【翻字】
 よの中に けうくんきかず つれなくは いかなることか有明の月

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 いとけなきより師友 のをしへなく酒色を ほしいままにして人 より教訓異見を加へ いるゝとてもいさゝか 耳に入(いれ)ず己が心に 任せて行ひ傍若無人 ふりまひの人はすゑ つひにはいかなるまさ なきとがはしたな き事かあらんと也 有明はつれなきの えんのことばなり

【通釈】
 世の中で、人の教えを聞かずに知らんぷりしていると、どんな事になるだろうか。

 幼少時から先生や友人の教えを受ける事もなく、酒や色事をしたい放題にして、人から忠告や諫めを聞いても少しも聞き入れず、欲望のままに行動し、傍若無人に振る舞う人は、最後にはどのような良くない罪過やみっともない目に合うであろうかとこの歌は言っているのである。「有明」は「つれなき」に縁の深い言葉である。

【語釈】
・有明…「(いかなる事か)有る」の意を「有明」と掛けている。
・教訓…教えさとすこと。
・つれなし…素知らぬふうだ。冷淡だ。
・師友…先生と友人。
・酒色…飲酒と色事。
・異見…自分の思うところを述べて、人の過ちをいさめること。
・ふりまひ…「ふるまひ」の意か。
・まさなし…よくない。不都合だ。見苦しい。予想外だ。
・とが…あやまち。しくじり。罰されるべき行為。罪。
・はしたなし…きまりが悪い。体裁が悪い。
・有明はつれなきのえんのことばなり…百人一首にも「有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし」(壬生忠岑)「今来むといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな」(素性法師)など、「有明の月」に「つれなき(恋人)」を詠み掛けた歌が見える。

【解説】
 第七十四首目は、「人の教えに耳を傾ける」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、月夜に一人の娘が、長い棒を持った男性に縛られて、どこかへ連れて行かれる場面が描かれています。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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