本朝桜陰比事(1894年刊)WEB目次
本朝桜陰比事(元禄二年板) 淡島氏所蔵
巻之一
一 春の初めの松葉山
雷落ちて地固まり 昔の縁者知るる事
二 曇りは晴るる影法師
年は寄れども夜の淋しさ 念仏ばかりも申されぬ事
三 御耳に立つは同じ言葉
血で血を洗ふ所川 牛より劣りの系図の事
四 太鼓の中は知らぬが因果
懸けながら無き頼母子の宿 夫婦中担ひ棒の事
五 人の名を呼ぶ妙薬
身に余つて金持ちあり それゆゑ命を捨つる事
六 双子は他人の始まり
願ひに余る物種 法華信心深き事
七 命は九分目の酒
腹中はからくり人形屋 浮世の糸切れ果つる事
八 形見の作り小袖
東山の花談義聞くほど 後家は殊勝なる心底の事
巻之二
一 十夜の半弓
黒谷の麓掘り出してこれ 再び死人の顔見る事
二 兼平の謡ひ過ぎ
利に暗き者どもは 一つ松の月にも迷ふ事
三 仏の夢は五十日
家主の寝所は極楽 鍬に金色の光さす事
四 恨み千万近所の縁付き
暇やつて悔しきは小袖箱 女の情は世にある時の事
五 俄大工は都の費え
鋸引き戻されて無分別 売り家釘{*1}の価になる事
六 鯛蛸鱸釣り目安
今時の世間寺昼の衣 夜は長羽織に替はる事
七 聾もここは聞きどころ
親の知れぬ一人子 もの言はぬ石仏が知らす事
八 死人は目前の剣の山
さてもはや桶を取り出し 刃物は振袖に包む事
九 京に隠れ無き女去り
我を知らぬ浮世の中 女の利発用に立たぬ事
巻之三
一 悪事見え透く揃へ帷子
女中十六人同じ枕の夢 身に覚えあれば眼の合はぬ事
二 手形は消えても正直が立つ
町中寄つても済まぬ顔色 白いも黒いも埒の明く事
三 井戸は即ち末期の水
よしなき罪を作り鬼 この世あの世の境目見る事
四 落とし手あり拾ひ手あり
頼まれて無分別者 山家の道者顔をする事
五 念仏売つてかねの声
嫌はるる中の一人住まひ 思ひ入る後生大事といふ事
六 待てば算用も相寄る中
縁付きは身過ぎづくぞかし 男吟味はさりとは無用の事
七 銀遣へとは格別の書き置き
見通しの親仁が所存 若い時はと思ひ遣り事{*2}
八 壺掘りて欲の入れ物
相合{*3}井戸は水汲むため 金は湧かぬに極まれる事
九 妻に泣かする{*4}梢の鴬
天理を知らぬいたづら女 浪人しても昔の残る事
巻之四
一 利発女の口真似
誓願寺前の珠数屋 声無うて人を呼ぶ事
二 善悪二つの取り物
童に小刀持たす人は 安房鉾を作れる事
三 見て気遣ひは夢の契り
人の身上は何によらず 噂話をせまじき事
四 人の刃物を出し後れ
座興にも人の迷惑は 用捨するが本意{*5}の事
五 いづれも京の手懸け四人
世に変はりたる書き置き状 あとあとの大笑ひになる事
六 枯れ木の花の都の参り
薬師さへ治さぬ病ひ 行力にはなるまじきといふ事
七 仕懸け物水になす桂川
なき不思議のない世 智恵の浅瀬を渡る事
八 せぬ事を隠し損なひ
無分別は若い時のもの よろずありのままにすべき事
九 大事を聞き出す琵琶の音
方角知れぬ夜の乗り物 昼のない屋敷住まひの事
巻之五
一 桜にかづく御所染
京にも縁遠き娘様 明かりを走る昼乗り物の事
二 四つ五器重ねての御意
今を初めの商売の道 我が物は手に入りたる事
三 白浪の打つ脈取り坊
雨夜に唐傘屋の隙 盗人は内気者を指す事
四 両方寄らねば埒のあかぬ蔵
万事は孫がためといふ これから欲に極まる事
五 危ないものは筆の命毛
無常の外の棺桶 恥をかくほど知るる事
六 小指は高括りの覚え
差し引き心残りなる人 油断より迷惑する事
七 煙に移り気の人
下屋敷の戸は曙の道 我と剣の山伏を見る事
八 名は聞いて見ぬ人の顔
今の都の大尽風儀 金銀かりの世と見る事
九 伝授の能太夫
ああらめでたや物に心得たる弟子に渡す事
校訂者注
1:底本は、「はり」。『本朝桜陰比事』(1993)に従い改めた。
2:底本は、「思ひ遣りのこと」。『本朝桜陰比事』(1993)に従い改めた。
3:底本は、「あひやひ」。『本朝桜陰比事』(1993)脚注に従い改めた。
4:底本は、「泣(な)かすな」。『本朝桜陰比事』(1993)に従い改めた。
5:底本は、「本道」。『本朝桜陰比事』(1993)に従い改めた。
本朝桜陰比事(1894年刊)WEB凡例
1:底本は『西鶴全集 下卷』(尾崎紅葉、 渡部乙羽校訂 博文社 1894年刊所収 国会図書館デジタルコレクション)です。
2:校訂の基本方針は「本文を正確にテキスト化しつつ、現代の人に読みやすくする」です。
3:底本のふりがなは全て省略し、底本の漢字は原則現在(2025年)通用の漢字に改めました。
4:繰り返し記号(踊り字)、合字(合略仮名)等は、漢字一字を繰り返す「々」を除き、原則文字表記しました。
5:句読点、濁点半濁点および発話を示す鍵括弧は適宜修正、挿入し、改行も適宜しています。
6:かなづかい、送り仮名は、文語文法に準拠し、適宜改めました。
7:校訂には『本朝桜陰比事 決定版対訳西鶴全集11』(麻生磯次、冨士昭雄著 明治書院 1993)、『本朝桜陰比事<翻刻>』(徳田武編 おうふう 1996)、『西鶴全集 第二』(正宗敦夫編 日本古典全集刊行会 1926)を参照しました。
8:底本本文の修正のうち、必要と思われるものは校訂者注で示しました。但し、以下の漢字は原則として、他の漢字あるいはかな表記に変更しました。
漢字表記変更一覧
複数篇にわたるもの(五十音順 但し現代仮名遣い)
ア行
翌・朝→明け 遊興→遊び 的中・中る→当たる 跡→後 後→跡 検む・更む→改む 露顕る・露はる→顕はる 一→或る 難有し→有り難し 謂ふ→言ふ 呼吸→息 疼む→痛む 壱→一 扮装→出立 種→色 中→内 拍つ→打つ 打つ→討つ 風説→噂 遺失→落とす 威す・嚇す→脅す 同一→同じ 想ふ→思ふ 親父→親仁
カ行
効→甲斐 返す・返る→帰す・帰る 秘す・隠密→隠す 各別→格別 借す→貸す 科代→過怠 紀念→形見 傘→唐傘 義→儀 肯く→聞く 憂慮・配慮→気遣ひ 花車→華奢 闇中→暗がり 鬮→籤 闇し→暗し
サ行
坐→座 堺→境 前→先 差図→指図 裁判→裁き 種々→様々 曝す→晒す 幸福→仕合せ 暫時・少時→暫し・暫く 拾→十 識る→知る 些少→少し 血統・條→筋 納涼→涼み 乃ち→即ち 住居→住まひ 偶→隅 僉議・穿議→詮議
タ行
差ふ→違ふ 貯蓄→貯ふ 唯→只 扣く→叩く 壇那→檀那 使者→使 役ふ→使ふ 附く→付く 襲ぐ→継ぐ 造る→作る 妾→手懸け 同前→同然 年・年齢→歳 歳→年 吊ふ→弔ふ
ナ行
中→仲 媒酌・仲立→仲人 詠む→眺む 泪→涙 弐→二 荷ふ→担ふ 睡る→眠る 念頃→懇ろ
ハ行
廿→二十 談話→話 隙→暇 不思義→不思議 不断→普段 不便→不憫 故し→古し 法花→法華 穿る→掘る
マ行
参詣→参る 随す→任す 真→誠 道理・最も→尤も 許・旧・原・源→元 資本→元手 盗賊→物盗り
ヤ行・ラ行・ワ行
容赦・赦す→許す 弁別→弁ふ 僅少→僅か
上記以外(篇毎 登場順)
目 神鳴→雷 年齢→年 孖→双子 鮹→蛸 童子→童 直す→治す 商売→商ひ
1-1 切る→伐る 高根→高嶺
1-2 嫩→双葉 坐→居 替はる→変はる 母→親 悲哀→悲し 児→子 旭→朝 活く→生く
1-4 穿く→履く 断る→切る 畢はる→終はる 奪る→盗る
1-5 仕廻→仕舞ふ 独居→一人住み
1-6 審らか→詳らか 産まれ→生まれ 両→二つ 争訟→争ひ
1-8 寡少→少なし 毎々→度々 襯着→下着 首→頭
2-1 夭死→若死 夜半→夜中 理→故 通行→通る
2-2 謳ふ→謡ふ
2-3 頭→髪 託宣→告げ 費用→入り目 灌ぐ→注ぐ 後世→後生 争訟→争ひ
2-4 情心→情け 娯楽→楽しみ 美麗し→麗はし 驕奢→奢る 幾→程 建つ→立つ
2-5 立つ→建つ 日用→日傭
2-6 累なる→重なる 腥さし→生臭し
2-7 養育→養ふ 愁傷→歎く 野部→野辺 協ふ→叶ふ 真→本 竪→縦 御家→後家 態→形
2-9 法衣→衣
3-1 心→胸 運らす→巡らす 絹→生絹 苦痛→苦し 訊ぬ→尋ぬ 易し→安し
3-3 𥄴く→覗く 祖父→爺 功→手柄 視る→見る
3-4 拾得→拾ふ 金子→金 擲る→放る
3-5 嫌厭→嫌
3-7 劣ふ→衰ふ
3-8 油石衣→漆喰 祝儀→祝ひ
3-9 性→姓 行衛→行方 数寄→好き
4-1 生得→生まれ付き 美はし→麗はし 逸ぐ→逃ぐ 寝室→寝間
4-2 排ぶ→並ぶ
4-3 守宮→井守 留主→留守
4-6 物→者
4-8 晩し→遅し 切む→締む 生命→命 理→言はれ 捕る→取る
4-9 愉快し→面白し 尖→先 讐敵→敵 壮俊→若者 布告→触れ 挑灯→提灯 点火→灯す 動静→様子 主人→主 初旬→初め 中旬→中頃 首級→首
5-1 母親→お袋 知己→近付き 家産→土産
5-8 夥間→仲間 幇間→太鼓 騙局→騙り 売→殻 細密→細か
5-9 交代→代はり 囃→囃子
