【翻字】
得牛 資清
尋侘あはれこゝろをつくしうしひきうるつなのこゝろゆかすな
尋侘あはれこゝろをつくしうしひきうるつなのこゝろゆかすな
【歌】
尋(たづね)侘(わび)あはれ心を尽くし憂し 引き得る綱の心行かすな
【訳】
探しあぐねて、ああ、心を砕いて辛い。そんな辛苦の果てに求める牛(己が心)を綱(仏法)で引き留め得て、(この上はもうこの)心を(その欲念の向かうままに)行かせてはならない
【語釈】
「憂し」は「牛」を掛けています(掛詞)。
【解説】
この歌の題である十牛図第四図はこれです。

少年は牛の角に綱を掛け、ようやく牛を捕まえます。牛は全力で逃れようと走り、少年は両手で綱を握り、渾身の力で牛と抗います。両者の姿勢と綱の張りが、自己の心と向き合ってそれを知り尽くし、統御しようとする意識と心本体との緊張、仏道修行者の心の内の葛藤を比喩的に表現しています。
作者の裏松資清(うらまつすけきよ)寛永3年(1626年)-寛文7年(1667年)、最高位は参議正三位、第七首の作者・烏丸資慶の弟です。彼の没年から、この十牛歌の制作年代の下限が決定されました。
この歌は第三首同様、少し意味の取りにくい歌です。特に歌の半ば、「うしひきうるつなの」が、翻字も含め定かではありません。上に示した以外、合理的に説明できる筋を見出せません。上に示したように解すると、歌意も通り、絵にもよく符合します。