【翻字】
一声を時鳥(ほとゝぎす)より きゝたきは 道あることを かたる世中
一声を時鳥(ほとゝぎす)より きゝたきは 道あることを かたる世中

道は大道なり我 日の本の神の をしへの道をはじ めとして孔子老子 釈迦みな人をみち びく道にあらずと いふことなしこれ 一声山鳥曙雲の 外にあざやかにして わづかに耳をよろ こばしむるにもまさ りてきかまほし きとなり
【通釈】
時鳥の声よりも聞きたい一声は、道があるという事を語る声である。世の中は。
「道」とは「大道」の事である。日本の神の教えの道を始めとして、孔子・老子・釈迦それぞれの教え、全て人を導く道でないものはない。これは、「一声山鳥曙雲の外」という漢詩にある、山時鳥が一声曙の雲の彼方で鮮やかに鳴いた、その声がかすかにかに聞こえて耳を喜ばせたという、その喜びにも勝って、それより聞きたい声である、と詠んでいるのである。
【語釈】
・大道…人の行うべき正しい道。根本の道徳。
・一声山鳥曙雲の外…『和漢朗詠集』夏・郭公に見える許渾の詩の一節。
・一声山鳥曙雲の外…『和漢朗詠集』夏・郭公に見える許渾の詩の一節。
【解説】
第七十五首目は、「道を説く正しい教えを聞きたい」ことについて詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、奥の座敷に着飾った女性が四人いるのに見向きもせずに、机に向かって書物を読んでいる男性の姿を描いています。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))