〈第二格〉(作用言の続用活、即ち(二)を受く)
去言 二 け 三 き 五 し 六 しか
竟言 一・二 て 三・四 つ 五 つる 六 つれ 七 てよ
畢言 一 な 二 に 三・四 ぬ 五 ぬる 六 ぬれ 七 ね
第二去言〈冠言 け〉一 けら 二・三 けり 四・五 ける 六 けれ
第二竟言〈冠言 た〉一 たら 二・三 たり 四・五 たる 六・七 たれ

 この第二格は〈去言〔キヨゲン〕〉(すぎさりたることば)〈竟言〔キヤウゲン〕〉(すでにはてたることば)〈畢言〔ヒツゲン〕〉(すでにをはりたることば)の三つにて、去言の第二言と竟言の第二言とを合せて五品ある也。これはすべて十四品あるを三組にわけたる中の一組なりと知るべし。さて去言は(け・き・し・しか)と活用するものにて、これは加行と佐行と混合して加行の第四音なる(け)を始めに置き、同行の第二音なる(き)を次におき、佐行の第二音なる(し)をまた次に置き、その(し)に加行の第一音なる(か)を添へたる(しか)を終(をはり)におきたるものとす。さて竟言は作用言の太行下二段活なる(て・つ・つる・つれ・てよ)を其のままに借りたるにて、畢言は作用言の奈行変格活なる(な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね)をそのままに借りたるものとす。又、第二去言は去言のはじめに置きたる(け)を冠言とし、また第二竟言は竟言が太行の活用なるから同行の五十連音にうつし、その第一音なる(た)を取りて冠言とし、いづれも良行変格活にして(けら・けり・ける・けれ)(たら・たり・たる・たれ)となしたるものとす。かくてその断続格は、去言は(け)が(二)(き)が(三)(し)が(五)(しか)が(六)にて、一言が一格づつをもちわけたるものなり。しかしてこれに(一・四・七)の無き事は、これ又其等の入用ならざるものなること、第一格なる将言・第二将言・不言等と同じ理にてあるを知るべし。さて竟言・畢言・第二去言・第二竟言等の断続格は皆他の活言を借りて成れるものにて、いづれも其のもとの定(さだま)りにかはり無きものなれば、更に言ふにも及ばず。即ち書き著はしたる如くなるなりと知るべし。
 かくてこの第二格なるものは皆過去の詞なるが、それに浅深ある事は既にいへれどなほ委しくいへば、去言を大過去とし竟言・畢言を小過去とす。この小過去のうちにてなほわけて言へば、竟言は重くして過去の意やや深く、畢言は軽くして過去の意いと浅きなり。さればこの二言は作用言を受くるに差別ありて、竟言は他動言をうけ畢言は自動言を受くるが先づの定まりなり。然れども必らず然(し)かせねばならぬといふ厳なる定まりにはあらで、そのうけざまを違へていふ事もあるもの也としるべし。
 又この竟言・畢言の事につきて心得置くべきは、先づ作用言の処に「本言はその語意をもち、活言はその断続格を持つものなり」と言ひ置きしが【本書73/133「作用言」参照】、爰(ここ)の助言どもは本言無く活言のみなるものなれば、即ち活言が断続格を持ちたる上に語意をも合せてもつものなる事、作用言なる虚辞本言にて活用する語の如し。されば爰の竟言・畢言もその活言が皆過去の意をもちたるなり。然るにはじめに作用言の時といふ事をことわりて「その切断活と続体活とは現在時をもち、続用活は時を持たずして、そのつづきたる処の用言がもちたる時に随ふものとす」と言ひ置きたり【本書106/133「作用言三時」参照】。今これを転用していはんに、ここの竟言・畢言は過去が語意にてあるから、その切断活・続体活はひるがへりて過去となるなり。さるは作用言ならば切断活・続体活はその作用にあたる語意の現在時なるべきを、これは語意が過去なるゆゑ、言はば過去の現在時ともいふべきものにて、過去にしてそれがまのあたりに(即ち現在の意にあたる)あらはれたるは、とりもなほさず過去なれば也と知るべし。
 さて然(し)かあるにつきてその続用活の方はかへりて過去の意を持たぬものとなるなり。さるは作用言にていへば、もたねばならぬ現在時を続用活にてはそれを持たずして、つづく処のものに随ふと同じ理なる也。されば竟・畢二言の(一)即ち(て)(な)より将言・第二将言へつづき(四)即ち(つ)(ぬ)より第三将言・第四将言へつづきて(てん)(てまし)また(なん)(なまし)と言ひ、(つべし)(つめり)又(ぬべし)(ぬめり)といへば、その受(うけ)たる(ん)(まし)(べし)(めり)等のもちまへなる将来の意にはなれども、それにつづきたる(て)(な)(つ)(ぬ)等のもちまへなる過去の意の無きは、其続けるものに語意をゆづりて随ひたるなりと知るべし。ただし此等の過去辞どもがそのつづきたる将来辞に語意を譲りて随へりとはするものの、なほ幾分か過去の意のこもりて有る故に、その将来の意も常のもの、即ちこれらの過去辞なくして将来辞をつかひたるものとはおのづから異なる処はあるなりと知るべし。
 さて此第二格は作用言の常の続用活を受くる助用言どもなり。もし助用言の十四品が皆此の格にをさまるものならば、作用言の続用活に第二活・第三活などと名づくるわづらはしきものは無くてよき事なるを、さてはそのつづきたる称(とな)へに甚だ不雅なるものある故、やむを得ずそれ等をこの第二格にわけて第一格・第三格とし、然(し)かあるに【「に」は原文にはなく脱字として補う】つきては、作用言の続用活も常のとわけて第二活・第三活といふものを設けざるを得ざる事に成りたる也としるべし。

【補説】
 ここで谷は続用活(今でいう連用形)に接続する「き・けり・ぬ・つ・たり」を扱っている。去言(今でいう過去の助動詞)を大過去、竟言・畢言(ともに今でいう完了の助動詞)を小過去とし、竟言「つ」は畢言「ぬ・たり」よりやや過去の意味合いが「やや深い」としている。また竟言は他動詞、畢言は自動詞につくが、絶対ではなく例外も多いとしている。さらに「作用言三時」との関連を詳説し、去言・竟言・畢言の切断活(今でいう終止形)・続体活(今でいう連体形)は過去の意になり、続用活は過去の意味を失ってそれぞれ続く助動詞の時制に従うとしている。但し「なほ幾分か過去の意のこもりて有る」と、説明に曖昧さを残している。なお、去言〈き〉の〈二〉すなわち連用形「け」に関しては、将言〈む〉第二将言〈まし〉の二語にだけ続くので、〈一〉すなわち未然形と見た方がいい旨、第三格【本書116/133参照】において説明している。これは実質的に過去推量の助動詞「けむ」を「去言〈き〉+将言〈む〉」として説明したものである。
 以下、用語対照表を示す(左 本書独自の用語:右 現在の一般的用語)。
・作用言:動詞
・続用活:連用形
・去言:過去の助動詞
・竟言:完了の助動詞
・畢言:完了の助動詞
・断続格:活用
・五十連音:五十音
・将言:推量(系)の助動詞
・不言:打消(系)の助動詞
・活言:活用語尾
・虚辞本言:活用語尾との区別のない語幹
・切断活:終止形
・続体活:連体形
・常の続用活:連用形を指す
・続用第二活:未然形
・第三続用活:他の語を後に接続させる場合の終止形

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