【翻字】
津の国のなにはの ことも世中は 有べきやうに有べかりけり
津の国のなにはの ことも世中は 有べきやうに有べかりけり

およばぬ事をしいて ねがひ求むといふとも 一として其せん あるまじたゝわが身 にたるゝ程をしり 世中なにはのよし あしにつき有べき やうにあらましかば 何のくるしみかあらん 安留辺幾也宇和 といへる七文字は 栂尾(とがのを)の明恵(みやうゑ)上人 常々諸人に示され たる宝訓なり此 哥のこゝろ全く此 を暁(さと)せり
【通釈】
摂津の国の難波ではないが、何につけても世の中は、それぞれが有るべきように有るのが良いことだ。
自分の手の届かない事を無理に願い求めても、何一つその甲斐はないであろう。ただ、自分にふさわしい程度をわきまえて、世の中、良いも悪いも何につけても、それにふさわしいようであれば、どんな苦しみがあるというのか。「あるべきやうわ」という七文字は、栂尾の明恵上人がふだんから人々に示された尊い教えである。この歌の心も、この教えをそのまま諭している。
【語釈】
・津の国…摂津国。
・なには…「何(は)」と「難波」を掛ける。
・せんなし…何かをしても報いられない。かいがない。
・たる…相応している。価値がある。値する。
・なにはのよしあし…「難波の葦蘆」と「何(は)の良し悪し」を掛ける。
・安留辺幾也宇和…明恵上人の遺訓にある言葉。歌の「有べきやうに」とは違いがある。
・栂尾の明恵上人…(1173~1232)。華厳宗の僧。
・宝訓…不詳。「宝のように尊い教え」の意か。
・なには…「何(は)」と「難波」を掛ける。
・せんなし…何かをしても報いられない。かいがない。
・たる…相応している。価値がある。値する。
・なにはのよしあし…「難波の葦蘆」と「何(は)の良し悪し」を掛ける。
・安留辺幾也宇和…明恵上人の遺訓にある言葉。歌の「有べきやうに」とは違いがある。
・栂尾の明恵上人…(1173~1232)。華厳宗の僧。
・宝訓…不詳。「宝のように尊い教え」の意か。
【解説】
第九十七首目は、「ほどを知り、ほどを心得て生きる」ことの重要性について詠んでいると、注釈は説明しています。絵は、山中の庵の前で長い竿を肩に担いで空を仰ぎ見る一人の男性の姿を描いています。

(底本:『世中百首絵鈔』(1835年刊。三重県立図書館D.L.))