【翻字】
 誰もたゞ たらざる事を 心得は あまれる事はまして世中

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 過不及(くはふきう)なくして 中節をまもれとの をしへなり衣服 酒食のおごりに長じ て果はたらざる世を へるといふも道にあら ず財宝我にたれる うへにも利よくを むさぼりこがねを してほくとのほしに さゝへんとねかふも よからぬ事なり あまれる事はまし てといへるは過たるは なほ及ばざるがごと しと聖人のことば 思ひあはすべし

【通釈】
 誰でも、不足するという事を用心していれば、余るという事はなおさら用心するであろう。世の中は。

 「何事も適度にして節度を守りなさい」という教え(を詠んだ)歌である。飲食飲酒を贅沢にして、最後はお金に困って一生を終えるというのも、人として生きるべき道ではない。財宝が十分にある上にさらに欲張って、北斗七星に届くほどに財産を積むことを願うのも、良くない事である。「余れる事はまして」と詠んでいるのは、「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」という聖人の言葉を考え合わせるべきである。

【語釈】
・心得る…気をつける。用心する。
・まして…なおさら。いわんや。
・過不及ない…適度である。ちょうどよい。
・中節…不詳。『中庸』に「節に中(あた)る」という言葉があり、その意か。節度にかなう。
・金をして北斗の星に支へんと願ふ…『徒然草』第三十八段に見える言葉。
・過ぎたるは猶及ばざるがごとし…『論語』先進篇に見える言葉。「何事でもやりすぎることはやり足りないことと同じようによくない」。

【解説】
 第七十一首目は、「浪費も蓄財も共によくない」ことについて詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、酒宴をしている座敷を背に、縁側で算盤を弾いている一人の男性を描いています。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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