【翻字】
 世中はけふ人の上 あすはわが 身のうへなりと こゝろえんかな

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 けふは人の身の上 にてあすはやがて わがみのうへにうつり くることは春過(すぎ) て夏くるがごとし 盛者必衰のな らひ会者定離 のためしまでも うき世のさまに もれぬ事なれ ば一生を過(すご)す身 にしてはよくよく此 こゝろをさとり 心得てみちに たがひまよふこと なかれとなり

【通釈】
 世の中は、今日人の上に起きたことが、明日は我が身に起こる事であると思い知る事だなあ。

 今日は人の上に起きたことが、明日は我が身に降りかかる事は、春が過ぎると夏が来るのと同じで(必然で)ある。この世は無常であり、勢い盛んなものは必ずいつか衰え、出会った人とは必ず別れる日が来るという定めも、この浮世では例外なく起こる事だから、一生を送る身として十分によくこの真理をわきまえて、人の道を踏み外したり迷いの道に入ってはならないとこの歌は言っているのである。

【語釈】
・盛者必衰…この世は無常であり、勢いの盛んな者もついには衰え滅びるということ。
・ならひ…世のさだめ。世の常。
・会者定離…この世で出会った者には、必ず別れる時がくる運命にあること。
・ためし…前にすでにあったこと。先例。前例。
・心…物事の本質をなす意味。

【解説】
 第八十三首目は、「人の身の上に起こる事は明日は我が身と考える」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、二人の徒歩武者が刀をかざして迫るのを、一人の騎馬武者が刀で追い払おうとしている場面を描いています。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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