【翻字】
世の中にせまじき物は 我はがほ そらごとぬすみ せうぶいさかひ
世の中にせまじき物は 我はがほ そらごとぬすみ せうぶいさかひ

わがすこしきげい のうにほこりわれ なくてはとひげ くいそらしたるもの いとつらにくし善 にほこる事なか れと顔回ののた まひしも此心なり そらごとぬすみ せうぶいさかひとも にせまじき事 なれはつねづね つゝしみまもるべし
【通釈】
世の中でしてはいけない物は、威張る事、嘘をつく事、盗む事、勝負事、そして争い事である。
自分の少しばかりの学問や能力、芸事の腕前を自慢し、我こそはと威張る者は、顔を見るのも憎らしいものである。「自分の善行を自慢してはいけない」と顔回が仰ったのも、同じ心からである。嘘をつく事、盗む事、勝負事、争い事、すべてっしてはならない事であるから、常日頃から慎み、(正しい道を)守るべきである。
【語釈】
・芸能…学問・芸術・技能などについてのすぐれた能力。教養として身につけなければならない学問・芸術などの技芸。生花・茶の湯・歌舞音曲などの芸事。
・我は顔…我こそはと思い上がっている顔つき。得意顔。
・髭食い反らす…髭を口にくわえたように生やし、その先の方を反らす。威張ったさま。
・つらにくし…顔をみるのも憎らしい。
・善にほこる事なかれと顔回ののたまひし…『論語』公冶長篇に見える言葉。
・そらごと…うそ。いつわり。
・我は顔…我こそはと思い上がっている顔つき。得意顔。
・髭食い反らす…髭を口にくわえたように生やし、その先の方を反らす。威張ったさま。
・つらにくし…顔をみるのも憎らしい。
・善にほこる事なかれと顔回ののたまひし…『論語』公冶長篇に見える言葉。
・そらごと…うそ。いつわり。
【解説】
第八十五首目は、「威張る事、嘘をつく事、盗む事、勝負事、そして争い事は慎む」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、花札とお金が散らばる座敷で、一人の男性が一人の男性の胸ぐらをつかみ、それを一人が後ろから制止しようとし、一人は後ろからそれを眺め、一人は外を見て煙管を吸っている場面を描いています。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))