【翻字】
 世中は物に たのみをかくるなよ さだめなきかな 定めなきかな

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 つれづれ草にいきほひ 有とて頼むべからず こはきものまづほろぶ 宝多しとて頼べからず うしなひやすし才あり とて頼べからず孔子も 時にあはず徳有とて 頼べからず顔回も不幸 なり君の寵をも頼べ からず誅をうくること すみやかなり人の志をも たのむべからず必ず変 ず約をも頼べからず 信あることすくなしと 云々孔子の固なく 必なきも仏の不定と 説(とか)れたるもみなこれ 物にたのみをかけざれ とのさとしにかはる ことなし

【通釈】
 世の中は何かを当てにしてはいけないよ。この世は無常、一定しないものだなあ。

 この歌は、芸道の心得を言っている。身分の貴賎は人それぞれであるが、心を込めてするならば、どの道でも上達しないことがあろうか。一つの道に上達する者は、必ずその時々の一人前の者として認められる名誉を得るであろう。

【語釈】
・頼み…たよりにすること。あてにすること。
・さだめなし…移り変わりやすい。一定しない。無常である。
・つれづれ草に…以下、『徒然草』二百十一段に見える。
・いきほひ…権勢。権力。財力。
・こはし…しっかりしている。強い。
・才…学識。教養。
・寵…貴人・主君などの格別な愛顧。格別なかわいがり。寵愛。
・誅…罪あるものを殺すこと。
・信…偽らないこと。信義。
・固なく必なき…『論語』子罕篇に見える言葉。
・不定…さだまらないこと。確かでないこと。

【解説】
 第六十五首目は、「自分以外のものを当てにしない」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、嵐になびく柳や薄が描かれています。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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