江戸期版本を読む

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カテゴリ:上方落語速記本・原典 > 胴乱の幸助(笑福亭福松口演)

【翻字】
喜八「その最初はナ、人間ちウものは上見たら際限(はうづ)がない
と云ツて……
老爺「夫(そ)りや何(な)んぢやい一体、汝等(わいら)吐(ぬか)す言(こと)は分からん、マ
アマア可(よ)いわい、乃公(おれ)が這入ツたら悪うはせぬマア出て来い
喜八「ヘエ大きに御馳走さんでござります
老爺「ハゝゝゑらい汝(われ)ア気が早いナ、何も馳走するとも何(な)
んとも云うてりやせぬが
喜八「ハア老爺(おやぢ)さんスキ(○○)焼は最(も)ういけませんぜ
老爺「放棄(ほツ)とけイそんな事は
喜八「鯛の刺身(つくり)で淡泊(あツさ)りと
老爺「そりやア何吐(なんか)すのぢや、マア来い
老爺(おやぢ)さん先に立ツて直(じ)き片傍(かたへ)の料理屋へ伴(つ)れて参りまし


老爺「姐(あね)はん御免なされや
主婦「ハイ親方お出でやす
老爺「また若い奴等喧嘩さらしてナ、一寸(ちよツ)と物を言うて遣
りました、何でも介意(だん)ない一杯(ぺい)拵へて遣ツてお呉れ
主婦「ハイ親方毎度有難う、万留(どうぞ)二階へお昇(あが)りやす
老爺「ハイ御免なされ……サア昇(あが)れ両人(ふたり)とも
喜八「イヨー、ハゝゝゝ何(ど)うも……
源兵「笑ふなへゲラゲラと
喜八「源兵衛さんゑらい上首尾(すツくり)と行ツたナ
源兵「そんな事を云ふなへ
両人(ふたり)は伴立(つらツ)て二階へ昇(あが)り座に着きますと、一寸(ちよい)と三ツ鉢
に即席(はやまく)に拵へて持ツて参りました

【語釈】
・伴立(つらツ)て…ルビ不鮮明。

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【解説】
 胴乱の幸助が喧嘩していた二人を連れて料理屋に入り、二階に上るくだりです。
 このくだりも、本書古形版と故・桂米朝等による現行版との間に大きな差異はありません。

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【翻字】
老爺「サア仲直りの作法の盃もあるけれども、汝等(きさまら)ア友達
同士でそんな六ケ敷(し)い事は要らんワ、源兵衛汝(きさま)ア年(と)
齢(し)が長(い)ツてるナ、一杯飲んで若い方ゑ献(や)れエ
源兵「大きに何時(いつ)とても御厄介に成りまして、御馳走様で
ござります……アー美(い)い酒だ、デ、この盃如何(どう)致しま
せう
老爺「若い奴に遣れ
源兵「マア喜八、老爺(おやぢ)さん彼様(あない)に云うて呉れてやよてに、
今迄通りに仲好うするワ、コレゲラゲラ笑ひないナ
盃取ツて老爺(おやぢ)さんに礼云はんかへ
喜八「ヤ大きに御馳走さんでござります、沢山(たんと)注(つ)いで呉れ
其(その)肴ものけといてや、帰(いに)しなに乃公(おれ)持ツて行(ゆ)くよツ

源兵「そんな事を云ひないナ
喜八「云はしてんかいナ、瘡(くさ)から血が出て居るがナ
源兵「アゝ彼(あ)ればツかり云ツてけつかる
老爺「マアマア緩(ゆツ)くり飲め、これで仲直りも出来て乃公(おれ)の
顔も立ツたわイ、可(よ)い加減に飲んで置けよ、又(ま)た酒
の上で喧嘩さらすと面倒多いぜ、併(しか)し姐(あね)はん今日の
書附(つけ)は明日私(わし)宅(とこ)へ持ツて来てお呉れ
主婦「大きに親方毎度有難う
老爺「酒エ飲んでる処に老爺(おやぢ)が居たら蒼蠅(うるさ)からう、乃公(おれ)最(も)
う帰(い)ぬぞ、マア仲好う飲め
喜八「大きに御馳走さんです、然し老爺(おやぢ)さん明日今時分に
貴郎(あんた)何所(どこ)に居なさる

老爺「そんな事を尋ねいでも可(い)いわナ
喜八「だツて尋ねて置かにやア、酒飲みたう成ツたら又(ま)た
打擲(どづき)合ひ為(せ)にやならんワ
源兵「そんな事を云ふなへ、大きに御馳走さんで
老爺「ヤア緩(ゆツ)くり飲め、大きにお邪魔さん
ブーイと老爺(おやぢ)は出て行(ゆ)きました、

【語釈】

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【解説】
 胴乱の幸助が料理屋の二階で二人を仲直りさせるくだりです。
 このくだりは、本書古形版は、故・桂米朝等による現行版よりはよほどあっさりとしています。胴乱の幸助が二人に喧嘩のいきさつを聞くくだりは本書古形版には全くありません。本書古形版では、路上で喧嘩を止める場面ですでに喧嘩のいきさつを聞いていることもありますが、本書古形版における胴乱の幸助は、喧嘩の仲裁をすることだけで満足しているようです。喧嘩のいきさつを聞き、二人を説教する現行版の幸助とは、かなり違った人物像として描かれています。

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【翻字】
此処で薪屋(わりきや)の老爺(おやぢ)は余
程慢気が萌(さ)して参り
老爺「ナア乃公(おれ)は格外(よつぽど)好(い)い顔役になツてるわイ、町内の血
気熾(ざか)りの若(わけ)い奴が大道(だいどう)の中央(まんなか)で掴み合ひの喧嘩して
るのに、乃公(おれ)が顔を出したら苦情言はず彼(あ)ア遣ツて
仲好うして呉れるわイ、ムーこりやア乃公(おれ)は格外(よツぽど)
好(い)い顔やわイ、最(も)う些(すこ)し位(ぐら)ゐの喧嘩の挨拶は面白う
ない、一番斫(き)ツたはつ(○○)ツたツてエナ非常(どゑら)い喧嘩の挨

拶がして見たいものだ
老爺(おやぢ)化体(けたい)な気に成ツて是(こ)れより日々に喧嘩を探して歩
いて居(ゐ)をる、迂路(うろ)々々しながら、辻に大勢人が集(たか)ツてる
ゑらいワ喧嘩か知らん、と思ツて老爺(おやぢ)側(がわ)へ行きをると、
案外相違、犬の交尾(さか)ツてるのを仰山な見物です
老爺「ハゝア大坂ツて所は物見高い所だ、犬の交尾(さか)ツてる
のを感心して見て居る、ヤイそんな物を見る手間で
喧嘩せい
甲「オイ皆(みん)な此方(こツち)へ寄ツて居イ、彼(あ)の老爺(おやぢ)さん喧嘩せへ
て云ツてるぜ、何ぢやいナ
老爺「一ツ擲(どづ)き合ひせい
甲「何ぢやいナ彼(あ)の老爺(おやぢ)さん
ト皆々胆(きも)を潰して居る、老爺(おやぢ)は平気で尚(なほ)も迂路(うろ)々々探し

歩いて居ります

【語釈】

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【解説】
 喧嘩を仲裁した幸助が料理屋を後にして町内をうろつき喧嘩を探して歩くくだりです。
 このくだりは、故・桂米朝等による現行版と本書古形版の間にはかなりの相違がみられます。現行版では町内の若い者が幸助に「喧嘩を探して歩いているのか」等と冷やかし、幸助は即座に否定しています。一方、本書古形版の方は、犬の交尾に人だかりができているのを見た幸助が、喧嘩を期待し、けしかける言葉を独り言のように言って、それを聞いた町内の者が逆に驚いています。現行版の幸助が自分の趣味を表向きに認めていないのに対し、本書古形版の幸助はそのことに十分自覚的で、人に隠そうともしていません。


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【翻字】
スルと此処(こゝ)に二間半間口位(ぐら)ゐな意気イ
な構造(つくり)の一(ひ)ト構へ、浄瑠璃のお師匠さんの宅(うち)と見えまし
て、連中が二三人寄ツて稽古して居ります
師匠「花木(くわぼく)さん、喜清(きせい)さん、凹凸(だくぼく)さん
恰(まる)でお医者さんの百味箪笥見た様(やう)な名です
師匠「一ツ温習(さら)ひませうか
花木「ヘエ長い事休んで居ましたので、それに風邪を感冒(ひい)
て些(すこ)し音声(おんせい)を痛めて居ります、温習(さら)はして貰ひませ

師匠「貴郎(あんた)何でしたいナ
花木「エー私はお半長です
師匠「アー帯屋の宅(うち)ですか、左様なら此処(こゝ)に本がごわす
花木「ヘエ大きに

師匠「糸かけませうか
花木「イエ声傷めて居ります、節調(はくじやう)だけ
師匠「サア語(や)ツてお見や
花木「誰様(どなた)も御連中お先へ、エヘンエヘン、カツプ(痰を吐く音)
師匠「モシ庭へ津液(つば)を吐いたら不可(いけ)ませんぜ
花木「ヘエ、イエ痰でやす
師匠「ぢやア尚(なほ)穢い、サア語(や)りませう
花木「柳のばゞおし返(こ)めた……
師匠「そりやア何言うてなさる、柳のばゞ押込(おしこ)めた、そん
な浄瑠璃がごわすかいナ、柳の馬場(ばんば)押小路(おしこうぢ)です
花木「アー然(さ)うや然(さ)うや、蔑視(あなずツ)て居(を)りますのやよツてに
師匠「蔑視(あなずツ)て居(ゐ)るちうたかて、柳のばゞ押込(おしこ)めてなんてナ
其様(そん)な無茶云ひなさんナ、本見てゝスカタン(○○○○)云うて

居なさる
花木「ヤア宜しうおます、柳の馬場(ばゞ)押小路(おしこうぢ)、軒を列(なら)べし呉
服店、現金商内(げんぎんあきなひ)かけ硯、フワイ虎石イ町(ちやう)のウ西側で
イ、主人(あるじ)はウ帯屋のウ長右衛門……
師匠「一寸(ちよツ)と待ちなされ、恰(まる)で覗目鏡屋(からくりや)ぢや、最少(もツと)判然(きツぱり)妙(じやう)
手(ず)にやりなされ
花木「井筒に帯の暖簾(のうれん)にも懸直(かけね)助才(じよさい)も内儀のお絹、気の取
り苦(ぐる)しい姑に目を貰はじと手襷(たすき)がけ、洗濯物の敷(しき)の
しを……
師匠「恰(まる)で聾声(つんぼごゑ)やがナ
花木「そないゴテゴテ云うてお呉れなさるナ……皺はよツ
ても岩畳(がんでふ)造り、母のおとせは勝手を出(い)で、朝飯(あさめし)の…

師匠「一寸(ちよツ)と待ちなされ、恰(まる)で力士(すまふとり)見たやうなが
花木「けどお師匠さん、此婆(このばゞ)悪い奴ですよツてに
師匠「悪い奴ツて恰(まる)で豕(ぶた)やが、最少(もツと)婆(ばゞ)らしうやツて見なさ
れ、それでは情が乗りませぬが
花木「ハゝア成程婆(ばゞ)らしうやりますので、母のおとせは勝
手を出(い)で
師匠「巧(うま)い巧(うま)い
花木「朝飯(あさめし)の箸下に置くと駈け出した長右衛門、ブサーゾ
ルブサーゾルブサーゾル……
師匠「そりや何ぢやへ
花木「此処(こツち)ア腹ですが、年寄と云ふものは尻に締(しま)りのない
もので
師匠「そんなチヤラチヤラした、浄瑠璃に屁を放(こ)いたらどう

もならん、貴郎等(あんたら)悪戯(てんごう)半分で稽古しなさるよツてに
不可(いけ)ません、もツと奥へ飛びなされ、親ぢやわやい
と云ふいまじめの所(とこ)、確(しツ)かり遣ツて見て置きなされ
花木「ヘエヘエ……親ぢやわやい
師匠「巧(うま)い巧(うま)い
花木「エーツ胴慾ぢやわいなア、エーツ親ぢやわやい、胴
慾ぢやわいなア……
宅裡(うちら)は一生懸命に稽古をして居ります、スルと格子の間
の外で七八人佇(たツ)て聴いて居なさる

【語釈】
・百味箪笥…漢方医が薬を入れておく、小引き出しの数多くあるたんす。
・凹凸(だくぼく)さん…ルビ不鮮明。
・お半長…『桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)』。38歳の帯屋長右衛門と14歳の信濃屋お半の恋と心中を描いた浄瑠璃。
・ヘエ大きに…「エ」の字は全く文字になっていない。イメージ 1
・糸かけませうか…「(伴奏の)三味線を弾きましょうか」の意か。
・節調(はくじやう)…「肉声による節(ふし)と調子」の意か。
・蔑視(あなずツ)て…ルビ不鮮明(特に「ず」)。
・覗目鏡屋(からくりや)…のぞき穴のある箱の中にストーリー仕立てにした絵が何枚も仕掛けられていて、説明する人の口上に合わせて、その絵が入れ替わって行く見世物屋。
・懸直(かけね)…物を売るときに実際より値段を高くつけること。
・助才(じよさい)…十分な配慮をせず、手抜かりがあること。疎略。
・内儀…他人の妻の敬称。
・目…(「お目玉」「大目玉」の形で)目上の人からしかられること。
・敷(しき)のし…湿りを与えて畳み、おもしをしてしわを伸ばすこと。
・聾声(つんぼごゑ)…漢字不鮮明。
・力士(すまふとり)…ルビ不鮮明。
・此処(こツち)…ルビ不鮮明。
・締(しま)り…漢字不鮮明。
・悪戯(てんごう)…ルビ漢字ともに不鮮明。
・胴慾…思いやりがなく、むごいこと。非道。
・格子の間…漢字不鮮明(特に「間」)。

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【解説】
 少し長くなりましたが、浄瑠璃の稽古屋のくだりです。
 このくだりは故・桂米朝等による現行版と本書古形版の間に大きな差異が見られます。最大の差異は、本書古形版の描写が写実的で稽古客の言動が自然であるのに対し、現行版は説明的・作為的である点です。これは落語を聞く客の浄瑠璃に対する親しみや知識の差による噺家の演出の違いによるように思われます。本書古形版の出版された当時、浄瑠璃は盛況で寄席の客は「帯屋」もよく知っていたと思われます。それに対して現在の寄席の客は一般に浄瑠璃になじみが薄く、「帯屋」についても全く知らない人が大半と思われます。そこで、稽古の情景描写も自ずと演出に相違が生まれたのでしょう。
 ただ、共通する点ももちろんあって、「嫁いじめ」のくだりが胴乱の幸助の耳に入る展開は同じです。

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【翻字】
 甲「可(い)い浄瑠璃でかすナ、モシこの帯屋は大体が婆(ばゞ)が悪
い奴です、それゆゑ養子息子も嫁も大低(たいてい)ぢやア
おまへんわい
 乙「左様左様、帯屋の婆(ばゞ)か八百屋の婆(ばゞ)かと云ふ位(くら)ゐです、

元来(もともと)婆(ばゞ)が悪いのです
ト口々に話しをして婆(ばゞ)が悪い婆(ばゞ)が悪いと云うて居(ゐ)る、宅裡(うちら)で
は、親ぢやわやい、エーエ胴慾ぢやわいなア、と語(や)ツて
居(ゐ)る、其処(そこ)へ丁度通り掛(かゝ)ツたのは例の薪屋(わりきや)の老爺(おやぢ)です
老爺「オイ何ぢやへ、ハゝア親子喧嘩やナ、ドレ挨拶して
遣らう
ト勢ひ籠(こ)んで老爺(おやぢ)め其儘(そのまゝ)座敷へ飛んで上がりました
老爺「一体ワイワイと如何(どう)したんぢやへ、山家(やまが)の一軒家ぢ
やあるまいし、近所隣家(となり)のあるのにワイワイと、今
も聴いて居りやア婆(ばゞ)が悪い婆(ばゞ)が悪いと云ふてたが、何(ど)の
途(みち)老人(としより)ちうものは愚痴な事を云ふものぢや、それを
又若い者が寄ツて好都合(あんばい)して遣らにやア不可(いか)んぢや
ないか、が、乃公(おれ)が来たからには悪うはせん、サア婆(ばゞ)さ

んに面会(あは)う
師匠「ヘエー……連中さん迯(に)げいでも宜しい、狂人(きちがい)かも知
れん、モシ介意(だいじ)おまへんけれど、宅(うち)の内(なか)へ下駄穿(ば)き
で上(あが)ツて貰うてはどうもなりません、其辺(そこら)土だらけ
です、別に私共等(わたしどもら)喧嘩も何も為(し)て居りやアしません
老爺「何云ふね、乃公(おら)ア今聴いてた、親ぢやわやい、胴慾
ぢやわいなアちうて泣いて居た、姉はん何所(どこ)に居る

師匠「ウダウダ云ひなさんナ、これは貴郎(あんた)喧嘩でも何でも
ありやア為(し)ません、これはお半長ですね
老爺「お半長ツて何ぢやへ
師匠「アー化体(けツたい)な人やなア、いゝ(○○)年輩(とし)して居てお半長右衛
門分かりませんか、こりやア別に私宅(わたしとこ)の事ぢやアお

まへんね、京都は柳の馬場(ばゞ)押小路(おしこうぢ)、虎石町(ちやう)の西側で
主人(あるじ)は帯屋長右衛門、その帯屋の悶着(もめ)た話しをして
居ますね
老爺「アゝ左様か内方(うちかた)ぢやアないのか
師匠「ヘエ私宅(わたしとこ)ぢやアおまへんね

【語釈】
・可(い)い浄瑠璃でかすナ…「か」はあるいは「が」か。
・八百屋の婆(ばゞ)…不詳。『心中二ツ腹帯』の八百屋の後妻くまを指すか。
・連中…音曲などの一座の人々。

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【解説】
 浄瑠璃の稽古屋を通りかかった胴乱の幸助が、浄瑠璃の稽古を喧嘩と勘違いして稽古屋に乗り込み、師匠からなだめられるくだりです。
 このくだりは、本書古形版と故・桂米朝等による現行版との間に大きな差異があります。現行版では、胴乱の幸助はふつうに挨拶して稽古屋に入り、師匠は徐々に幸助の勘違いとその特異な人柄に気付いていきます。一方、本書古形版の幸助は、挨拶も何もなしにいきなり稽古屋に怒鳴り込みます。驚いた稽古客は逃げ惑い、師匠は最初から幸助を変人と認識して応対します。また、もめ事がこの家のことでないと知った時の幸助の反応も全く違います。現行版では、幸助は「京都のもめ事をここで再現しているとは何という暇人の集まりか」と呆れます。一方、本書古形版では、幸助は稽古客あるいは彼らがしていたこと自体には全く興味を示さず、ただ拍子抜けしているだけです。


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