【翻字】
メノコ笹の葉にて水を顔にかけ
気絶せぬやうにヘウタキとて
声をかけてはげます
ウカリ
密夫あるいは不法の事せしも
大抵はたからものを出して債ば
そのゝち議論なし
しかれとも持さるもの
ウカリせんといふ
其時は双方の親族
たち合て三尺余の
大なる棍にて
背中を三つ打なり
又その相人も三つうたる
よりて柔弱なるものは
只一打に死するもあり
生涯のかたはとなる
ものもあり
故に家々に
この棍をかけ
置てよりよりは
うたれて稽古を
なしおくなり

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【通釈】
女性は笹の葉で顔に水を浴びせ、棒で叩かれた者が気絶してしまわないように、声をかけて励ます。
ウカリ
密通あるいは不法行為を働いた者も、たいていは宝物をやって償いをすれば、後々問題にはならない。けれども償うべき宝物を持っていない者については、ウカリをしようということになる。その時は双方の親族が立ち会って、三尺余りの長さの棒で背中を三つ打つ。また、密通の相手となった人妻や不法行為の共犯も三つ打たれる。そのために弱い者はただ一回打たれただけで死ぬ者もいる。一生障害を負ってしまう者もいる。だから、家々にこの棒をかけ置いて、時々打たれてウカリに備える練習をしておく。

【語釈】
・密夫…ひそかに人妻と情を通じる男。情夫。
・債ば…「つぐなはば」と読むか。
・三尺…約91cm。
・棍…棒。
・相人…不詳。密夫の場合、それと通じた妻を指すか。
・よりより…ときどき。ときおり。

【解説】
 アイヌのウカリという体刑について描き、説明しています。