【翻字】
 虎にのり かたはれ舟に のれるとも 人の口はに のるな世中

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 かたはれ小舟の あやうきにのり いきほひたけき虎 にのるものも百に ひとつもつゝがなき 事もありぬべし 身のおこなひよから ざる事ともありて 人の口はにのり たらんはつひにとり かへしなければのら さるやうにつゝしめ よとなりこれも 古哥をそのまゝ出せり

【通釈】
 虎に乗ったり、二つに割れた船に乗ったりする事はあっても、人の噂の種になってはいけない。世の中は。

 二つに割れた危険な小船に乗ったり、猛獣の虎の背に乗ったりする人も、百に一つは無事である事もきっとあるだろう。良くない事をいくつかしでかして、人の噂の種になると、これは取り返しがつかないから、そうならないように行動を慎みなさいと(この歌は)言っているのである。この歌も、古哥をそのまま引いて詠んだものである。

【語釈】
・片割れ…割れた器物などの一片。
・口端…うわさ。評判。口先。くちは。
・とりかへし…取り返すこと。もとの状態に戻すこと。
・古哥…不詳。『万葉集』第十六巻三八三三「虎に乗り古屋を越えて青淵に蛟龍捕り来む剣太刀もが」を指すか。

【解説】
 第八十八首目は、「人に噂されないよう身を慎む」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、陸で虎の背にまたがる男性と、水上で板切れに乗り漂う男性の姿を描いています。

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(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))

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