【翻字】
 人ごゞろあまり ちいさくかなはぬは かへりてそんが あらむ世中

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 百貫文の鷹も放 つことなけれは鳥を もとる事なしと いひしごとくあまりに 小気なるものはかへ りてそんのゆくこと ありたとへばひでり もやゆきなましとて 米穀のたねをまか ざるがごとしつねには 人のこゝろはよろづ うち目なるかたを よしといひならはせ ることなればこゝに いふあまりといふ字 とかへりてといふ字 にこゝろをつくべし

【通釈】
 人の気があまりにも小さくて現実にそぐわないのは、かえって損する事があるだろう。世の中は。

 「百貫文もする鷹も、(戻って来ない事を恐れて)実際に空に放たなければ、鳥一羽を獲る事もない(。宝の持ち腐れになってしまう」という言葉があるように、あまりにも気が小さいと、かえって損をしてしまう事がある。たとえば、「旱魃になってしまうかもしれない」と心配して、米や麦の種を蒔かないようなものである。ふつう、人の気は何事によらず控えめ・慎重な方が良いとされているので、この歌にも「あまり」「かへりて」という言葉が使われている点に注意すべきである。

【語釈】
・かなふ…適合する。ぴったり合う。
・百貫文…約二十五両。
・小気…気の小さいこと。小心。小胆。
・もや…~かもしれない。
・うち目…不詳。「控えめ」の意か。

【解説】
 第六十七首目は、「小心過ぎるのは損である」ことについて詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、室内に寝ころび、腹ばいになって戸に開けられた小さな覗き穴から外を見ている一人の男性の姿を描いています。小心者・臆病者の姿として描いているのでしょう。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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