【翻字】
序
戯言細語第一義に帰す況や歌に於てをや古の哥の 道をもて日の本の宝とす何故たからなるやまことの道 なるがゆへ也元より森羅万象まことにあらずといふもの なければ皆うたにもるゝものなしされば倭うたは人 のこゝろをたねとしてと申侍り花に啼鶯水に すむ蛙はさら也松吹風谷ゆく水の音までもこれ 誠の響にして則哥也其こゝろまことある時は神と云 仏と云もまた外ならめや此ゆへに代々の祖師もうたは 道心のしるべともなるよしを称し修行のいとま是を 詠じ給ふ人すくなからず此頃松月菴のあるじを訪 ひて机上の反故をさぐるに吾宗代々の高僧のよみ 給ひし哥をそこはかとなくしるしおける冊子あり
【校訂本文】戯言細語第一義に帰す況や歌に於てをや古の哥の 道をもて日の本の宝とす何故たからなるやまことの道 なるがゆへ也元より森羅万象まことにあらずといふもの なければ皆うたにもるゝものなしされば倭うたは人 のこゝろをたねとしてと申侍り花に啼鶯水に すむ蛙はさら也松吹風谷ゆく水の音までもこれ 誠の響にして則哥也其こゝろまことある時は神と云 仏と云もまた外ならめや此ゆへに代々の祖師もうたは 道心のしるべともなるよしを称し修行のいとま是を 詠じ給ふ人すくなからず此頃松月菴のあるじを訪 ひて机上の反故をさぐるに吾宗代々の高僧のよみ 給ひし哥をそこはかとなくしるしおける冊子あり
序
戯言細語(ぎげんさいご)、第一義に帰す。況(いわん)や歌においてをや。古(いにしえ)の歌の道をもて、日本(ひのもと)の宝とす。何故(なにゆえ)宝なるや。真(まこと)の道なるが故なり。元より森羅万象、真にあらずといふものなければ、皆歌に漏るるものなし。されば、和歌(やまとうた)は『人の心をたねとして』と申し侍り。花に啼く鶯・水にすむ蛙はさらなり。松吹く風・谷行く水の音までも、これ誠の響きにして、則ち歌なり。その心、真ある時は、神と言い、仏と言うも、また外ならめや。この故に、代々の祖師も、歌は道心の標ともなる由を称し、修行の暇、これを詠じ給ふ人少なからず。
この頃、松月菴の主を訪(おとな)ひて、机上の反故を探るに、吾宗代々の高僧の詠み給ひし歌を、そこはかとなく記し置ける冊子あり。
戯言細語(ぎげんさいご)、第一義に帰す。況(いわん)や歌においてをや。古(いにしえ)の歌の道をもて、日本(ひのもと)の宝とす。何故(なにゆえ)宝なるや。真(まこと)の道なるが故なり。元より森羅万象、真にあらずといふものなければ、皆歌に漏るるものなし。されば、和歌(やまとうた)は『人の心をたねとして』と申し侍り。花に啼く鶯・水にすむ蛙はさらなり。松吹く風・谷行く水の音までも、これ誠の響きにして、則ち歌なり。その心、真ある時は、神と言い、仏と言うも、また外ならめや。この故に、代々の祖師も、歌は道心の標ともなる由を称し、修行の暇、これを詠じ給ふ人少なからず。
この頃、松月菴の主を訪(おとな)ひて、机上の反故を探るに、吾宗代々の高僧の詠み給ひし歌を、そこはかとなく記し置ける冊子あり。
【語釈】
戯言:ざれ言 ・ たわむれに言う言葉。ふざけたこと。
細:くだくだしい
第一義:最も大切な根本的な意義または価値。究極の真理。
されば…申侍り:紀貫之「古今和歌集仮名序」を指し、同書の引用は「…蛙はさら也」まで続く
さらなり:言うまでもない。もちろんだ。
祖師:仏教で、一つの宗派を開いた人
道心:仏道を修めて悟りを得ようとする心
称し:称賛し
松月菴:不詳。臨済宗大徳寺に松月軒という塔頭があり、あるいはそれか。
吾宗:ここでは禅宗を指す
反故:書画などをかいて不用となった紙。書き損じの紙。
細:くだくだしい
第一義:最も大切な根本的な意義または価値。究極の真理。
されば…申侍り:紀貫之「古今和歌集仮名序」を指し、同書の引用は「…蛙はさら也」まで続く
さらなり:言うまでもない。もちろんだ。
祖師:仏教で、一つの宗派を開いた人
道心:仏道を修めて悟りを得ようとする心
称し:称賛し
松月菴:不詳。臨済宗大徳寺に松月軒という塔頭があり、あるいはそれか。
吾宗:ここでは禅宗を指す
反故:書画などをかいて不用となった紙。書き損じの紙。

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