【翻字】
世中に人のうらみを うけぬるはよからじとこそ おもひしらるれ
世中に人のうらみを うけぬるはよからじとこそ おもひしらるれ

己の利をはかりて 他を憐(あはれ)むの心なく 孤寡を欺き人の 憂患に乗じ非道 の貪りをなすは 眼前利ありといへ とも人のうらみ かさなりて消(きえ)やらず 遂に怨府(うらみのふ)となりて 其身の後程(こうかい)よから ぬ道理必定ぞと 未然を指(さし)て深く これを懲(こら)せり
【通釈】
世の中で人の恨みを受けるのは良くない事であると、自然と思い知ることだ。
自分の利益を図って、人を憐れむ心がなく、孤児や寡婦を騙し、人の心配に付け込んで強欲非道の所業をするのは、当面の利益はあっても、人の恨みが身に積もって消えず、恨みの的になって、将来は良くないのが物の道理であると、そのような人の未来を明示して懲らしめている(歌である)。
【語釈】
・孤寡…父を失った子と夫に先立たれた女。孤児と寡婦。
・憂患…心配して心をいためること。
・怨府…人々のうらみの集まる所。
・後程…「こうかい」のふりがな不審。「のちほど」の意か。
・必定…そうなると決まっていること。必ずそうなると判断されること。
・未然…まだそうなっていないこと。まだそのことが起こらないこと。
・憂患…心配して心をいためること。
・怨府…人々のうらみの集まる所。
・後程…「こうかい」のふりがな不審。「のちほど」の意か。
・必定…そうなると決まっていること。必ずそうなると判断されること。
・未然…まだそうなっていないこと。まだそのことが起こらないこと。
【解説】
第七十九首目は、「人の恨みを受けない」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、刀の柄に手をかけて怖い形相をしている二人の男性に取り囲まれ、前で書状を示している無精髭の男性に、慌てている表情で手を前に差し伸べて何やら訴えている男性の姿が描かれています。自分を仇と狙う者たちに見付かり、弁解か命乞いをしている場面かと推察されます。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))