〈助体言〔ヂヨタイゲン〕〉(すわりでには)

 助体言は体言三品のひとつなるが、その相並びたる物名言・形容言とは大に異なるものにして、其の性質をいへば前條までに示せる詞どもと後條の用言なる作用言・助用言・形状言とをもて言語を構造するとき、彼と是との間にありて語格を定むるとりもちをなすもの即ち〈媒介言〔バイカイゲン〕〉(なかだちごと)ともいふべきものなりとす。これをば今世には(てにをは)とも(てには)とも言へり。こは経書のよみかたに〈ヲコト点〔テン〕〉といへるものあるより出でたる名にて、多くあるその同類の詞どものうちより著明なるもの、即ち(て)(に)(を)(は)の四つを取り出でて呼びたる也。かくよびたるは、かの平仮名の四十七文字をそのはじめの文字によりて(いろは)と呼べると同じ意の名なるなり。さてこれは然(し)か言語の構造即ち詞の組たてを助くるものなるからここには助言と呼び、又其の字を(てには)とも読まする事なるが、その助言には体言なると用言なるとの二品ありて、それが一つなることばじりの働くかたを「助用言」といふに対(むか)へて、今一つなることばのすわりたるかた、即ちここなるを「助体言」(すわりでには)とはいふ也かし。かくて其の類を三別して「名格助言」「備格助言」「整格助言」とし、此の三格に随ふものにて小別したるさまざまなる助言のある也と知るべし。

〈名格助言〔メイカクヂヨゲン〕〉(なのうちにつかふてには)

 名格助言は助体言三別のひとつなり。そもそも助体言といふものは前條にて言へる如く言語構造の媒介言にして、詞を組み立つる時ならでは入用ならざる也。さて其の詞を組みたつるといふは物名言と作用言とを組み合(あは)するにて、後に示す処の備言・整言・変化言なる三様のしかたをなすもの也。されば助体言は夫等の事に入用なるがもちまへなるは言ふまで無きを、其の三別のひとつなる此の名格助言のみは一種特別のものにて、組み立ての上には入用ならずして、名格とていまだ言語にならぬまへの称呼中につかふものにて、これに二品ある事左の如し。

〈連合助言〔レンガフヂヨゲン〕〉(あはせなにつかふてには)〈の〉 〈同第二助言〉〈が〉

 右の(の)(が)は、物名言なる複称のうちにて連合第四言につかふものなりとす。即ち其の処に示し置けるにて知るべし。

〈併列助言〔ヘイレツヂヨゲン〕〉(ならべなにつかふてには)〈と〉

 右の(と)も同じ事にて、これは物名言の複称のうちなる併列第二言につかふものとす。是もその処に示し置けり。さればこの名格助言どもは詞の組み立てにつかふものならぬ一種の助言なれどもさすがにそのつらにあるものなれば、単称なる物名には関係無くして、複称とて幾分の組み立ての意味をもちたる連合・併列の両言につかふものとなれるは、おのづから言語構造法の理に叶へる事を知るべし。

【補説】
 ここで谷は助体言(今でいう助詞)と助用言(今でいう助動詞)を助言(今でいう付属語)と一括して「(今でいう自立語、特に体言と用言の間で)語格を定むるとりもちをなすもの」「言語の構造即ち詞の組たてを助くるもの」とその機能を定義している。さらに助体言を三分し、名格助言として「が・の・と」を挙げ、複称言を作る働きをするとしている。今でいう格助詞の連体用法と並列用法である。
 以下、用語対照表を示す(左 本書独自の用語:右 現在の一般的用語)。
・助体言:助詞
・体言:活用のない語
・物名言:名詞
・形容言:副詞・感動詞など
・作用言:動詞
・助用言:助動詞
・形状言:形容詞
・助言:付属語

4105