『滑稽大和めぐり』は明治31年刊の活字本です。崩し字で書かれた江戸期版本ではありませんが、WEB公開されている画像が非常に読み難く、普通に閲覧するのでは到底読み通せないため、今回このブログの対象として取り上げ、読みやすい活字にしてみました。
本書は落語の速記本です。演者は二世曽呂利新左衛門、初代笑福亭松鶴門下で、明治期に活躍しました。筆記者は丸山平次郎とあります。演者の発音は主にルビで表記し、その意味を表す漢字を適宜宛てて、上方方言なども読者に理解できるように工夫されています。
WEBで閲覧できる画像は、文字、特に小さなルビがつぶれたりかすれたりしている個所が多く、きわめて読み難い状態です。翻読に当たっては、確かに読めない箇所も、同じ語の他の箇所と照らし合わせたり、意味・文脈から確からしいと推測できるものは推測して翻読し、注記にその旨を記しました。推測すら不可能なものは「?」としました。
第一回は、現在「宿屋仇」と言われる演目と同じ内容です。きわめて古い形のもので、登場人物の名や人数、舞台となる地名も今とは異なっています。しかし、噺の眼目は同じで、大阪の町人が旅先の宿で騒ぎ、侍から逆に懲らしめられる滑稽譚です。現在の「宿屋仇」の代表的な形は、目次に載せたサイトおよび動画でご確認下さい。そして、順次UPしていく明治の古形との違いをお楽しみ頂けたらと思います。