校訂新可笑記(1914年刊)WEB目次
新可笑記 序
笑ふに二つあり。人は虚実の入れ物。明け暮れ世間の慰み草を集めて眺めし内に、昔、淀の川水を硯に移して、人の見るために道理を書き続け、これを『可笑記』として残されし。誰か笑ふべき物にはあらず。この題号を借りて、新たに笑はるる合点。我から腹を抱へて、智恵袋の小さき事、生まれ付きて是非無し。
難波俳林
西鶴 松寿
巻一
一 理非の命勝負 武士は人を助くる一言の事
二 一つの巻物両家にあり 武士は義理死世に惜しむ事
三 梢に驚く猿の執心 武士は不断覚悟の事
四 生き肝は妙薬の由 武士は主命に替はる事
五 先例の命乞ひ 武士は内証を見せざる事
巻二
一 炭焼も火宅の合点 武士は道理に命を取る事
二 官女に人の知らぬ灸所 武士とは格別長袖の事
三 胸を据ゑし連判の座 武士は一戦の働き第一の事
四 兵法の奥は宮城野 武士はその家風太刀先に吹かす事
五 死出の旅約束の馬 武士は言葉の違はざる事
六 魂呼ばひ百日の楽しみ 武士は女も道を立てける事
巻三
一 女敵に身替はり狐 武士は堪忍を本とする事
二 国の掟は知恵の海山 武士は発明に悪人知る事
三 掘れども尽きぬ仏石 武士は愚かなる沙汰言ふまじき事
四 宙にぶらりと俄年寄 武士は工夫の深きを普請役の事
五 取り遣りなしに天下徳政 武士は善悪の二道を知る事
巻四
一 舟路の難儀 武士は心の海に油断せぬ事
二 歌の姿の美女二人 武士は神主になる身の事
三 市にまぎるる武士 武士は外なる願ひせまじき事
四 書き置きの思案箱 武士はその家継ぐべきに見立てある事
五 両方一度に神下ろし 武士は落ち度も穿鑿のしやうある事
巻五
一 鑓を引く鼠の行方 武士は眼前にまことを見出す事
二 見れば正銘にあらず 武士は初めて一座大事の事
三 乞食も米になる男 武士は心の朽ちせぬ浮世の事
四 腹からの女追剥 武士はその時に変はる子どもの事
五 心の切れたる小刀屏風 武士は心の素直なるものと知らるる事
校訂新可笑記(1914年刊)WEB凡例
1:底本は『西鶴文集 三版(1914年刊)』(博文館 1914年刊 国会図書館デジタルコレクション)です。
2:校訂の基本方針は「本文を正確にテキスト化しつつ、現代の人に読みやすくする」です。
3:底本のふりがなは全て省略し、底本の漢字は原則現在(2025年)通用の漢字に改めました。
4:繰り返し記号(踊り字)、合字(合略仮名)等は、漢字一字を繰り返す「々」を除き、原則文字表記しました。
5:句読点、濁点半濁点および発話を示す鍵括弧は適宜修正、挿入し、改行も適宜しています。
6:かなづかい、送り仮名は、文語文法に準拠し、適宜改めました。
7:底本の漢文は適宜訓読を修正し、書き下して示しました。 8:校訂には『新可笑記 決定版 対訳西鶴全集9』(麻生磯次、冨士昭雄著 明治書院 1992)、『井原西鶴集4』(広嶋進校注・訳 小学館 2000)を参照しました。
9:底本本文の修正のうち、必要と思われるものは校訂者注で示しました。但し、以下の漢字は原則として、他の漢字あるいはかな表記に変更しました。
漢字表記変更一覧
複数篇にわたるもの(五十音順 但し現代仮名遣い)
ア行
明く→空く・開く 明ぼの→曙 噯ふ→扱ふ 跡→後 入る→要る 中→内 拍つ・打つ→打つ・討つ 移す・移る→写す・映る 衣裏→襟 発る→起こる 納まる・治む・納む→治まる・収む・治む 越度→落ち度 威す→縅す・脅す
カ行
海道→街道 帰る→返る 貌→顔 各別→格別 学文→学問 陰・影→蔭 厳る・餝る→飾る 義→儀 詞→言葉 比→頃
サ行 遠く→避く 指・差→差・指 執行→修行 性→姓 身体・身袋→身代 椙→杉 僉儀・僉議・僉→詮議
タ行 焼く→焚く 立つ→経つ・建つ 行・方便→手立て 取る・捕る→盗る・捕る・取る
ナ行 中→仲 詠む→眺む 泪→涙 悪し・悪む→憎し・憎む 念比→懇ろ 遁る→逃る
ハ行 挿筥→挟箱 咄→話 独→一人 隙→暇 二度・二たび→再び 不便→不憫
マ行
政事→政 廻らす・廻る→巡らす・巡る 翫遊・翫ぶ→もて遊ぶ 許→元
ヤ・ラ・ワ行 屋→家 婀娜し→優し 安し→易し 読む→詠む 利→理 籠→牢 薜・禍→災ひ
上記以外(篇毎 登場順)
目次 木末→梢 驫く→驚く 旅行→旅 中→宙
1-1 清む→澄む 時勢→今様 粧→姿 美児→美少 面子→顔ばせ 妖媱→美し 壱→一 割く→裂く 唐→唐土 勘ふ→考ふ 中る→当たる 瞳子→瞳 掩ふ→覆ふ
1-2 千剣→千早 愛拶→挨拶 亦→又 媒→仲立ち 工→巧み 連書→釣書
1-3 卑気→引け 竈→釜 割く→裂く 留主→留守 錯る→誤る
1-4 妻→雌 涌く→湧く
1-5 角→隅
2-1 亡す→滅ぼす 男子→息子 察む→諦む 職→常
2-2 繋し→厳し 容→姿
2-3 帥→粋 達→立ち 莅む→臨む 着頭→着到 冀ふ→乞ひ願ふ 糺す→糾す 警む→戒む
2-4 諺→事わざ 考みる→鑑みる 天窓→頭 花車→華奢 闇し→暗し 長錬→調練 仕相→試合 名誉→面妖
2-5 御寸→御酒 鈴→錫 手づさふ→携ふ 製る→造る 主人→主 送る→贈る 村→群
2-6 烟→煙 占→占形 安部→安倍 的伝→嫡伝 傘→唐傘 替はる→変はる 凩→木枯し
3-1 忰子→倅 形気→気質 族→輩 相図→合図 障礙→障碍
3-2 扮く→裁く 同前→同然
3-3 随ふ→従ふ 歯→刃 𨥉→金山 種→胤
3-4 鉄漿→歯黒 鴨居→敷居
3-5 仁→人
4-1 閑→静か 婆母→婆 介杓→介錯 十方→途方 秘す→隠す 母気→母儀 姥→乳母 娵→嫁
4-2 忙然→茫然 楊梅→山桃 賜る→贈る 呵る→叱る 窅く→覗く 俤→面影
4-3 疎略→粗略 慣ふ→習ふ 慥→確か 倉→蔵 懈る→怠る
4-4 鎰→鍵 讃む→褒む
4-5 檀那→旦那 誡む→縛む 畾紙→礼紙 形義→行儀
5-1 挑灯→提灯 甲→兜
5-2 月額→月代 牛角→互角 大様→鷹揚 十呂盤→算盤 如在→如才 意恨→遺恨 団→団扇
5-3 恒→常 十面→渋面 離→別れ 燧→火打ち
5-4 今日→狭布 羽護込む→育くむ
5-5 宿→泊り 茶堂→茶道 欠落→駆け落ち 大正寺→大聖寺
なお、底本には現代では差別的とされる表現がありますので、その点、ご注意ください。
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