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〈続体格〔ゾクタイカク〕〉変化第五格(すわりなへつづくさだまり)

 此の格は、整言の作用言は既に示し置ける如く常に活言の断続格中なる切断活、即ち(三)にていひ終るべきものなるを、これも断続格中なる〈続体活〉(すわりなへつづくはたらき)、即ち(五)に換へて成るものとす。さて、しかなしたるものは、其の整言がひとつの体言に成りたるものと心得て宜しきなり。但し活言中の続用活も又、用体言としてひとつの体言に成るよしを示し置きつるが、それとこれとが紛らはしきやうにも思ふめれど、用体言は作用言がそのまま体言になる例にて、爰(ここ)のは整言に成りたる上にて体言に成るにて、おのづから差別ある事なるを知るべし。されば此の格にて整言が体言と同じものになりたるから、本書【『言語構造式』23/41参照】に他被動格にて語例を出したる〈舟〔ふね〕の{主格}水〔みづ〕に{与格}流〔なが〕さるる〈五〉〉といふは、即ち体言と同じ扱ひにするものとなりたるなり。
 かくて爰(ここ)にことわるべきは、その主格を〈舟〔ふね〕の〉となしたるを必らず人怪しむなるべし。然り、こは是れ此の格の一要務にして、〈舟〔ふね〕が〉といはねばならぬ〈が〉を〈の〉となしたるは、主格助言の処に挙げ置きたる第二助言なるなり。これは其の処に『かくて整言を続体格といふしかたにする事あり。さる時は此の主格の助言なる(が)をもとのままには置かれぬわけありて、これにかはるものが即ち第二助言の(の)なるなり』【本書上巻57/133「主格助言」参照】といひ置きたるにてほぼ悟るべく、此の主格第二助言なる〈の〉を委しく解けば、連合助言なる〈の〉より成れるものにて、其の実は連合助言・主格第二助言とて〈の〉が二つあるには非ざるなり。然れども世にいひ習ひて覚え易ければ、いはゆる〈が〉に通ふ〈の〉といへるものをば主格の第二助言とは号(なづ)け置きたるなりと知るべし。さて爰(ここ)の格にてたとへば〈水〔みづ〕が流〔なが〕る〈三〉〉といふ整言を〈水〔みづ〕の流〔なが〕るる〈五〉〉と言ひ換ふるは、〈流〔なが〕る〈三〉〉は作用言なれば、さいへば常の整言にて仔細も無きを、〈流〔なが〕るる〈五〉〉といひかふればひとつの体言になるゆゑ、もとのままに整言にしては置かれず、依りてはじめ〈水〔みづ〕が〉といひたる主格の物名言なる〈水〔みづ〕〉と、今体言に成りたる〈流〔なが〕るる〉とを連合の第四言にして、〈水〔みづ〕の流〔なが〕るる〉とはなしたるなり。かかればこの続体格になしたるものはすべて、もとの整言にはあらで、体言の連合したるものと成れるなりと知るべし。かくの如きものなれば、此の格をつかひて言ひとぢめたる歌どもは皆、体言にていひとぢめたるものと同じやうに、其の下に或る語を補ひて聞かねばならぬ事なるにても、この続体格は全く体言の連合言と見なして宜しき事を知るべきなり。然るにこれがかかるなりたちなる事を知らずして、此の〈の〉を係辞とし、体言になれる続体活を結辞となして、いはゆる(かかりむすび)といふ格の内に算(かぞ)へたるなどは、語格の真理をかたるの談にはあらざる也。因(ちなみ)にいふ、此外なる係辞・結辞といふものもすべて、さはあらぬ事なるよしは、助言転置格の処に言ふを見て知るべし。
 かくて又ひとつ心得置くべきは、然(し)か主格助言の〈が〉を〈の〉に換へずして、たとへば〈水〔みづ〕が流〔なが〕るる〈五〉〉とやうに、整言のままにてその作用言を続体活にする事もあり。これは略法にて正格には非ざれども、なほ体言になりたるは同じ事にて、其のつかひかたも又同じ事なりと知るべし。
 さて此の格は然(し)か体言になりたるものとして、其のつかひかたはいかにと言ふに、体言に成りたるからは常の体言と同じ事にて、なほ或る体言へつづけて連合言になすと、備格助言どもにて受けて備言になすとの二つあるなり。然るにある体言へつづけて連合言となすにつきて、其の或る体言とさすものは其の整言中の或る備言を略(はぶ)き、もとその備言にてありし時の体言なるなり。即ち本書には〈舟〔ふね〕が{主格}水〔みづ〕に{与格}流〔なが〕さる〈三〉〉といふ整言の主格なる〈舟〔ふね〕が〉を略(はぶ)き、その体言なる〈舟〔ふね〕〉へつづけて〈水〔みづ〕に{与格}【原書は「主格」。誤記として訂正】流〔なが〕さるる〈五〉舟〔ふね〕〉といひ、又は与格なる〈水〔みづ〕に〉を略(はぶ)き、その体言なる〈水〔みづ〕〉へつづけて〈舟〔ふね〕の{主格}流〔なが〕さるる〈五〉水〔みづ〕〉といふを挙げたり。但し此のかたは既にいへる略法にて〈舟〔ふね〕が{主格}流〔なが〕さるる〈五〉水〔みづ〕〉ともいはるる事なるを知るべし。
 さて此のつづけかたにてその整言中の備言にはあらぬものへ続けたりと見ゆるもあれど、それもなほ間格言になるべき体言へつづけたるにて、たとへば〈舟〔ふね〕の流〔なが〕るる〈五〉川〔かは〕〉といふは、〈舟〔ふね〕が流〔なが〕る〈三〉〉といふ整言を突然に〈川〔かは〕〉といふ体言へつづけたるにはあらで、その実は〈舟〔ふね〕が川〔かは〕に流〔なが〕る〉といふ間言格のあるよりして、その間格言を略(はぶ)きたる体言へつづけたるにて、かかるは皆、さる間言格をつくりて後にそれを略(はぶ)きてするまでに注意せずとも、詞のより来るままに続体格をつくれば、そのつづけたる体言はおのづから間格言になるべきものなるなりと知るべし。
 さて已上の如く整言の作用言を続体活にしたるものと、それを又或る体言へつづけたるものとは連合言にして、体言なる事もとよりなれば、それらを又、備言になして、再び整言をつくりて用をなさしむべし。よりて本書【『言語構造式』23/41参照】には、右等を挙げたるものより系を引きて『是れを備格助言に受けて更に備言と為(す)べし』といひ置きたるなり。此事を示すには、前條なる間格第七言をはさめる語を以てすべし。さるは爰(ここ)に〈人〔ひと〕が舟〔ふね〕に乗〔の〕れり〈三〉〉といひ、〈岸〔きし〕が移〔うつ〕る〉といふ整言あり。然るをはじめのは、〈人〔ひと〕が〉といへる主格言を略(はぶ)き、その体言を下へまはして爰(ここ)の格にすれば〈舟〔ふね〕に乗〔の〕れる人〔ひと〕〉となり、次のはそのまま爰(ここ)の格にすれば〈岸〔きし〕の移〔うつ〕る〈五〉〉となる。さてかくなしたるものは体言なるゆゑ、はじめのは主格助言の〈が〉にて受けて主格となし、次のは奪格助言の〈を〉にて受けて奪格となし、〈見〔み〕て知〔し〕る〈三〉〉といふ作用言にて受くれば、〈舟〔ふね〕に乗〔の〕れる人〔ひと〕が岸〔きし〕の移〔うつ〕るを見〔み〕て知〔し〕る〈三〉〉といふ整言となる。然れども此の整言たるや、はじめより〈見〔み〕て〉といへるまでは詞ととのひて聞こゆれども、〈知〔し〕る〉といふに至りては其の意聞(きこ)えず。依(より)てその知る事は間格言なる〈舟〔ふね〕が流〔なが〕る/るると〉といふ事なれば、それを〈見〔み〕る〉と〈知〔し〕る〉との間へさしはさむなり。然るに、しかなす時は主格言と間格言とに〈舟〔ふね〕〉といふこと二つ重なる故に、主格言のかたはそれを略(はぶ)きて、〈乗〔の〕れる人〔ひと〕が岸〔きし〕の移〔うつ〕るを見〔み〕て舟〔ふね〕が流〔なが〕る/るると知〔し〕る〈三〉〉といふ整言にはなれるなりけり。上にいへる〈見〔み〕て知〔し〕る〉とやうに作用言をつづくるさだまりは、続用格の処にいへるを見て知るべし。
 さて爰(ここ)の続体格につづけては、本書の順序の如く続用格に説き至るべき事なるを、その前に整言重畳格の事を言ひ置かねばならぬわけある故に、次條には其の格をさしはさみて挙ぐべし。

【補説】
 ここで谷は「続体格」を説明している。谷は「続体格」は体言であるとしている。そして用体言(動詞連用形からの転成名詞)が作用言(動詞)つまり単語レベルそのままの体言化であるのに対し、続体格による体言化は整言(主述を備えた文)レベルの体言化であると区別している。また続体格では主格助言として「の」が使われるが、これは実は連合助言として使われているとし、従来の「の―連体形」を係り結びとして説明する説を退けている。
 以下、用語対照表を示す(左 本書独自の用語:右 現在の一般的用語)。
・作用言:動詞
・活言:活用語尾
・断続格:活用
・切断活:終止形
・続体活:連体形
・体言:活用のない語
・用体言:動詞連用形からの転成名詞
・助言:付属語
・物名言:名詞

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