥鍋を作る場面が描かれています。包丁を持つ一人が俎板の上の鳥を前に何やら考えているようで、それを一段高いところで煙管を持つ一人が覗き込んでいます。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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