【翻字】
喜八「その最初はナ、人間ちウものは上見たら際限(はうづ)がない
と云ツて……
老爺「夫(そ)りや何(な)んぢやい一体、汝等(わいら)吐(ぬか)す言(こと)は分からん、マ
アマア可(よ)いわい、乃公(おれ)が這入ツたら悪うはせぬマア出て来い
喜八「ヘエ大きに御馳走さんでござります
老爺「ハゝゝゑらい汝(われ)ア気が早いナ、何も馳走するとも何(な)
んとも云うてりやせぬが
喜八「ハア老爺(おやぢ)さんスキ(○○)焼は最(も)ういけませんぜ
老爺「放棄(ほツ)とけイそんな事は
喜八「鯛の刺身(つくり)で淡泊(あツさ)りと
老爺「そりやア何吐(なんか)すのぢや、マア来い
老爺(おやぢ)さん先に立ツて直(じ)き片傍(かたへ)の料理屋へ伴(つ)れて参りまし


老爺「姐(あね)はん御免なされや
主婦「ハイ親方お出でやす
老爺「また若い奴等喧嘩さらしてナ、一寸(ちよツ)と物を言うて遣
りました、何でも介意(だん)ない一杯(ぺい)拵へて遣ツてお呉れ
主婦「ハイ親方毎度有難う、万留(どうぞ)二階へお昇(あが)りやす
老爺「ハイ御免なされ……サア昇(あが)れ両人(ふたり)とも
喜八「イヨー、ハゝゝゝ何(ど)うも……
源兵「笑ふなへゲラゲラと
喜八「源兵衛さんゑらい上首尾(すツくり)と行ツたナ
源兵「そんな事を云ふなへ
両人(ふたり)は伴立(つらツ)て二階へ昇(あが)り座に着きますと、一寸(ちよい)と三ツ鉢
に即席(はやまく)に拵へて持ツて参りました

【語釈】
・伴立(つらツ)て…ルビ不鮮明。

前頁  目次  次頁

【解説】
 胴乱の幸助が喧嘩していた二人を連れて料理屋に入り、二階に上るくだりです。
 このくだりも、本書古形版と故・桂米朝等による現行版との間に大きな差異はありません。

イメージ 1