〈整格助言〔セイカクヂヨゲン〕〉(ととのへごとにつかふてには)

 整格助言は助体言三別の一つにして、是は前條の助言にて詞のしたごしらへ即ち備言なるものを造り、それに作用言をつけて詞のしあげをなしたるもの即ち整言といふものになしたるを、また変化する事ありてそれにはいろいろのしかたある中に、助言をつかひて変化するしかたのあるその助言どもなり。次々に挙ぐるを見て知るべし。

〈集合助言〔シフガフヂヨゲン〕〉(あつむるてには)〈も〉 〈第二助言〉〈さへ〉 〈第三助言〉〈だに〉

 集合助言の事を示すまへに、整言に重畳格といふ事のあるを先づ言(いふ)べし。整言はかさぬることありて、その上に置くものを前置言といひ下に置くものを後置言といひて、これを重畳格と号(なづ)くるもの也とす。さてその前後両置言なる同格の備言が相共に動くときこれをいひあつむる為につかふものにて、その両備言をうくるが爰(ここ)の集合助言の(も)なるなり。第二・第三助言とする(さへ)(だに)は、その後置言なる備言をうくる(も)に換へてつかふものなりとす。ただし(だに)のかたは不格助言(ずのあつかひにするてには)とて、助用言の処にある不言の類を前後両置法にあつかひてあるときにのみにつかふものとす。委しき事は相動格の処にいふを見てしるべし【本書下巻43/155「相動格」・48//155「相動第二・第三格」参照】。

〈分別助言〔ブンベツヂヨゲン〕〉(わかつてには)〈は〉 〈第二助言〉〈のみ〉

 分別助言は前條なる集合助言とはその意味は全くうらうへなれどもつかひかたは同じ事にて、これは前後両置言なる同格の備言が反対に動くときこれをいひわかつ為につかふものにて、その両備言を受くるが爰の分別助言の(は)なるなり。第二助言の(のみ)も又同じ事にて、その後置言なる備言をうくる(は)にかへてつかふもの也とす。委しき事は反動格の処にいふを見て知るべし【本書下巻45/155「反動格」参照】。

〈相動将格助言〔サウドウシヤウカクヂヨゲン〕〉(ともにしからんとするにあつかふてには)〈ば(者)〉

 この相動将格助言の(ば)と次の反動将格助言の(とも)とは前の二條にて示せる(も)(は)の助言によりて出来たる相動格・反動格といふものを将然の意になすときに用ゐるものにして、それは前置言の用言を爰の(ば)と次の(とも)とに受けて、後置言の用言を将言の類にてあつかひて成るものとす。委しき事は相動将然格の処にいふを見て知るべし【本書下巻55/155「相動将然格」参照】。

〈反動将格助言〔ハンドウシヤウカクヂヨゲン〕〉(そむきてしからんとするにあつかふてには)〈とも〉

 この反動将格助言の(とも)は前條にてそこの(ば)とつかひかたを同じくするよしを示したれば、又いふにも及ばざるべし。ただし此の(とも)はまれには(も)を略言して(と)とばかりもいふ事あると、相動のかたにては後置言の用言を将言類にてあつかひて成ると言ひおきたるを、是れは反動なる故に後置言の用言を受くるに将言の意の含まりたる不言、即ち第二不言・第三不言に受けて成るとの違ひあるなり。委しき事は反動将然格の処にいふを見て知るべし【本書下巻55/155「反動将然格」参照】。

〈相動已格助言〔サウドウイカクヂヨゲン〕〉(ともにしかあるにあつかふてには)〈ば(波)〉

 この相動已格助言の(ば)と次の反動已格助言の(ども)とはこれも前の二條にて将格助言のつかひかたを示せると同じ事にて、かの(も)(は)の助言によりて出来たる相動格・反動格を已然の意になすときに用ゐるものにして、その前置言の用言を受くるものなることかはりなし。ただし将然格のかたは後置言の用言を将言の類または第二不言・第三不言等にて受けて成るものなれども、此の已然格のかたはもとの相動格・反動格のままにて成るものとす。なほ委しき事は相動已然格の処に示すを見るべし【本書下巻62/155「相動已然格」参照】。

〈反動已格助言〔ハンドウイカクヂヨゲン〕〉(そむきてしかあるにあつかふてには)〈ども〉

 この反動已格助言の(ども)も前條に示せる如くなれば更にいはず。ただし将然格の(とも)を略言するやうに反動のかたはおのづから略言せらるるいひなしなるからに、爰(ここ)の(ども)もまた(ど)と略言する事にて、これは殊に多くつかへるものとす。然るにこのかたはこれにとどまらずして、まれにはその(ど)をさへ略(はぶ)きて助言なしにいふ事もあり。其等の事は反動已然格の処に委しく示すを見て知るべし【本書下巻62/155「反動已然格」参照】。
 さて已上四條に挙げたる相動の(ば(者))(ば(波))・反動の(とも)(ども)は将然と已然との別にしてそのつかひかたも判然とわかれたるものなるを、初学はややもすればまぎらかしてつかひ誤るものなれば、爰(ここ)とそのつかひかたとの処をよく見合せ、たしかに覚えて置くべし。

〈第七間格助言〉〈と〉

 これは前の間格助言の所に第六言まである上に、今一つこの(と)があるからこれを第七間格助言といふなり。然るに第六言までは物名言を受くるがもとにて整言の続体格をもうくる事なるを、この(と)は特別にて整言の用言を切断したるものとまた続体格にもあらずしてその用言を続体言にしたるものとを受くる、異やうなる助言なりと知るべし。然るにこれが又、物名言をもうくる事あるは、もと略言格にてそれは其の物名言を先づ助用言なる第二畢言の(なり)に受けてさてそれをば(と)にて受くべき所なるを、その(なり)を略言してただちに(と)と受けたる也としるべし。かくてまた示し置くべし、指示言の処にて「(かくて)(さて)と言ふ(て)は間格第三次助言の(にて)といふ(て)と同類にて一格のもの也」といひ置きつるが、爰(ここ)の(と)も又それと同じき(て)にてうけて(とて)ともいはるるものなるを知り置くべきなり。なほ間格第七言の処にいふを見て知るべし【本書下巻29/155「間格第七言」参照】。

〈喚起助言〔クハンキヂヨゲン〕〉(よびおこすてには)〈よ〉

 この喚起助言の(よ)は整言の主言なる(が)にかへて用ゐるものにて、この時はその用言を希求言か或るは次條の禁止助言をつかひたる禁止言にして、整言を希求格にするものなりとしるべし【本書下巻65/155「希求格」参照】。

〈禁止助言〔キンシヂヨゲン〕〉(いましめとどむるてには)〈な〉 〈第二助言〉〈〈な〉〈そ〉〉

 禁止助言に二つありて、(な)は第三続用活を受け(なそ)はその間へ続用言をはさみて作用言を禁止言とはする也。さて然(し)かなしたる禁止言をつかふは前條にいひたる如く希求格の希求言にかふるものにて、かくなしてもなほ希求格といふべきなれども、またそれを禁止格ともいふなりと知るべし。かくて又ことわり置かん、(な)は必ず第三続用活をうくべきものなれども、まれには続体活を受くる事もあるは定格を離れての変化なれば、みだりにはすまじき事と心得るをよろしとす。

〈加勢助言〔カセイヂヨゲン〕〉(いきほひをくはふるてには)〈かし〉

 この(かし)は用言の切断活また希求活を受けて、その詞に勢ひを加ふるものとす。さてこれには〈約言〔ヤクゲン〕〉(つづめごと)あり。先づ助用言中の第四将言なる(ら)を同類の将言なる(ん)に受けて成れるが(らん)といふ助言なるをこの(かし)にて受けて(らんかし)と言ふとき、その(らんか)を約(つづ)むれば(ら)と成る故に然(し)かつづめて(し)につづけたるが(らし)といふひとつの助言のやうにはなれるなり。さればもと第四将言より出たるものなるから、(らし)はすべて用言の第三続用活を受くる也と知るべし。さても然(し)かつづまりたる(らし)がまた助用言なる第二去言の(ける)・第二竟言の(たる)・第二畢言の(なる)・良行変格活の(ある)を受けて(けるらし)(たるらし)(なるらし)(あるらし)と成るとき、いづれも(るら)は(ら)と約まる故に再びつづまりて(けらし)(たらし)(ならし)(あらし)とやうにもいはるるなりと知るべし。
 已上は本書に挙げたる詞どもなるが、なほ洩れたるものあり。さるは(あるらし)の(あらし)と約(つづ)まるにたぐひては、形状言の受言なる(か)より良行変格活に活用せる(かる)を(らし)と受けて(かるらし)と成るものもまた約(つづ)まりて(からし)となる事を心得置くべし。かくておもふに、此の良行変格活より受けてはいつも(らし)と約まるものと見えて、(ずある)の(ざる)となりたるをうけて(ざるらし)と言ふべきを(ざらし)といへるあり。又、形状言なる第二続体活の(けれ)はその受言の(か)より良行変格活へはたらける(かれ)の転化したるものなるはいとしるきを、さるゆゑによりてにか第三将言にて(べかるらし)をば(べからし)とは言ふべきに、是を転じて(べけらし)と言へるもあり。これらにたぐへては、かの作用言の四段活なる(け・せ・て・へ・め・れ)とまた佐行変格活なる(せ)とより良行変格活にはたらけるものも此の例にてあるべく覚ゆ。然れどもさるいひなしの聞きつかぬやうなるは、第三続用活を(らし)と受けていふかたがおだやかなるから、それをつかひて事足ればなるべし【本書下巻69/155「加勢格」参照】。

【補説】
 ここで谷は第三の助体言である整格助言を扱っている。これは今でいう接続助詞と係助詞にあたる。またここでは整格助言を分類・列挙するにとどまり、用例・用法の説明は下巻に譲っている。最後の加勢助言に「らし」を挙げているが、これは今では助動詞に分類されている。
 以下、用語対照表を示す(左 本書独自の用語:右 現在の一般的用語)。
・助体言:助詞
・助言:付属語
・助用言:助動詞
・相動格:累加もしくは順接
・反動格:対立もしくは逆接
・用言:活用(のある)語
・将言:推量(系)の助動詞
・相動将然格:順接仮定条件
・反動将然格:逆接仮定条件
・不言:打消(系)の助動詞
・相動已然格:順接確定条件
・反動已然格:逆接確定条件
・将然:未然
・物名言:名詞
・続体格:連体形終止法
・続体言:動詞連体形からの転成名詞
・指示言:指示語
・希求格:命令法
・続用言:動詞の連用形
・第三続用活:他の語を後に接続させる場合の終止形
・続体活:連体形
・切断活:文が終止する場合の終止形
・希求活:命令形
・去言:過去の助動詞
・竟言:完了の助動詞
・畢言:完了の助動詞
・形状言:形容詞
・第二続体活:已然形

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