【翻字】
世中の正体(しやうだい)なしは なすこともなければ ありききてはぬるのみ
世中の正体(しやうだい)なしは なすこともなければ ありききてはぬるのみ

身の産業にうと く学問諸芸に心 がけもなく何すべき わざもなきものは たゞいたづらに あくまでくらひいづく ともなくうかれあ りき帰り来て打 ぬるは正体なしの すたれ人といふべし 孟子に飽(あく)まで食(くら) ひ暖(あたゝか)に衣(き)て逸居(いつきよ) してをしへなきは 禽獣に近しといへり
【通釈】
世の中にいる正気のない人というのは、する仕事もなくただうろつき歩いてやって来ては寝るだけである。
生業の事もよく知らず、学問や諸芸に心得もなく、何もする事のない人は、ただ無駄に食べるだけで、あてもなくぶらつき歩き、帰って来ては寝るだけなのは、正気のない役立たずと言うべきである。『孟子』に、「食べるだけ食べて暖かに服を着てのんびり暮らしていても教育のない者は、動物に近い」と言っている。
【語釈】
・正体…正気。
・産業…生活していくための仕事。職業。生業。
・うとし…よく知らない。
・うかる…あてもなくさまよう。ふらふらと出歩く。
・すたる…不用になる。
・孟子に…『孟子』滕文公篇に見える言葉。
・逸居…気楽に暮らすこと。
・産業…生活していくための仕事。職業。生業。
・うとし…よく知らない。
・うかる…あてもなくさまよう。ふらふらと出歩く。
・すたる…不用になる。
・孟子に…『孟子』滕文公篇に見える言葉。
・逸居…気楽に暮らすこと。
【解説】
第七十七首目は、「無為徒食は人として正気ではない」ことについて詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、何か道具を使って手仕事をしている男性の目の前で、横寝して肘をつき、煙管を吹かせている男性の姿を描いています。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))